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IT業界の起業家インタビュー

Anyble株式会社 代表取締役社長 松本 悠利

IT倉庫に眠る機器を共有すれば日本の製造業はもっと強くなれる

Anyble株式会社 代表取締役社長 松本 悠利

日本のメーカーは、自社の倉庫に宝の山が眠っていることに気づいていない――。かつて石油業界で名をはせたエンジニア出身の起業家、Anyble代表の松本氏はそう指摘する。近年、フリーマーケットやカーシェアリング、シェアオフィスといったシェアードビジネスは拡大の一途。しかし、メーカー同士で資産を共有する仕組みは寡聞にして知らない。Anybleが運営するWebサービス『Ekuipp』は、メーカー各社が保有する計測機器のシェアを支援する。目指すのは、オールジャパンのモノづくり体制を整え、メイド・イン・ジャパンを復権させることだ。松本氏にサービスの詳細とそこにかける想いを聞いた。

「それ、ほしかったんだけど…」 他社には必要な機器を捨てている

―松本さんは「日本の製造業にはまだまだムダがある」と指摘しています。しかし、多くのメーカーがカイゼン活動をはじめ、極限までムダを省く努力をしているのではないでしょうか。

 確かに、1社1社を見れば、みなさん血のにじむような努力をしています。でも、日本の製造業全体で見たらどうでしょうか。

 たとえば、「ある実験のために計測機器を購入した。『いつかまた使う機会があるかもしれない』と、実験後も倉庫にしまっておいた。しかし、結局はずっとホコリをかぶったままで、廃棄処分にした。処分にかかわった担当者が、ほかのメーカーの社員と飲みに行ったときに、その話をすると、『えっ。それ、ほしかったんだけど』と言われた」。こんなことが、ひんぱんに起きているんです。私自身、かつてメーカーに在籍していたとき、「不要だった側」「必要だった側」の両方で、「もったいない」と思った実体験がありますよ。

―なるほど。あるメーカーが機器を倉庫に眠らせている一方で、ほかのメーカーが同じモノを購入したり、レンタルしていたりするなら、製造業全体でムダが生じていると言えますね。しかし、必要とする機器は各社違うのですから、互いのニーズがマッチするケースは少ないのではありませんか。

 いいえ。❝マザーツール❞と呼ばれる基礎的な計測機器であれば、必要とするモノは各社同じです。たとえば通電の有無を測るオシロスコープ。携帯電話メーカーでも自動車メーカーでも、ほぼすべての企業で使う機器です。こうしたマザーツールは基礎的な計測で使うので、競合に対する優位性の源泉になっているような特殊な部分では使われない。売却・貸与することによる機密漏えいの心配もないんです。

売却・レンタル元の技術者にチャットで問い合わせ可能

―では、機器が必要になったとき、それを「倉庫に眠らせている」メーカーをどうやって探せばいいのでしょう。

 ITのチカラを借りればいいのです。たとえば、私たちが運営する『Ekuipp』。目当ての計測機器について、どこのメーカーがもっていて、それは必要なタイミングで売却ないし貸し出してもらえる状態にあるのかを、簡単に検索することができます。

―見つかったら、相手のメーカーと交渉して購入したり、レンタルしてもらうわけですね。レンタルの場合、リースとの違いはなんでしょう。

 まず、低コストだということです。リース会社は多くの機器をそろえ、営業やカスタマーサポートの体制も整えている。そのコストがリース料金に乗っているわけです。これに対して、「倉庫でほこりをかぶっている」機器をメーカーからレンタルする場合。レンタル元のメーカーにとっては、レンタル料金を得るだけで「丸もうけ」なわけですから、低料金にしてくれるのです。

 また、ある機器が本当に必要とするスペックを満たしているのかを確認する手間がかからない。この点も大きい。『Ekuipp』には、売却・レンタル元で計測機器をあつかっているエンジニアと、直接、チャットで会話できる機能をもうけています。「○○の△△を計測したいんですが、できますか?」といった問い合わせに、専門知識をもった人間が回答してくれる。エンジニア同士、文字通り「話が早い」わけです。

 一方、リース会社で窓口になっている担当者はエンジニアではないことが多い。問い合わせても「少々、お待ちください。確認してみます」とか、「たぶん大丈夫だと思いますよ」とか。そのために大きなムダが生じてしまうケースが、けっこうあるのです。

―なるほど。ほかに便利な機能はありますか。

『Ekuipp』はGoogle Mapと連動していて、機器を売却・レンタルしてくれる場所を表示できます。「ここなら社用車で行けば、往復1時間で借りてこれるな」といった見当をつけられるように。機器を探している側は「3日以内に実験をしなければならない」と切羽つまっていることも多い。ですから、「実験する場所に機器をもってくるまでの時間」も重要な情報なんです。

機器以外の資産もシェアリングの対象になる

―メーカーの経営面では、『Ekuipp』を使うことでどんなメリットがありますか。

 売り手・貸し手側にとっては、数十万円~数百万円で購入したものの、いまは使っていない機器を売却したり、貸し出すことで、キャッシュが入ること。大手企業ならば、利益への貢献は微々たるものですが、倉庫でホコリをかぶっている機器を活用したビジネスを展開することで、「モノを廃棄しない」という倫理的な面での価値を得られる点が大きいでしょう。

 買い手・借り手側からすれば、リーズナブルに必要な計測機器を調達できること。最新モデルでなければできない特殊な実験以外は、シェアするのが当たり前の選択肢のひとつになればいいなと思っています。

 当社が最終的に目指しているのは、「アセット・シェアリング」の普及による日本の製造業全体の底上げ。いまは海外との競争において、日本メーカーがコスト面で負けるケースが多い。1社1社がコスト低減をがんばるだけではなく、シェアできるものはシェアしてコストダウンする。それによって、かつて輝いていたメイド・イン・ジャパンを復権させる。そんな大きな夢をもっています。

―現在はマザーツールが中心ですが、「アセット・シェアリング」の対象は、ほかにも考えられそうですね。

その通りです。たとえば、より専門性の高い計測機器を、それをあつかえる専門オペレーターも込みでレンタルする構想もあるんです。さらには、将来は「工場のラインごとレンタルする」という可能性もあるのかな、と。「あるクライアントのために特殊な製造ラインをつくったけれど、いまは稼働していない」。そんな事例も相当ありますから。

近い将来、海外への 売却・レンタルに広げていく

―壮大な構想ですね。

 ゆくゆくは海外展開も視野に入れています。日本で使われなくなった機器を、アジアやアフリカなど、世界にレンタルもしくは売却していくのです。日本の精密機器はとても人気がありますからね。すべては、日本の製造業を底上げするために。その理想に集約するんです。

松本 悠利(まつもと ひさとし)プロフィール

1982年、埼玉県生まれ。2008年に東京大学大学院広域科学専攻物理部を修了後、米国のSchlumberger Limitedに入社。地下の石油埋蔵量を計測し、石油メジャー各社にデータ提供するエンジニアとして活躍。業界不況により退社後、独立・起業を決意。2017年8月、個人間でカメラや工具などをレンタルしあえる『Anyble』のサービスを開始。2018年3月にAnyble株式会社を設立、代表取締役社長に就任。メーカー各社が保有する精密機器のBtoBシェアリングをプロデュースするWebサービス『Ekuipp』を運営し、ニッポンの製造業の復権への貢献を目指している。

企業情報

設立 2018年3月
資本金 100万円
事業内容 BtoBおよびCtoCのマーケットプレイスの開発、企画および運営
URL https://www.anyble.com/

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