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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長 兼 社長/グループ代表 熊谷 正寿

グループ9社を上場に導いたプロ経営者が要諦を語る

IPOは目的ではない。成長を加速させるために必須の手段です

GMOインターネット株式会社 代表取締役会長 兼 社長/グループ代表 熊谷 正寿

※下記はベンチャー通信63号(2016年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

上下関係をなくすため「M&A」といわない

―いまやグループのスタッフ数は4400人を超えました。熊谷さんが人材採用や育成に直接関与できる規模ではないと思います。人材レベルを維持するための施策はありますか。

 この点についてもやはり、いちばん大事なのは仕組みづくりです。私はかなり早い段階から、人を財産である“人財”と考え、だからこそ人事の専門家がやるべき採用や育成には極力、関与しないようにしてきました。
「社長が直接、採用や育成に関与しなければ人材レベルを維持できない」と考える人もいますが、それはプロ経営者の仕事ではないでしょう。プロ経営者とは、自分自身が採用や育成をうまくやるのではなく、採用や育成がうまくいく仕組みをつくれる人のことです。

―新たな人材を取り込み、組織力を強化するにはM&Aもひとつの方法です。熊谷さんもM&Aを成功させてきました。その要諦はなんでしょう。

「M&A」や「買収」という言葉を使わないことです。この言葉には、暗黙の上下関係が意味として込められているからです。買収した側が上で、された側は下。この言葉を使うことで、そんな意識が生まれてしまったら、せっかくグループにジョインしてくれた人たちのモチベーションが下がってしまいます。

 一緒に働く人たちと同じ目線で見て、大切にすること。そのために当社には「禁句集」があり、「M&A」をはじめ上下関係を意識させる言葉は社内で使わないようにしています。ですから、開示資料や財務諸表などを除いて、他社ならば「子会社」と呼んでいるものを「グループ会社」と呼び、社員と呼ばれる人たちを「仲間」や「スタッフ」と呼んでいます。私自身が率先して、そういう言葉を使うようにしています。

 名刺でも同じ。他社ならば「M&A担当」となる肩書は、当社では「仲間づくり担当」です。こうした基本的な考え方を徹底しなければ、「仲間づくり」の成功はありません。

ネット産業革命はあと35年続く

―今後の成長戦略を聞かせてください。

 インターネットの登場は、間違いなく産業革命である。そう私は認識しています。そして産業革命は55年続く。これは、歴史を研究したうえでの私の持論です。私たちがインターネット事業を開始した1995年は黎明期。ここまで発展しましたが、まだ20年の歴史しかありません。つまり、このインターネット革命はあと35年続くということです。私はこの成長性の高いインターネットに命をささげる覚悟でいます。

 将来的には、家電製品はもとより、電気が通っているあらゆるものはインターネットにつながると考えます。人間の脳も電気信号で動いているとみなせますから、やはりインターネットにつながるでしょう。それに向けて情報も機器も最適化されていく。そこにビジネスチャンスは無限にあります。

 新ビジネスにチャレンジしていくのにくわえ、既存の主力事業であるインターネットインフラ事業の海外展開を進めます。私たちがねらう次なる市場は、アジアの非英語圏です。かつて日本が経験した成長軌道を、これらの国ではこれから経験していく。私たちがもっている最先端技術やノウハウを提供するのは、いわばタイムマシーンに乗って未来の技術を伝え、成長を加速する手伝いをするようなもの。そんな水平展開を実現したいですね。

自分の心の弱さと闘い「負の引力」をはね返せ

―最後に、起業やベンチャー企業への就職に関心がある学生にメッセージをお願いします。

 人はひとつの行動を7日間続けると、それが習慣になるといいます。その習慣はやがてその人の人格をつくります。そして、人格はその人の運命を変えていきます。つまり夢をもち、その夢に向かう行動を起こし、その行動を習慣にまでなるように続けていくことで、運命を切り拓くことができるのです。

 1日は誰でも平等に24時間しかありません。「8時間仕事して、8時間プライベートに使って、8時間寝る」といった毎日を、ただ平均的に過ごしていれば、平均的な人生にしかなりません。突き抜けたいなら、人と違うことをすることです。「人の行く裏に道あり花の山」ですよ。

 人生を平均値へと誘い込む「負の引力」は随所で働いています。その最たるものは自分の心の弱さです。だから突き抜けた人生を送りたいなら、まず「自分にはできない」などと決して思わないことです。たとえ家族や友人など周囲の人間から「オマエにはムリだ、やめろ」などと言われたとしても。そんな負の引力をはね返す強さを身につけてください。

 それができれば、私よりも、もっとすばらしい成功事例がいまの学生のみなさんから出てくるはず。それを私は願っています。
PROFILE プロフィール
熊谷 正寿(くまがい まさとし)プロフィール
1963年、長野県生まれ。東証一部上場のGMOインターネット株式会社を中心に上場9社を含むグループ87社、スタッフ約4,600名を率いる。「すべての人にインターネット」を合言葉に日本を代表する総合インターネットグループをめざし、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット証券事業、モバイルエンターテインメント事業を展開。おもな受賞歴に、2000年日経ベンチャー「99年ベンチャーオブザイヤー」(新規公開部門2位)、2005年米国ニューズウィーク社「Super CEOs(世界の革新的な経営者10人)」、2013年第38回経済界大賞「優秀経営者賞」、2015年経済誌『財界』財界賞・経営者賞(第58回)「経営者賞」などがある。著書に『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(かんき出版)、『20代で始める「夢設計図」』(大和書房)など。
企業情報
設立 1991年5月24日
資本金 50億円(2015年12月末日現在) 
売上高 1,263億3,700万円(2015年12月期:連結)
従業員数 約4,600名(2015年12月末:連結)
事業内容 インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット証券事業、モバイルエンターテイメント事業ほか
URL https://www.gmo.jp/
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