INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

リファラル採用のパイオニアが提唱する組織づくりの要諦
人材採用を企業成長につなげる近道は、自社のファンを「社内に」つくること
株式会社TalentX 代表取締役社長 CEO 鈴木 貴史
Sponsored 株式会社TalentX
事業基盤を固めた企業がさらなる成長を目指すには、それに見合う十分な人材の確保が欠かせないが、いかに自社にマッチした社員を採用していくかが課題となる。こうした課題に対して、「まずは既存社員のなかに自社のファンをつくることが大切」と語る人物がいる。社員に人材を紹介・推薦してもらう「リファラル採用」を活性化するサービスを他社に先駆けて展開し、市場を切り拓いてきたTalentX代表の鈴木氏だ。企業を成長に導く人材採用のあり方について、同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信79号(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
採用を急ぐ前に、組織づくりを見直すべき
―成長を目指す企業の人材採用を支援するなかで、どのような悩みを聞きますか。
事業が安定し、社員数が増えたタイミングで、成長が足踏みしてしまうという悩みをよく耳にします。そして、こうした悩みを抱える企業は、いっそうの事業拡大と企業成長を目指すため、「いかに優秀な人材を確保して組織を拡大するか」をまず先に考えがちです。
しかし、本質的な課題は人材採用ではなく、「いかに強い組織をつくるか」にあると私は考えています。多くの企業は、自社を成長させるために、経営戦略や事業戦略まで立案していても、強い組織をつくるための戦略までは描ききれていません。そのため、採用にどんなに注力しても、組織力がそもそも弱いので、会社の成長にはつながっていかないのです。
会社を成長させるには、社員を増やす前にいちど立ち止まり、まずは組織力をいかに高めるかを考えるとよいでしょう。
しかし、本質的な課題は人材採用ではなく、「いかに強い組織をつくるか」にあると私は考えています。多くの企業は、自社を成長させるために、経営戦略や事業戦略まで立案していても、強い組織をつくるための戦略までは描ききれていません。そのため、採用にどんなに注力しても、組織力がそもそも弱いので、会社の成長にはつながっていかないのです。
会社を成長させるには、社員を増やす前にいちど立ち止まり、まずは組織力をいかに高めるかを考えるとよいでしょう。
―組織力を高めるポイントはなんですか。
先ほど話したように、経営戦略や事業戦略に即した組織戦略を描くことは前提となりますが、どのような戦略であれ共通するのは、社員一人ひとりのエンゲージメント(※)を高めることです。エンゲージメントの向上には、理念・ビジョンの浸透や成長機会の提供など、いくつか有効な施策があります。組織力に定評のあるメルカリはまさに、「3つのバリュー」の浸透といった施策を徹底し、社員のエンゲージメントを高めている好例と言えるでしょう。
そしてじつは、当社が事業を通じて推奨するリファラル採用の導入も、エンゲージメントを高めるのにもっとも有効な施策のひとつなのです。たとえば、当社が支援したある外食チェーン企業は、リファラル採用を活性化したことで、業績の伸びが加速。社員のリファラル採用比率が100%の店舗は、国際的な旅行口コミサイト大手から優良店として表彰されるまでにいたりました。
そしてじつは、当社が事業を通じて推奨するリファラル採用の導入も、エンゲージメントを高めるのにもっとも有効な施策のひとつなのです。たとえば、当社が支援したある外食チェーン企業は、リファラル採用を活性化したことで、業績の伸びが加速。社員のリファラル採用比率が100%の店舗は、国際的な旅行口コミサイト大手から優良店として表彰されるまでにいたりました。
※エンゲージメント:社員が企業の掲げる戦略や目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮しようとする貢献意欲
リファラル採用は、当事者意識を醸成する
―リファラル採用がエンゲージメントの向上に効果的なのはなぜでしょう。
エンゲージメント向上につながる当事者意識を醸成することができるからです。リファラル採用は、社員一人ひとりに会社の「リクルーター」となってもらい、自身の友人や知人から、優秀な人材を会社に紹介・推薦します。そのため、ともに働く人材の選択に自分も関与するという、当事者意識が生まれてくるのです。
