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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

オーマイグラス株式会社 代表取締役社長 清川 忠康/ひので監査法人 パートナー、公認会計士 羽入 敏祐

成功のカギはオムニチャネル戦略による経営情報の一元管理

ネットとリアルを融合して世界のメガネ市場を制覇したい

オーマイグラス株式会社 代表取締役社長 清川 忠康/ひので監査法人 パートナー、公認会計士 羽入 敏祐

2011年の創業以来、「Oh My Glasses TOKYO」を国内最大のメガネ通販事業に急成長させたオーマイグラス代表の清川氏。メガネ業界の常識を一変させた同氏が繰り出す次なる一手が、リアルとの融合。(※)オムニチャネルを実装し、世界展開と業界エコシステムの確立を目指す同社。その成功に向けた同社の戦略から見る世界基準で戦える成長ベンチャーの条件について、清川氏と、成長企業の経営支援に精通するひので監査法人の羽入氏の両氏に聞いた。

※オムニチャネル: 実店舗やECサイトなどあらゆる販売・流通チャネルを統合し、どのチャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現すること
※下記はベンチャー通信64号(2016年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

リアル店舗回帰の波のなかでオムニチャネルを実現

―EC事業で成功を収めたオーマイグラスがいま、オムニチャネル戦略に舵を切り、リアルとの融合で進化しています。いつごろからの構想ですか。

清川 2年ほど前からですね。ECは醸成期に入り、利益度外視で展開しオンラインで莫大成長させるビジネスモデルの成長が以前に比べて鈍化しています。(※)O2Oやオムニチャネルといった言葉にもあるとおり、今後リアル(オフライン)消費との融合でどうビジネスを伸ばすかという観点で、リアル店舗展開に注力するEC事業者が増えていくのは当然の流れです。

 当社としては、「独自のビジネスプラットフォームの枠組みのなかのひとつとして展開する」「EC事業で築いた独自のノウハウをO2Oに活かす」というふたつの目的で店舗展開しています。

羽入 2年前といえば、O2Oやオムニチャネルという概念が流行しはじめたころですね。既存のEC事業で新規顧客を開拓する余地が少なくなった時期です。こうした動きは、タイミングよくオムニチャネルを推進しようと模索していた企業には追い風となりましたね。
※O2O:「 Online to Offline」の略。オンラインでの活動が実店舗での購買に影響をおよぼす施策

―オムニチャネル戦略を成功させるカギはなんですか。

清川 ECとリアル店舗とで在庫・販売情報をリアルタイムで共有することです。多くの企業と同様、当社でもかつては「ECのシステム」「リアル店舗のリテールシステム」「倉庫管理システム」がパラレルで動いていました。結果、どうしてもECと店舗の在庫情報に時間的なズレが出てしまう。在庫の最適化という観点ではもちろん、経営者としては収支予測も含めビジネスの大枠な落としどころを把握しなければならない。そのためにはリアルタイムかつ正確な数字が必要です。

 ベンチャー企業の経営にはスピードが必要です。経営の数字を悠長に分析してはいられません。当社では「リアルタイム性があり、ビジネスモデルにいかにマッチさせてシステムを統合できるか」「将来事業を拡大したときに耐えうるモデルか」という点でオムニチャネルの基盤をつくりました

オムニチャネルコマースはプラットフォームで一元管理

―クラウドERPを基盤にオムニチャネルを構築されたそうですが、理由はなんでしょう。

清川 ERPといえば基幹システムとか会計システムといった印象があると思います。しかし、メガネビジネスにおいては、ユーザーからの複雑なカスタマイズに対応可能な柔軟性のある経営プラットフォームであり、我々のニーズにぴったりでした。また、当社では将来的にオムニチャネル構想を部材のサプライヤーにまで適用する計画です。くわえて、海外展開も視野に入れているので、海外対応が可能であるという点も重要な判断基準でした。さらに初期投資を抑え、ビジネスの段階にあわせて拡張できるという利点から、クラウドベースのERPである『NetSuite』を選びました。

