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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

SOICO株式会社 代表取締役社長 茅原 淳一

アカウンティングに特化したベンチャーが手がける資本政策支援

スタートアップに“効く”信託型ストックオプション活用のススメ

SOICO株式会社 代表取締役社長 茅原 淳一

これまでは、SOICOが提供する「信託型ストックオプション(以下、信託型SO)」の特徴を紹介してきた。ただ、「そもそもSOってなに?」という読者もいるだろう。そこで、このページでは引き続き茅原氏の協力のもと、SOの基本とともに、SOの先進国であるアメリカの最新情報もあわせて紹介する。
※下記はベンチャー通信77号(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

人材の引き留めや採用のインセンティブに活用

 もともとSOは、アメリカで始まった制度であり、日本では、1997年5月の改正商法によってSO制度が認定された。

 定義としては、発行会社がその役員や従業員に対し、報酬として無償で付与する自社株式オプションである。SOを付与された役員や従業員は、会社の株価が上昇した際、SOによって優遇された行使価額で、定められた数量の株式を取得・売却できる。その、株価との差額分を利益としてえられるのだ。

 株価があがればあがるほど利益が大きくなるので、役員や従業員は株価をあげるために一生懸命働き、それが会社や株主の利益となる。それが、SOの仕組みだ。

 IPOをめざすスタートアップにおいては、人材の功労に報いるため、もっといえば引き留めのために利用したり、優秀な人材の採用といった目的のため、積極的に用いられている。茅原氏も「たとえば大企業から未上場企業に人材が入社する場合、SOがあるから多少給与が下がっても、将来に期待して転職するケースが多い」と話す。

 その種類に限らず、SOは人材の引き留めや採用の大きな武器となるのだ。それでは、SOの種類は一体どれだけあるのだろうか。

SOの種類によって変わる、メリット・デメリット

 まずは、「無償SO」と「有償SO」に分けられる。これは「無償」「有償」という名の通り、受け取る側が最初にSOの対価として、現金の支払いを行うかどうかの違いになる。これだけを聞くと、「無償SO」のほうが、受け取る側にとって有利にみえるが、一概にそうとはいえない。

 大きくは、税制の違いがある。「無償SO」は、給与のような側面をもつと考えられ、受け取った従業員側の課税関係としては、給与課税となる。そのため、最大55%の税金がかかってしまう。この場合、株式を売却する前に納税義務が発生するため、非常に使いにくいものになってしまうのだ。

「そこで政府は、『無償適格SO(※)』という特例の制度を策定。一定の要件を満たせば、給与課税ではなく譲渡課税とみなされ、約20%の課税ですむのです。ただ、条件をひとつでも満たさない場合は、『無償非適格SO』となってしまいます」(茅原氏)

 一方「有償SO」の場合、有償とはなるが、購入するカタチなので「金融商品」とみなされ、条件はなにもない状態で約20%の譲渡課税のみとなるのだ。「こうした税制や条件の違いがあることから、『信託型SO』は『有償SO』をスキームに組み込んで設計しています」(茅原氏)
※無償適格SO:有償SOが登場する前は、このスキームがよく使用されており、前ページで紹介した「従来のSO」はこのSOを指す

ニーズにあわせた、カスタマイズが可能

 以上のように、SOの種類とそれぞれのメリット・デメリットを紹介してきたが、会社がめざす組織のあり方やSOの活用方針によってスキームの設計の仕方はさまざま。必ずしも「有償SO」がスタートアップに適しているといい切ることはできない。「たとえば、役員のみにSOを付与するカタチであれば『無償適格SO』を導入したほうが簡単ですし、当社もそれを提案します。ニーズによっていろいろなスキームづくりを行うので、ぜひ相談してほしいですね」(茅原氏)

(1)新しい「Exit手段」

 アメリカでは、ユニコーン(※)をめざすスタートアップが増え、創業からIPOまでの期間が延びている。それにともない、ストックオプションの存続期間がIPO前に終了してしまうという問題が発生。この対応策として、IPO以外のExitがつくられている。

 たとえば、ストックオプションの付与を受けて一定期間経過後であれば、資金調達で外部の投資家が会社に投資をする際、その投資家に対して従業員は、保有するストックオプションを行使してえた株式を売却することができるという仕組みがある。

 これにより、IPO前であっても、ストックオプションの存続期間が失効する前に、従業員はExitする機会を与えられることになる。
※ユニコーン:評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業を指す

(2)ストックオプションのセカンダリーマーケット

 アメリカでは、ストックオプションの取引所があり、ストックオプションの保有者は一定条件を満たせば、この取引所でストックオプションを売却することができる。たとえ従業員ではない人でも、会社のストックオプションを売り買いすることが可能。

 企業側はこの取引所でストックオプションを一般の投資家に買ってもらうことで、企業のマーケティングやPRを行うことができるものと考え、この制度を適用している会社が多い。ストックオプションをもってもらうことで自社のファンをつくり、事業拡大につなげようというのだ。

 またこのような仕組みを適用していることをアピールすることで、より優秀な人材の採用につなげている。
PROFILE プロフィール
茅原 淳一(かやはら じゅんいち)プロフィール
1982年、栃木県生まれ。2005年に慶應義塾大学を卒業後、新日本有限責任監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)に入所。その後、クレディ・スイス証券株式会社を経て、2012年にKLab株式会社入社。経営企画室に配属され、資金調達や株式報酬型のインセンティブ制度の設計などの資本政策にかんする責任者として業務に従事。海外子会社の取締役などを歴任。2016年に、上場企業として初の信託を活用したストックオプションプランを実施。2018年に、SOICO株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。公認会計士。
企業情報
設立 2018年1月
資本金 3,300万円(2019年8月現在)
事業内容 信託型ストックオプションの設計・発行・運用コンサルティング事業、資本政策全般にかんするコンサルティング事業など
URL https://www.soico.jp/
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