さらに、会社のリアルを知る社員が「生の声」で知人に自社を紹介するため、雇用のミスマッチが起こりにくい。つまり、リファラル採用は、既存社員のエンゲージメント向上を通じた組織力の強化と、新しく採用する人材とのマッチングと、両面においてメリットを発揮できるのです。
さらに、会社のリアルを知る社員が「生の声」で知人に自社を紹介するため、雇用のミスマッチが起こりにくい。つまり、リファラル採用は、既存社員のエンゲージメント向上を通じた組織力の強化と、新しく採用する人材とのマッチングと、両面においてメリットを発揮できるのです。
―リファラル採用はどの程度、世の中に浸透しているのでしょうか。
当社がリファラル採用を促進するために提供するクラウドサービス『MyRefer』の導入企業だけで、すでに現在550社を突破しています。企業のリファラル採用に対する関心は、当社がサービス提供を始める前の2014年時点でわずか20%程度でしたが、現在は約70%の企業が関心をもっているとの調査結果があります。当社はリファラル採用という言葉すらほとんど認知されていない時期から、他社に先駆けて『MyRefer』を提供していましたが、現在ではリファラル採用関連のサービスを提供する競合も20社近くまで増え、市場の広がりを実感しています。
しかし、リファラル採用を導入する企業が増えるなかで、私たちが本来推奨していた採用のあるべき姿とは違う、残念な広まり方をしているケースも増えてきました。
しかし、リファラル採用を導入する企業が増えるなかで、私たちが本来推奨していた採用のあるべき姿とは違う、残念な広まり方をしているケースも増えてきました。
―詳しく聞かせてください。
短期的な母集団の獲得や採用単価の削減を目的に、リファラル採用を形式的に導入し、自社を勧める気のない社員にも強制的に紹介を促すケースがみられるのです。その場合、社員は紹介に対する金銭的なインセンティブを目的に、知人を会社に引き込むことも起こりえます。そもそも自社に愛着をもっていない社員が紹介すると、知人に伝わる会社の姿は実態とかい離しがちに。そのため、誘われた知人は、実態と異なる会社像に惹かれて入社することにもなり、期待する会社像とのギャップに入社後に気づき、目的とは逆にエンゲージメントの低下につながりかねない。つまり、リファラル採用本来のメリットである「会社と人材のマッチング」が期待できなくなるのです。
こうしたなか、私は「ファンベース採用」という概念を提唱し、リファラル採用本来のあるべきカタチをあらためて理解してもらおうと啓発を行っています。
こうしたなか、私は「ファンベース採用」という概念を提唱し、リファラル採用本来のあるべきカタチをあらためて理解してもらおうと啓発を行っています。
―ファンベース採用とは、どのような概念なのですか。
社員を会社のファンにして、ファンをベースに会社をつくるべき、という考え方です。金銭によるインセンティブの活用は制度として必要だと考えていますが、社員が自発的に知人を自社に紹介する動機はあくまでも、「キャリア形成に悩んでいる友人を助けたい」「会社のためにいい人材を連れてきたい」といった気持ちであることが重要なのです。その際のKPI(重要業績評価指標)も、短期的な応募者数や採用人数ではなく、「自社の魅力を友人に話してくれた社内ファンの数」に設定します。
―短期的な採用そのものが目的ではないということですね。
そのとおりです。まずは、社員が自発的に会社を勧めたくなる関係づくりから始まり、そこから中長期的に採用人数を増やしていくのが、ファンベース採用の目的です。ファンベース採用においては、自社の本当の魅力をよく知る社員がそれをストレートに伝えるので、紹介を受けた人は、会社のありのままの魅力を会社像として捉えられる。そのため、入社してからも、期待と実態の差にギャップが生じにくく、マッチングの精度が高まります。新しく入った社員は高いエンゲージメントをもって働いてくれ、組織力はさらに強まっていくでしょう。
一見、遠回りのようですが、人材の採用を組織の成長、ひいては会社の成長につなげるには、ファンづくりをベースとしたリファラル採用が近道だと言えるのです。
一見、遠回りのようですが、人材の採用を組織の成長、ひいては会社の成長につなげるには、ファンづくりをベースとしたリファラル採用が近道だと言えるのです。
日本の採用市場を変革する
―今後の展望を聞かせてください。
人とのつながりで雇用を流動化させるリファラル採用を広めることで、「日本のはたらくをアップデートする」というビジョンの実現を目指しています。
人々が転職活動において、人材エージェントや採用サイトなどの第三者を介すのではなく、人とのつながりを経由して適材適所が叶う活躍の場を探していく。当社は日本におけるリファラル採用のパイオニアとして、そんな世界を実現していきたい。
