累計経営者579人に取材、掲載社数288ニッポンを創るビジョナリーベンチャーを紹介

環境・エネルギー業界の起業家インタビュー

環境・エネルギー「新電力」に参入する仲間を集め日本のエネルギー事情を変革したい

株式会社日本新電力総合研究所 代表取締役 青井 宏憲

国内コンビニ市場を超え、半導体産業に匹敵する「メガ・マーケット」が忽然と生まれ、ベンチャー企業の参入が待ち望まれている領域がある。2016年4月に完全自由化された「新電力市場」の低圧領域がそれだ。市場規模約7.5兆円、対象顧客約8,000万件という巨大な新市場。そこで成功するノウハウを知り尽くしているのが、日本新電力総合研究所代表の青井氏だ。新電力市場の構造、同社が提供する独自サポートの内容などを取材した。

※下記はベンチャー通信66号(2017年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「低圧領域」に大きなチャンス10 億円超の売上も

―御社は新電力会社の立ち上げから運営まで、ワンストップでサポートしているベンチャー企業として、メディアからも注目されています。最初に「そもそも、新電力とはなにか」を解説してください。

 新電力とは、電力小売りが自由化されたことで生まれた新しい電力市場のことです。自由化のスタートは2000年。それまで「地域独占」という規制が存在し、電力の小売りなどは電力会社(一般電気事業者)に限定されていました。地域独占による営業エリアのすみわけが認められ、競争は起きず、電力価格が硬直化するなど、その弊害がたびたび問題視されていたんです。

 そして、多くの先進国では電力自由化が進んでいたこともあって、国内でも規制緩和の機運が高まり、最初に「特別高圧」という領域で電力小売りが自由化されました。大規模工場やデパート、オフィスビルなど、契約電力量が2MW以上の、電力を大量消費する需要家が、その対象でした。これにより、国から許認可を受ければ、自由に電気を小売りすることが可能となりました。

―なるほど。「特別高圧」を皮切りに、2000年から段階的に電力自由化が進んできたんですね。

 ええ。次に自由化されたのは、契約電力量50kW以上2MW未満の「高圧電力(以下、高圧)」領域。2005年のことです。おもな対象は中小規模工場、スーパー、中小ビルなどです。そして、2016年4月、最後に残されていた、契約量50kW未満で一般家庭やコンビニ、商店などを対象とする「低圧電力(以下、低圧)」でも規制が撤廃。これにより電力小売りの完全自由化が達成されました。

 こうした電力自由化により誕生した会社は東京電力や関西電力と比較して新しいため「新電力会社」(小売電気事業者)と呼ばれています。

―市場として見た場合、どんな特徴がありますか。

 圧倒的にスケールが大きいことですね。特別高圧の契約数は1万件で市場規模は約3兆円、高圧は同75万件程度で約5兆円です。とくに巨大なのが低圧領域。契約者数は高圧の100倍以上に匹敵する約8000万件、金額ベースでは約7.5兆円にも達します。

 しかし、低圧自由化から半年以上たちますが、市場規模が大きい割にいまのところ参入企業が少ない。ですから、ビジネスとして見た場合、低圧領域は非常にチャンスが大きいと言えるでしょう。いくつかの〝参入障壁〟を乗り越えることができれば、ローコストオペレーションが可能、やり方次第でイニシャルコストがほとんどかからないといった効率経営も可能です。さらにプッシュ型の新電力会社の登場が待ち望まれているなど、ベンチャー企業との親和性は非常に高い。事実、低圧領域に参入し、会社設立3年目から10億円以上の売上確保を確実にしている新電力ベンチャーも存在します。

「同時同量の義務」など立ちはだかる厚い壁

―そのとおりなら、多くのベンチャー企業にとって大きなビジネスチャンスですね。まず、新電力市場の現状を聞かせてください。

 2016年11月現在で、参入表明している企業数は約350社。特別高圧や高圧に参入している企業数は約750社なので、それと比較しても非常に少ないと言えます。

 なぜ、参入企業が思ったように増えないのか。その理由は、電力小売りを行う新電力会社を設立するには経済産業省の認可が必要で、その申請手続きが複雑であることが挙げられます。たとえば供給計画。「真夏の電力ピーク時に、どこから電力を調達するのか」といった、業界事情に詳しく通じた専門家でなければ計画できないようなことも問われます。