羽入 会計士の立場からいえば、クラウドERPを導入する最大のメリットは、会社内に分散する経営情報を一元管理することで、業務プロセスをしっかりと把握できるようになる点。同時に、その統合情報のなかから自在な切り口で必要情報を抽出できるようになることです。その情報を会計士が使えば、外部監査機能は一段と高まるでしょう。

 海外ではこうした経営情報管理はいまやスタンダードです。オーマイグラスさんのように海外展開を視野に入れている成長ベンチャーは、早くから世界基準の情報管理を実践しておくべきです。

清川 経営者の立場でも、統合された経営情報から必要な情報を自在に抽出できる意義は大きいですね。経営判断のための重要な材料となりますし、数字や情報を共有できれば全メンバーが同じ方向性で動くことができます。

羽入 オーマイグラスさんのように、早い段階でクラウドERPのような拡張性の高い経営基盤を導入することは非常に重要です。フロントのシステムに注力していたとしても、バックオフィスから集約されるはずの経営情報が社内に広く分散し、兵站が伸びきってしまった状態から再び情報を統合するには、大変な負荷がかかります。場合によってはシステム移行が不可能な場合も出てくる。仮にIPOを視野に入れている成長ベンチャーであれば、それは取り返しのつかない事態です。

事業を成長させたいなら基幹システムも成長させよ

―ベンチャー企業が成長するうえで必要な条件とはなんでしょう

清川 大きなビジョンを描き、事業を大きく成長させていきたいならば、販売戦略や営業力強化と同じように、会社を支えるための経営基盤、つまりシステムも成長させていく必要があります。当社でいえば、「事業拡大で在庫が3倍に拡大したため、在庫情報のズレも3倍になった」というのでは、笑えないジョークになってしまう。その観点から、事業と同じ重要な挑戦だという問題意識をもって導入したのがクラウドERPでした。

羽入 日本ではまだ浸透しきってはいませんが、5年、10年先を考えれば、クラウドERPによる情報管理はまちがいなく企業経営のスタンダードになっているでしょう。会計士としてアドバイスするならば、成長をめざすベンチャー企業は早い段階から導入を積極的に考えるべきです。
PROFILE プロフィール
清川 忠康(きよかわ ただやす)プロフィール
1982年、大阪府生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、米国インディアナ大学大学院に留学。帰国後、UBS証券株式会社を経て株式会社経営共創基盤に参画。その後、再び渡米してスタンフォード大学経営大学院に留学し、2年次在学中の2011年に株式会社ミスタータディ(現:オーマイグラス株式会社)を創業、代表取締役社長に就任。
ひので監査法人 パートナー、公認会計士 羽入 敏祐(はにゅう としひろ)プロフィール
1992年に監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)入所、監査業務に従事。1998年以降、事業会社の経営管理全般、M&A会計税務アドバイザリー、地方自治体行政の実務経験を経て、2007年に株式会社ベクトルの経営に参画、管理部長、管理担当取締役を歴任。2012年の同社の株式上場に貢献。任期満了後、ひので監査法人パートナーとして上場企業などの監査業務に従事するかたわら、IT環境と企業運営そのものの変化を見据えた効率的バックオフィス構築を視野に、新たな成長企業の経営支援に従事している。
オーマイグラス株式会社 企業情報
設立 2011年7月
資本金 6億7,165万円
従業員数 約40名
事業内容 メガネ・サングラス通販サイト「Oh My Glasses TOKYO」の運営・管理、
「Oh My Glasses TOKYO」直営店舗の運営・管理
URL http://www.ohmyglasses.jp/
ひので監査法人 企業情報
設立 2009年5月
従業員数 16名
事業内容 監査業務、株式上場アドバイザリー、アカウンティング・アドバイザリー、
M&A等コンサルティングサービス
URL http://www.hinode-audit.or.jp/
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