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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社TalentX 代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史

リファラル採用サービスのパイオニアが描く未来の働き方

社会インフラとなるサービスを提供し日本人の働く価値観を変革したい

株式会社TalentX 代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史

社員に知人や友人を紹介してもらい、選考を行うリファラル採用。マッチング精度が高い採用手法として近年、注目されている。TalentXは、企業のリファラル採用を活性化するサービスを他社に先がけて提供し、新たな市場を切り拓いてきた。インフラとなるようなサービスの構築を目標に掲げる同社代表の鈴木氏に、サービスを立ち上げた経緯や今後のビジョンなどについて聞いた。
※下記はベンチャー通信75号(2019年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

言葉すら知られない市場を切り拓いてきた

―画期的なサービスを展開していると聞きます。どのようなサービスですか。

 人事部門と社員に負担をかけずにリファラル採用を実現させるクラウドサービス『MyRefer』を提供しています。紹介者となる社員は『MyRefer』のページにパソコンやスマートフォンでアクセスするだけで、自社の求人状況を確認したり、SNSやメールを通じてワンプッシュで友人に紹介できます。人事側はクラウドを通じ、こうした社員の紹介状況を即時に確認することが可能です。

 導入企業数は現在500社を突破し、リファラル採用サービスとしては国内でトップ水準です。業種に偏りなく、中小・ベンチャー企業から、従業員数1000名以上の大企業まで幅広い企業に導入されています。

―企業のリファラル採用に対する関心はどの程度高まっているのでしょうか。

 サービスを立ち上げる前の2014年時点では、リファラル採用に関心のある企業の割合はわずか20%程度でしたが、現在は約70%の企業が関心をもっているとの調査結果があります。第三者であるエージェントを介した従来の採用手法では、企業側も求職者側も、等身大の相手が見えにくく、雇用のミスマッチが起こりやすい。会社のリアルを知る社員が自社を知人に紹介するリファラル採用では雇用のミスマッチが起こりにくいため、関心が高まっているのです。

『MyRefer』の提供を始めた当初はリファラル採用という言葉すらほとんど認知されておらず、私たちは新しい採用市場を切り拓いてきたという自負があります。

―サービスを立ち上げた経緯を聞かせてください。

『MyRefer』はもともと、前職のインテリジェンス(現:パーソルキャリア)で行われた社内ベンチャー制度で私が発案したものです。 私は学生のころから起業に関心があったため、サイバーエージェントの藤田晋さんなど名だたる経営者を輩出し、当時、「起業の登竜門」とされていたインテリジェンスに入社。入社後は広告営業を行う部署に配属され、企業の中途採用の支援に携わってきました。このときに、企業の採用における課題も認識するようになり、後にリファラル採用にかんするサービスの発案につながったのです。

 そして、入社3年目に開催された社内ベンチャー制度で現在の『MyRefer』のビジネスを提案。数百ある案のなかから審査を勝ち抜き、事業化が実現したのです。しかし、このときから、いずれは独立して社外で事業を展開することを前提に考えていました。

1年半かけて経営陣を説得

―独立を前提としていたのはどうしてでしょう。

 サービスの本質的な価値を高めたいと考えていたからです。企業の内部で事業を行うには当然、収益性が求められます。実際に『MyRefer』は1年目での単月黒字、2年目での通期黒字の達成がそれぞれ求められました。販管費を削減し、コンサルティング業務で売上を増やした結果、黒字化の目標は達成できました。

 しかし、サービス自体の価値を高めるには、採算を度外視してでも、マーケティングや投資を行わなければなりません。

 そこで私は、独立に向けて経営陣との交渉を始めました。過去の社内起業の例をみると、1998年設立のサイバーエージェント以降、スピンアウトした事業はありません。約20年間、前例がないなかでの独立は相当難しいと覚悟していましたが、1年半にわたる交渉で、経営陣を説得することができました。その結果、2018年5月に独立し、事業を法人化。「株式会社MyRefer」(現:株式会社TalentX)として新たなスタートを切ったのです。

日本の採用市場にゲーム・チェンジを起こす

―鈴木さんをそこまで突き動かしたのはどのような想いだったのでしょうか。

 どうせ起業するのなら、「規模が大きく、すでにルールが確立している採用市場に対して、ゲーム・チェンジを起こせるサービスを立ち上げたい」という強い想いがありました。

 具体的には、私は将来、終身雇用や年功序列といった、日本における古い雇用慣行を崩壊させたいと思っています。

 日本のひとり当たりGDPの順位は下がっています。日本の起業率や、働くことを楽しんでいる人の割合は「先進国で最低水準」という統計結果もあります。経済や働くことにかんする調査結果がほかの先進国よりネガティブになりがちな背景には、こうした日本特有の古い雇用慣行があると私は考えています。

―日本特有の古い雇用慣行にはどのような問題があるのでしょう。

 たとえば、「転職」という挑戦に対する価値観やイメージにネガティブな影響を与えています。転職は本来、個人がより活躍できる場所を探したり、夢を追ったりする、前向きな行動であるべきです。

 しかし、終身雇用や年功序列が働き方の前提となってきた日本では、その行動を応援するどころか、後ろ向きなものととらえる風潮があり、個人の挑戦や可能性を押さえつけてしまうこともあります。

 当社では、そんな価値観をあらためようと、退職した社員を対象に出戻り応募や知人紹介を促進するサービスも提供しています。社員が辞めた後も、前職の会社と良い関係を保ち続けてもらうための制度です。

 私たちは、「日本のはたらくをアップデートする」というビジョンを掲げています。その実現に向けて、社会に大きな価値をあたえられるインフラサービスを当社から提供していきたいと思っています。

挑戦したい個人をみんなが応援する世界

―サービスの提供を通じて実現したいビジョンを聞かせてください。

 まずは、転職を希望する人が、人とのつながりから転職先を探せる市場を生み出すこと。そしてその先には、転職や挑戦をする人に対して周りの人や企業が応援するような世界をつくり上げたいです。

 こうしたビジョンを実現させるため、当社は目下、成長資金の調達に向けた準備を進めているところです。多くの人に当たり前のようにサービスを使ってもらうには、信用や成長資金をえることが重要です。その手段として、IPOは必要だと考えています。当社は、リファラル採用を活性化することで、雇用の流動化と人材の最適配置を促します。その結果、個人は自分の力をもっとも発揮できる場に挑戦し、活躍できるようになる。TalentXの事業が成長することで、日本人の働く価値観を変えていきたいですね。
PROFILE プロフィール
鈴木 貴史(すずき たかふみ)プロフィール
1988年、和歌山県生まれ。静岡大学を卒業後、2012年、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。IT・ネット業界を中心に500社以上の中途採用を支援した後、サービス開発部で新規事業企画に従事。2014年にグループ歴代最年少で社内ベンチャー制度「0to1」を通過。1億円の社内出資をえてリファラルリクルーティング事業『MyRefer』を立ち上げ、早期において日本にリファラル採用の概念を提唱。9ヵ月で黒字化を実現し、新規事業開発部ゼネラルマネジャーとして同社の新規事業拡大をけん引する。2018年、事業譲渡によりMBOを経て完全独立。パーソル初となるスピンオフベンチャーとして、「MyRefer」(現:TalentX)を設立、代表取締役社長 CEOに就任。
企業情報
設立 2018年5月
資本金 3億6,730万754円
従業員数 リファラル採用サービス、『MyRefer』の企画、開発、管理、運営など
URL https://talentx.co.jp/
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