すでに「ひとり当たりGDP」の順位が低下している日本において、社員が平日を憂い、飲み会が会社の愚痴で盛りあがるような会社ばかりでは、日本の競争力はますます落ちていく一方でしょう。そうではなく、働くことに熱狂し、適材適所でイキイキと活躍する社員が多くいる会社が増えることで、日本の競争力を高めていく。当社は、そんな変革を採用市場に起こせるインフラサービスを提供していきたいと考えています。
人々が転職活動において、人材エージェントや採用サイトなどの第三者を介すのではなく、人とのつながりを経由して適材適所が叶う活躍の場を探していく。当社は日本におけるリファラル採用のパイオニアとして、そんな世界を実現していきたい。
すでに「ひとり当たりGDP」の順位が低下している日本において、社員が平日を憂い、飲み会が会社の愚痴で盛りあがるような会社ばかりでは、日本の競争力はますます落ちていく一方でしょう。そうではなく、働くことに熱狂し、適材適所でイキイキと活躍する社員が多くいる会社が増えることで、日本の競争力を高めていく。当社は、そんな変革を採用市場に起こせるインフラサービスを提供していきたいと考えています。
TalentXが提唱する、「ファンづくり」をベースにしたリファラル採用。このページでは、この手法を導入し、優秀な人材の獲得に成功している事例として、企業向けコミュニケーションアプリの提供で業績を急速に伸ばしているIT企業、「Phone Appli」の取締役、岩田氏を取材。急成長のウラで抱えていた人材に関する課題や、それを解決したファンづくりの具体的な施策などについて、同氏に聞いた。
持続的な成長に向けて、人手不足解消が喫緊の課題に
―事業概要を教えてください。
社員や顧客の連絡先をクラウドで一元管理できる『連絡とれるくん』や、フリーアドレスでも誰がどこにいるかがわかるように社員の位置情報を表示できる『居場所わかるくん』など、企業におけるコミュニケーションの課題を解決するためのサービスを開発・提供しています。働き方改革や業務効率化に向けたニーズの高まりも追い風に、業績は伸び続け、2018年にはテクノロジー系業界で売上高の伸び率が高い企業が表彰される「日本テクノロジー Fast 50(※)」で27位に選出されました。
※日本テクノロジー Fast50:有限責任監査法人トーマツが発表した、テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界の売上高にもとづく成長率のランキング
―業績が急速に伸びるなかで、岩田さんのミッションはなんですか。
入社から約3年間はおもに技術や開発を統括していましたが、昨年4月からは総務や人事など管理業務の統括もあわせて会社の成長を支えるのがミッションとなりました。
当社では、業績が急伸する一方で、深刻な人手不足の解消と組織基盤の強化が喫緊の課題でした。こうした課題に対し、2019年度の事業計画では、年間50名超の社員を採用する目標が設定されました。それまで当社は、Web媒体の活用や経営陣のコネによる縁故採用で社員を増やしていましたが、組織として明確な採用戦略はありませんでした。こうしたなかで、今後も高い成長率を継続させていくために、自社にマッチする優秀な人材をどう採用すればいいのか、私にはわかりませんでした。
当社では、業績が急伸する一方で、深刻な人手不足の解消と組織基盤の強化が喫緊の課題でした。こうした課題に対し、2019年度の事業計画では、年間50名超の社員を採用する目標が設定されました。それまで当社は、Web媒体の活用や経営陣のコネによる縁故採用で社員を増やしていましたが、組織として明確な採用戦略はありませんでした。こうしたなかで、今後も高い成長率を継続させていくために、自社にマッチする優秀な人材をどう採用すればいいのか、私にはわかりませんでした。
リファラル採用とイベントを、社内外のファンづくりに
―そうした状況をどう打開したのですか。
TalentXの鈴木社長から、急成長する組織をより強くするための採用戦略に関するコンサルティングを受けました。そのなかで、社員のエンゲージメントを高めることで自発的に会社を勧めるようになる「本質的なリファラル採用」の概念を知りました。当社は社員のエンゲージメント向上にも注力していましたが、その目的は「既存の優秀な人材を逃さないため」で、「採用に結びつける」という発想はありませんでした。そこでさっそく、マッチング精度の高いリファラル採用に期待し、社員が簡単に楽しく友人へ自社を紹介できるクラウドサービス『MyRefer』を導入。社内外のファンづくりのために社員が知人を呼んで参加してもらえるイベントの開催も始めました。
