累計経営者579人に取材、掲載社数291ニッポンを創るビジョナリーベンチャーを紹介

IT業界の起業家インタビュー

ITエンジニアよ、君には市場で「売り」になる技術があるか?

株式会社モノクレア 代表取締役 桑原 雄一

システムエンジニアを取り巻く環境やIT業界のあり方に疑問をもつ人は少なくない。モノクレア代表の桑原氏もそのひとり。「会社がエンジニアを育てない」と企業側に苦言を呈する一方で、「ショートカットキーさえ使いこなせない人が多い」とエンジニアにも厳しい。同氏は「エンジニアの創造力を最大限引き出し、システム開発業界を向上させよう」と起業。その想いにいたる軌跡とビジョンを聞いた。

※下記はベンチャー通信62号(2016年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

IT業界の構造に疑問を抱きフリーのSEとして独立

―事業内容を教えてください。

 おもな事業は、企業内SIプロジェクトの開発環境に特化した技術支援です。プロジェクトメンバーが使う開発環境を最適化することでシステムのQCD(品質、価格、納期)向上に貢献しています。

 たとえば、SIプロジェクトでは開発中のソースコードをメバー間で共有する必要があります。また、ソースコードをいつ誰が変更したのかを記録したり、自分の変更とほかの人の変更とを正しくつなぎ合わせることも必要です。これには一般的にバージョン管理ツールというソフトウエアを使用します。私たちはバージョン管理ツールとして「Git」を提案し導入しています。メンバー全員が正しく使用できるように手順書を提供したり、ハンズオンテキストで使い方を練習してもらったりします。

―桑原さんのこれまでのキャリアを教えてください。

 大卒でソフトウエア会社にエンジニアとして入社しましたが、すぐモチベーションが下がっていきました。IT業界の多重下請け構造のなかでは会社のポジションが決まっている現実を知ったからです。入社1年半で、ERPのパッケージを開発しているベンチャー企業に転職。そのベンチャー企業には1年2ヵ月在職しましたが、会社が日本の大手企業に買収されることになり再び転職しました。日本の大手企業にあまりよいイメージがなかったので外資系に行こうと、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズに入社。同社では既存システムの保守や新規システム開発を担当。またオフショア開発でブリッジSEの仕事にも携わり、工数の見積りやスケジュールを管理する仕事を経験しました。

―起業はどのタイミングで決心したのですか。

 社会人2年目のころです。起業というより独立を考えました。30歳までに独立しフリーランスの経験をしておこうと。会社員でいる限り会社の方針に従わなければならないと思っていたからです。優秀なエンジニアとそうでないエンジニアの給与にあまり差がなく、エンジニアはいずれプロジェクトマネジャーや管理職になるしかないとしても、会社員でいる限り文句をいう資格はないのだろうと。会社側にも言い分あるのでしょうが、それは会社員でいるうちは理解できないと思っていました。それで30歳目前の2010年7月末に退社。8月5日にモノクレアの前身となるシェアロケーションという会社を登記しました。

会社設立後に依頼案件が急増人を育てる会社にしたい

―独立してまずなにをしたのですか。

 最初に手がけ、公開したのは位置情報を使ったWebサービスです。しばらくは収益化は考えず、エンジニアとして興味のあることだけをしていました。独立して半年後、アクセンチュアの元同僚の依頼でシステム開発プロジェクトに参画しました。そのときにつくったのが、開発・テストの自動化ツール「SIToolkit」の原型です。

―「SIToolkit」とはどういうものか教えてください。

 開発用のモジュールとテスト用のモジュールがあります。開発用のモジュールは開発環境のセットアップの自動化や、設計書からソースコードを自動生成するなどの機能をもっています。テスト用のモジュールは、ブラウザを自動操作する機能をもっていて、Webアプリケーションのテストを自動化するときに使います。テストではプログラムが仕様書通りに動くかどうか画面を操作してチェックします。その際、エビデンスとして画面のスクリーンショットをとりながら貼り付けて残すという、煩雑な手作業が数多くあります。これを自動化するのが「SIToolkit」です。

 システム開発の工数・予算の半分はテストだといわれています。私自身も若いころはテストを担当しました。そのころから「これはエンジニアがやるべき創造的な仕事ではなく、機械に任せるべき作業だ」と思っていたので、つくりました。

―「SIToolkit」によってずいぶん案件の獲得が楽になったのではないですか。

 そうですね。「SIToolkit」もそうですが、それを開発することで身につけた知識、スキルが活きています。前述の「Git」やプロジェクト管理ツールの「Redmine」、継続的インテグレーションツールの「Jenkins」などを「SIToolkit」の開発で使っています。

 一度プロジェクトに出てからは仕事の依頼は増え続けているので、2014年から社員を増やし始めました。

―桑原さんはエンジニアはどうあるべきだと考えていますか。

 自分の仕事の成果はなにか、誰に何の価値を提供しているのかをきちんと理解すべきです。そして、それを最大化するために努力することです。自分で勉強するのは当然ですが、自分に必要な経験を現場で積めるような働きかけも必要です。新しい技術を提案してみたり、いろいろな現場を経験することも必要です。

 たとえば、エンジニアは1つのプロジェクトの仕事だけをしていると成長が止まってしまう可能性があります。プロジェクトで採用している技術は市場では「売り」にならなかったり、新しいプロジクトに参画したときの情報収集スキル、異なる知識・背景の人たちとコミュニケーションをとる能力が衰えていたりというのは、ままあることです。

 また、SI企業はエンジニア本人の志向よりも「在庫」を出さないことを優先に、つまり社員がプロジェクトに参画していない状態を避けるために案件をとる傾向があります。エンジニアにとっては、特定分野のプロジェクトを多く経験して専門性を身につけるということが難しくなってしまいます。

―今後の展望を聞かせてください。

 エンジニアを育てる会社を目指します。エンジニアが育つためには適切な指導と現場の経験が必要です。現場をつくっていくためには、自社としても専門性をもつことが重要だと思います。そのためにもオープンソース開発は続けていきたいですね。

 システム開発はシステムそのものにフォーカスしがち。でも、いちばん大切なのは、それをつくるヒトが、機械にはないヒトとしての特性を活かして、システムづくりに最大限注力できることです。たとえば、テスト仕様書に書かれた通りにブラウザを操作するような定型的な作業は機械の仕事ですが、システムと業務の特性を踏まえてテストの方法を定型化するのはヒトの仕事です。この役割分担を適切に行うことがシステムの品質向上につながるのです。当社の専門性は、まさにこの役割分担の最適化にあります。

 システムはツールにすぎません。それを価値に結びつけるのがヒトです。目的にあったツールを選び、上手に使って現実世界を動かすから価値が生まれる。そういうヒトを育てる会社でありたいと思っています。当社は技術支援の会社なので、社員でなくても、参加したプロジェクトのメンバーにも価値を生むようなヒトになるようにアドバイスしていきます。「エンジニアとしてもっと成長したい」というヒトが当社に来たら、全力で応援します。

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