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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

KLab株式会社 代表取締役社長CEO 真田 哲弥

ITベンチャー2社をIPOに導いた稀代の戦略家

十数億円の借金も起業への情熱を消せはしなかった

KLab株式会社 代表取締役社長CEO 真田 哲弥

『ラブライブ!』『BLEACH(ブリーチ)』など、若い世代の誰もが知っているコンテンツをゲーム化。多くのヒット作を生み出しているのがKLabだ。「世界を制する日本発ベンチャー」の有力候補とされる同社を牽引するのが、代表の真田氏。しかし同氏は20代のとき、巨額の借金を背負う転落を経験している。そこからどうやって栄光をつかんだのか、真田氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信67号(2017年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

学生起業家として有名に

―真田さんは学生で起業したそうですね。

 ええ。学生向けに合宿制の運転免許学校をあっせんするビジネスを立ち上げ、23歳で社長になりました。学生起業家がめずらしかった時代。ずいぶん注目されました。でも、私自身が直接、手がけていた部門が赤字に。設立から1年もたたずに退任する羽目になりました。

 しかしその後、そのときよりもっと深い、どん底を20代後半で味わうことになるんです。

―なにがあったのですか。

 巨額の借金を背負ってしまったんです。私は25歳で、『ダイヤルQ2』を利用した情報提供会社を設立。翌年に年商40億円にせまるほど急成長させました。いまの若い人は知らないかもしれませんが、『ダイヤルQ2』とは電話による情報提供サービスで、代金をNTTが回収してくれるものです。

 しかし、悪徳業者に利用されたりして社会問題化。規制が強化されました。そのあおりで私の会社も資金繰りが悪化。経営破たんに追いこまれました。社長の私が全債務の連帯保証人でしたから、十数億円にものぼる借金を背負いこむことになったんです。

ひとりでコワモテと渡りあう

―とてつもない金額ですね。起業とは、そんな巨大なリスクを負うものなのですか。

 いいえ。いま起業する若い人たちは、そんな心配しなくていい。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から、資金を直接調達する方法がたくさんあるからです。直接調達なら、返済しなくていい。だから、失敗しても起業家が借金を背負うわけではないんです。

 でも、私が起業した当時は違いました。国内にベンチャーキャピタルがほとんどなく、起業資金は金融機関から借り入れるしかない。そのためには担保となる資産が必要で、個人として連帯保証をしなくてはいけなかった。私の場合、親に土下座をして実家の土地と建物を担保に入れてもらい、自分自身が連帯保証人となって、銀行融資を受けたんです。

―なるほど。どうやって返済したのでしょう。

 普通なら自己破産宣告をするところ。でも、そうしたら、親が家を失ってしまう。それでは申し訳ないので、破産以外の道を必死に模索しました。弁護士を依頼するお金なんてないから、法律を独学で勉強しましたよ。コワモテのお兄さんが取り立てに来ることもあったけれど、自分ひとりで渡りあいました。

 勉強してわかったのは、「自己破産しますよ」というのが武器になること。債権者からすると、自己破産されたら1円も回収できなくなるから、それだけは避けたい。だから、つねに自己破産の申立書を胸ポケットに入れて、破産をチラつかせながら債務圧縮の交渉をしていました。

 たとえば「借金2億円を200万円にしてください」とムチャな要求をする。聞き入れてもらえるわけありませんが、「そうですか、じゃあもう自己破…」と。すると、1億円ぐらいには減額してもらえる。でも、当然ながら1億円だって支払えません。そこで時期を改めて「さらに半減を」と交渉する。さらにまた時期を改めて50回の分割払いに…。そんなことをえんえんと続けました。

―実家はどうなりましたか。

 競売にかけられそうになるピンチもありました。債権者からしたら、それが手っ取り早く回収する手段ですから。でも、債権者は複数いる。特定の債権者だけが回収するのは、ほかの債権者が許さない。全債権者の同意なんて、そう簡単にはとりつけられないもの。そこをついて、落札直前で実家を取り戻したことがなんどもあります。

 そうやって、実家を手放すこともなく、8年かけて借金を完済しました。
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