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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社ヘッドウォータース 代表取締役 篠田 庸介

システム開発17年×AI活用8年による事業の「厚み」で独自のビジネスを展開

積極的なM&AでAI事業を拡大し、社会の基盤となるプラットフォーム構築を目指す

株式会社ヘッドウォータース 代表取締役 篠田 庸介

AIに関する、さまざまな事業を展開しているヘッドウォータース。人型ロボット『Pepper』のアプリ開発を手がけた会社として注目を集め、独自のAIソリューションの開発や活用支援を行ってきた。2020年9月には東証マザーズ上場を果たし、さらなる事業の拡大を目指している。「今後は積極的にM&Aを実施していきたい」と話す同社代表の篠田氏に、会社の強みや起業のきっかけ、今後のビジョンなどを聞いた。
※下記はベンチャー通信84号(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

アカデミックにとどまらない「 実用的」なAIを提供

―まずは事業内容を教えてください。

 AIソリューション事業をメインに手がけています。ポイントは、「実用的」なAIの提供を行っていることですね。AIの精度を高めるために研究開発を行うことは、社会的にとても意義深い仕事です。ただ、それがアカデミックな領域内にとどまっているだけでは、誤解を恐れずに言うと事業とは呼べないでしょう。AIをサービスやシステムの裏側に組み込んで、新たな市場をつくったり売上をあげたりする。そこまで行うことで、世の中へ価値を提供できる「事業」となります。我々は、そうしたAIソリューションの開発および活用支援を行っているのです。

―具体的に、どのようなAIソリューションを提供しているのですか。

 一例として、現金やスマホ、カードを使わずに手ブラで生体認証取引を可能にする顔認証決済プラットフォームがあげられます。そのほか、トイレ内の忘れ物や急病人をセンサーで検知するシステムや、カメラ情報や赤外線センサー、ソナーセンサーを使った自動走行アプリケーションの開発。そのほか、オンライン診療クラウドアプリや配車計画など、さまざまな領域でさまざまな企業と協働しながら、AIソリューションを提供しています。

―なぜそのような事業を展開できるのでしょう。

 そもそも当社は、2005年に創業して以来、金融系のシステムやゲームアプリの開発など、幅広い分野においてシステム開発を行ってきた実績があります。すなわち、AIを組み込むことが可能な周辺システムの開発技術とノウハウが豊富にあったといえます。それにくわえて、まだアカデミックな観点からAIを扱う企業がほとんどだった2014年から、すでに実用的なAIの開発に携わっていた点が大きいですね。具体的には、縁あってソフトバンクの人型ロボット『Pepper』のアプリ開発に、トップランナーとしてかかわっていました。その取り組みが評価され、大手を含めた各企業からHPを通じて直接問い合わせがくるように。そうした各種案件に携わっていった結果、コンサルから運用まで一気通貫でAIソリューションを提供する企業にまで成長することができたのです。

エンジニアが主体となって、新しい価値を生み出す組織を

―起業したきっかけを教えてください。

 エンジニアが、主体的に自らチャレンジする会社をつくりたかったからです。世界を見渡すと、GAFAを含め、経営陣がエンジニア出身というスタートアップは珍しくありません。一方、当時の日本は、金融やメーカーが強いこともあり、そうした会社のシステムをエンジニアが下請けで開発するケースが散見されました。しかし私は、今後はデジタル技術が世界の中心になっていくはずだし、エンジニアの可能性は無限大だと感じていました。そこで、プログラムを組むことがゴールではなく、エンジニアがもっている知識やテクノロジーに対する愛着を駆使して、新しい価値をどんどん世に生み出していくような組織をつくろうと考えたのです。創業後は、そうした想いを一人ひとりのエンジニアに伝え、共感した人にジョインしてもらうことによって、徐々に会社を成長させていったのです。

―そうしたヘッドウォータースならではの強みはなんでしょう。

 やはり、「エンジニアが自らチャレンジする」というカルチャーが根づいていることですね。『Pepper』の開発にトップランナーとして携われたのも、新しいことに対して面白がって取り組むエンジニアが多くいたからだと思います。ちなみに、経営陣や管理部の一部を除き、メンバーの約9割がエンジニアです。そうした想いをもったエンジニアたちによって、17年のシステム開発と、8年にわたるAI活用に取り組んできたわけです。こうした事業の「厚み」は、そう簡単にはマネができない、我々ならではの強みだといえるでしょう。

今後重要になってくる、2つのキーワード

―2020年に東証マザーズ上場を果たしましたが、狙いはなんですか。

 AIソリューション事業を軸としつつ、エンジニアがチャレンジできる環境づくりの選択肢を増やすためですね。上場すれば、ファイナンスの規模も大きくなり、経営上で使えるオプションは圧倒的に増えていきますから。なかでも今後、強化していきたいと考えているのが、M&Aです。これまでは自社開発や他社との協働でAIソリューションを提供してきましたが、今後は積極的にM&Aを実施していくことで、事業領域を拡大していこうと。そうすることで、社内でさまざまなプロジェクトが立ち上がり、主体的にかかわるエンジニアが増えていけば、メンバーが経験を積める絶好の機会になりますし、会社としても成長できますからね。

―今後のビジョンを教えてください。

 今後、AIソリューション事業の拡大において重要になってくるのは、2つのキーワードだと考えています。ひとつが、「企業の本質的なDX支援」。もうひとつが、「リアルデータの獲得」です。

 まず「企業の本質的なDX支援」ですが、たんに「社内で経理ツールを導入してペーパレス化を図りました」というのは、あくまでツールの活用であって、本質的なDXではありません。たとえば、スマホひとつで自動運転の寄り合いタクシーを自宅に呼び、目的地に向かう。その際、乗車人数や時間帯によって変動する、ダイナミックプライシング(※)にしておく。そうした仕組みが実現すれば、タクシー会社の事業に新しい価値が生まれます。こうしたDXに各社が取り組むべきで、我々がその伴走支援を行っていこうと。
※ダイナミックプライシング : 需要状況に応じて価格を変動させて、需要の調整を図って利益を最大化する手法

―「リアルデータの獲得」についてはいかがですか。

 現在、EC市場は伸び続けていますが、世界全体における購買の81%が実店舗で行われているというデータがあります。そこで、店舗にて消費者がどのような行動を取るかといった情報をAIでデータ化して集めることができれば、新たな商品開発やマーケティングにつながります。これは、購買データだけに限らず、食事や医療など、さまざまな情報のデータ化が可能。ネット上のデータはGAFAに独占されていますが、我々がこうしたリアルデータをとっていくことができれば、GAFAにも負けない価値を提供できる。さらに、そのデータを我々が独占するのではなく、企業や個人と共有していきたいと考えているのです。

デジタルの恩恵が受けられる、社会の実現を目指していく

―なぜ独占ではなく共有なのですか。

 データを一企業が独占しても、できることには限界があるからです。データをみんなで共有することで、人々がデジタルの恩恵を受けられる社会の実現が目指せる。我々は、「企業の本質的なDX支援」と「リアルデータの獲得」を組み合わせることで、「スーパーシティ構想(※)」の基盤となるようなプラットフォームの構築を見すえているのです。それを実現させるためにも、M&AによってAIソリューション事業の領域を増やしていきたい。興味のある企業は、ぜひ当社のパートナーになって、一緒にチャレンジしてほしいですね。
※スーパーシティ構想 : 医療や交通、教育、行政手続きなど、生活全般にまたがる複数の分野で、AIやビッグデータを活用する先端的なサービスを導入することにより、 便利で暮らしやすいまちを国や地域、事業者が協力して実現していく取り組み
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