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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社アード・ソシヨ 代表取締役 安田 晋

エンジニア歴30年の企業トップが実践する「業界の常識」への挑戦

「品質最優先」の価値観を、システム業界に根づかせてみせる

株式会社アード・ソシヨ 代表取締役 安田 晋

さまざまな業界向けにシステムの受託開発を手がけるアード・ソシヨ。抱えるエンジニアは少ないながらも、業績は2007年の創業以来、成長を続けている。成長の要因について、同社代表の安田氏は「品質に対する徹底的なこだわりが顧客から高く評価されているため」と振り返る。「当社のように品質優先を掲げる企業は珍しい」とも話す同氏に、アード・ソシヨが品質にこだわる理由を聞いた。

数ある開発会社のなかで「3本の指に入る品質」

―事業内容を教えてください。

 企業向けシステムの受託開発を手がけています。エンジニアの数は現在27人と多くはありませんが、顧客の業種は、金融や通信、物流、製造業、漁業など多岐にわたり、最近では東証プライム市場上場企業のシステム開発に携わることも増えています。これまで、ほぼすべての顧客からリピート発注をいただいており、会社の売上高はコロナ禍の2期を除き、毎年右肩上がりで推移しています。

―どういった点が顧客から評価されているのですか。

 なによりも、システムの「品質」が高く評価されています。最近では、ある顧客から、「世の中に数多くあるシステム会社のなかでも3本の指に入る」という、うれしいお言葉もいただきました。

 ここで言う品質とは、顧客が希望する要件をきちんと満たしていることはもちろん、エンドユーザーにとって使い勝手が良いこと、そして、バグが無いといったことです。これら品質へのこだわりは、我々がもっとも大切にしている価値観でもあります。「製品の品質にこだわること」は当たり前のように聞こえるかもしれませんが、システム開発業界においては近年、じつはそうとは言いきれない現状があります。ましてや、当社のように「品質最優先」を掲げ、それを実践しているシステム会社は非常に少ないと言えます。

「スピード重視の価値観」は、年を追うごとに強まってきた

―それはなぜでしょう。

 開発のスピードを速め、他社よりも早く製品を納入することが、業界におけるスタンダードな価値観となっているからです。実際、小さなバグの修正や使い勝手の改善は、システムのアップデート時にある程度は行うことが可能です。しかし、こうした価値観が過度に重視されるようになったことで、暗黙のうちに「品質は二の次」と考えるエンジニアが増えていく。その結果、個人情報の漏えいといった深刻なバグの発生につながってしまうケースが後を絶ちません。

 私は、パーソナルコンピュータの黎明期だった30年ほど前からシステム開発に携わってきましたが、品質よりもスピードを重視する風潮は、年を追うごとに強まっていると感じています。この風潮に抗うように、当社では2007年の創業以来、品質最優先に一貫してこだわってきました。

―安田さんが品質に強くこだわる理由はなんですか。

 逆説的ではありますが、品質へのこだわりは、結果として開発スピードの向上にもつながり、顧客満足度をさらに高めることになるからです。スピードのみを重視した現場では、システム全体の構想が事前に十分に練られていないがゆえ、想定外の軌道修正が途中で生じることが珍しくありません。そうした軌道修正が生じれば潜在的なバグも増えるため、最後のテスト工程にかかる時間が長びき、結果的に納品が遅れるという本末転倒な事態を招いてしまうことがあります。当社では、こうした事態を防ぐため、最初の「要件定義」にもっとも心を砕くようにしています。たとえば、「顧客が求める要件と、エンドユーザーにとっての使いやすさをいかに両立させるか」といったことを、この段階で突き詰めて考えるのです。これにより、後々のムダな軌道修正を減らし、結果的に全体のスピードアップを図れるのです。

 当社では、品質を最優先にした開発によって、もう一つ大きな成果も得られています。

仕事の本質的なやりがいを、エンジニアに与え続けたい

―どのような成果ですか。

 エンジニアの長時間労働を是正できていることです。これも、不十分なシステム設計に起因するプログラムの修正や、それに伴うバグの発生が少ないことで得られている副次的な成果にほかなりません。当社では実際、エンジニアの約7割が残業時間を1ヵ月20時間未満に収められています。また、2021年度の有給休暇消化率も、全体の約7割が60%を超えています。これは、業界においてはとても高い水準と言えます。今後も引き続き、品質を最優先することで、顧客満足度を追求しつつ、エンジニアのワークライフバランスを実現できる職場づくりを進めていく方針です。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 今後は、人員規模を拡大し、業界における当社の存在感を高めていくことを目指します。その狙いは、当社が実践を通じて証明した「品質とスピードは同時に追求できる」という新しい常識を、業界に広く知らしめることにあります。それによって、「品質を最優先する」という本来あるべき価値観を業界全体に根付かせ、システム開発の現場にパラダイムシフトを起こすことをビジョンとして掲げています。すべてのエンジニアが、無理のない働き方で「良いシステムづくり」に没頭し、その成果物によって顧客から高く評価してもらう。そんな、仕事の本質的なやりがいをエンジニアが実感できる業界をつくっていきたいですね。
PROFILE プロフィール
安田 晋(やすだ すすむ)プロフィール
1962年、神戸市生まれ。1986年、鳥取大学を中退後、株式会社エム・アイ・ティーに入社。20年間、エンジニアとして活躍。2007年、同社の解散を機に株式会社アード・ソシヨを設立し、代表取締役に就任。
企業情報
設立 2007年4月
資本金 2,000万円
売上高 1億9,300万円(2022年3月期)
従業員数 27名
事業内容 ITコンサルティング、受託ソフトウェア開発、システム運用・保守など
URL https://www.ardsosiyo.com/
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