 事業開始後も難問があります。そのひとつが「同時同量の義務」。30分ごとの仕入・販売の電力量をピタリとあわせる義務があるんです。これに違反するとペナルティが課せられ、度重なるとライセンス取り消しとなり、2年間は再参入できないという厳しい罰則もあります。これらの点が〝参入障壁〟となり、「新電力ビジネスはリスクが高い」と多くの企業から思われています。

 リソースが潤沢ではないベンチャー企業にとっては、システムの初期投資がバカにならないというネックもあります。

―どんなシステムが必要なのですか。

 ひとつは「需給管理システム」。30分ごとの需給動向を監視し、同時同量の義務を履行するために不可欠なシステムです。もうひとつは「顧客管理システム」。顧客情報を管理し、ユーザーがログインすれば毎月の電気代がチェックできるなどの機能が必要です。電力は特殊なビジネスなため、どちらもフルカスタマイズした専用システムが必要。そのコストは、それぞれ1億円程度です。つまり、営業開始前の顧客ゼロの段階で、合計2億円のシステム投資が必要とされるんです。

 そのほか、新電力会社の電力調達先である「日本卸電力取引所(JEPX)」への加盟料100万円、同取引所に「証拠金」として毎月の取引量に応じた仕入れ代金相当の供託金も必要。ある程度、まとまった量を購入するのでなければ取引参加できない、という制限もあります。

低コスト・低リスクで新電力市場に参入する方法

―高度な知識が必要な供給計画、重いペナルティが課せられる同時同量の義務、リソースが限られている企業にとっては少なくない初期投資、電力調達の問題など、ベンチャー企業が参入するにはハードルが高すぎませんか。

 そうとは言い切れません。じつは、いま挙げた〝参入障壁〟は自社単独で参入しようとした場合、すぐに顕在化する課題です。しかし、専門知識と高度なノウハウがある支援企業とタッグを組むことで、壁を乗り越え、顧客獲得に経営資源を集中させることが可能なんです。

 新電力会社に業務サポートなどを提供する支援企業はいくつかあり、当社はその草分けの1社です。

―御社ではどのようなサポートを提供しているのですか。

 低コスト・低リスクで新電力市場に参入し、安定収益を上げられるサポートを提供しています。その内容は、各種申請書の作成支援、効率的に顧客開拓をするための代理店の活用法、自治体などと契約するための入札ノウハウなど、設立から運営まで、すべてマニュアル化し、パッケージ提供しています。たとえば、申請書提出から国の認可が下りるまで、通常は6ヵ月間程度かかるとされますが、当社の支援により、その期間を3ヵ月程度に短縮することも可能。さまざまな申請書類を提出する必要がありますが、その順番を工夫することで、期間短縮が図れるんです。

 また、同時同量の義務を履行し、ペナルティ発生を抑える「バランシンググループ」の運営や専用システムのクラウド提供も行っています。

―バランシンググループとはなんですか。

 複数の新電力会社が協力し、その合計値によって需給調整することです。1社単独で需給調整するためには高度なノウハウが必要ですが、複数の新電力会社がまとまってグループを組成することで、安定的な需給調整ができます。当社では、サポート提供先の新電力会社によるバランシンググループの運営を行っています。需給調整は当社が代行しているので、当社がサポートしている新電力会社は需給調整システムを導入する必要がありません。また顧客管理システムもクラウドで提供しており、これについてもコストをかける必要がありません。

―御社のサポートを受ける場合の利用料を教えてください。

 販売量に応じた従量課金制の月額費用のみで、そのほかの申請サポート、システム利用料などはすべて無料。当社のサポートで、参入コストゼロで新電力ビジネスをスタートさせることが可能です。

 特別高圧、高圧領域の新電力会社はインバウンドだけで経営できたため、プッシュ型の営業は得意ではありません。一方で、新電力の需要を伸ばすためには、プッシュ型の営業が得意な企業、すでに顧客接点をもっている企業が本業とのシナジーを生む新規事業として取り組むことが必要とされています。ですから、まさに多くのベンチャー企業にとって大きなビジネスチャンス。当社サポートにより固定費を大幅削減できるので、その分を自社の電力料金体系の競争力強化に投資することも可能です。

―ベンチャー企業の経営者へのメッセージを聞かせてください。

 私は当社を起業する以前は東証1部上場の国内大手コンサルティング会社で新電力部門のコンサルティングチームの創設を自ら企画し、チームリーダーに就任。多くの企業に新電力ビジネスにおける経営コンサルティングを提供してきたほか、電力小売り完全自由化を円滑に進めるため、政府機関とも連携してきました。日本のエネルギー事情変革にはベンチャー企業のチカラが必要。多くのベンチャー企業と協働していきたいですね。

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