―どのようなイベントでしょう。
寿司パーティーやピザパーティーなど、当社の社員と気軽に食事を楽しみながら交流を行うものです。イベントは昨年夏からこれまで7回開催し、『MyRefer』のイベント求人機能を使って社員に気軽に友人を誘ってもらっています。一般的な企業説明会のように、「採用」や「募集」を感じさせるような雰囲気は排除して、まずはPhone Appliとはなにをしている会社なのか、どのような環境でどんな社員が働いているのか、気軽な雰囲気のなかで、ありのままの会社の姿を知ってもらうのが目的です。
社員のエンゲージメントが、目に見えるカタチで高まった
―どういった成果がありましたか。
昨年5月から合計11名がリファラル採用で入社してくれました。新しい仲間たちは、会社のリアルな姿を知ったうえで入社を決めているので、すぐに職場に馴染み、意欲的に仕事をしてくれています。リファラル採用の導入は間もないですが、さっそくマッチング率の高さを実感しています。
また、既存社員がリクルーターとして「会社の課題解決と成長に自身が直接介在する」ことで、当事者意識が高まったのも成果のひとつです。『MyRefer』では社員が自社を紹介した理由を社内で共有し、社員をファンにするコミュニケーションを取っています。社員のエンゲージメントを数値化する「モチベーションスコア」の分析により、リファラル採用へのかかわりと、エンゲージメント向上との関連を感じています。
また、既存社員がリクルーターとして「会社の課題解決と成長に自身が直接介在する」ことで、当事者意識が高まったのも成果のひとつです。『MyRefer』では社員が自社を紹介した理由を社内で共有し、社員をファンにするコミュニケーションを取っています。社員のエンゲージメントを数値化する「モチベーションスコア」の分析により、リファラル採用へのかかわりと、エンゲージメント向上との関連を感じています。
―会社をさらなる成長に導くための方針を聞かせてください。
リファラル採用の効果はすでに実感できたので、今後は自社のことが好きでも「友人に紹介する」という行動までにはいたらない社員の背中をいかに押すか、試行錯誤していきたいと考えています。社内外に会社の魅力や想いを伝えてファンをつくるリファラル採用は、人と人とのコミュニケーションを重視する当社の価値観にも合っている手法だと思っています。これからも、「コミュニケーション改革企業No.1」をビジョンに掲げるPhone Appliなりのファンづくりを行い、エンゲージメントの高い社員をさらに増やしながら企業の成長につなげていきたいですね。
PROFILE
プロフィール
鈴木 貴史(すずき たかふみ)プロフィール
1988年、和歌山県生まれ。静岡大学を卒業後、2012年、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。IT領域の採用コンサルティングに従事後、2015年、1億円の社内資金調達のもとHRテックベンチャー、「MyRefer」(現:TalentX)を創業。リファラル採用の概念を提唱し、グループ歴代最年少でコーポレートベンチャーCEOに就任。2018年、株式会社USEN-NEXT HOLDINGS代表の宇野康秀氏、グリーベンチャーズ株式会社(STRIVE)などを引受先とする総額3億6,000万円の資金調達を実施し、MBOを経て独立。株式会社TalentXの代表取締役社長 CEOに就任。
岩田 泉(いわた いずみ)プロフィール
1973年、京都府生まれ。京都大学大学院で電子工学を修了後、1998年、日本電信電話株式会社に入社。2003年にエンピレックス株式会社、2008年にシスコシステムズ合同会社を経て、2016年、株式会社Phone Appliに入社。2017年、取締役に就任。
株式会社TalentX 企業情報
設立 | 2018年5月 |
---|---|
資本金 | 3億6,730万754円(資本準備金含む) |
従業員数 | 31名 |
事業内容 | リファラル採用サービス『MyRefer』の企画、開発、管理、運営など |
URL | https://talentx.co.jp/ |
株式会社Phone Appli 企業情報
設立 | 2008年1月 |
---|---|
資本金 | 3億9,836万5,710円 |
従業員数 | 156名(2019年10月1日現在) |
事業内容 | 『連絡とれるくん』(クラウド電話帳サービス)をはじめとしたクラウドサービスの企画・開発・販売など |
URL | https://phoneappli.net/ |
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