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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

プロジェクト・オーシャン株式会社 代表取締役 早川 智也

20年の経験に基づいた出口戦略の専門家がアドバイス

「スタートアップの良さ」を損なわない、IPO準備のススメ

プロジェクト・オーシャン株式会社 代表取締役 早川 智也

東証マザーズ市場のIPOが、2020年の63社から2021年は93社に増加したことから、スタートアップのIPO意欲が高まっていることがうかがえる。そうしたなか、スタートアップに特化した出口戦略支援を行っているプロジェクト・オーシャン代表の早川氏は、「スタートアップの良さを損なわないIPOを実現するには、専門家の支援が重要」と指摘する。同氏に、昨今におけるIPO市場の状況を含めて詳細を聞いた。
※下記はベンチャー通信84号(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「社会の公器」としての、体制構築が重要に

―近年におけるIPO市場の状況をどのようにみていますか。

 特にスタートアップにとって、IPOを目指す環境が整っていると分析しています。たとえば、SaaS(※)を手がけるスタートアップが人気ですが、サブスクリプション(※)型のビジネスモデルゆえに、数年先の成長が見込みやすい。そのため、売上さえ伸びていれば、赤字でも上場を認めるケースが増えています。また、ベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資金額が増加したことで、事業規模が拡大した状態でIPOを実現し、さらなる成長を目指せるスタートアップが増えているのも大きいですね。
※SaaS:Software as a Serviceの略。必要な機能を必要なぶんだけサービスとして利用できるようにした、ソフトウェアもしくはその提供形態のこと
※サブスクリプション:定額料金を支払い利用するコンテンツやサービスのこと

―そうしたなか、スタートアップがIPOを目指すうえで押さえておくべきポイントはなんでしょう。

 「社会の公器」となるため、企業経営を管理監督するためのコーポレート・ガバナンスを構築したうえで、株主に経営内容を正しくディスクロージャー(情報開示)する体制を整えることですね。IPOを実現するには、そうした体制を証券会社や証券取引所から厳しく審査されますから。ただ、ほとんどの経営者はIPO未経験のため、「最終的にどのようなアウトプットをすればいいか」のゴールが見えないんですね。そこで当社では、そのゴールを示しつつ、スタートアップの立場から、証券会社・証券取引所が納得する体制づくりを行うコンサルティングを行っています。

IPOの本質的な基準は、年を経ても変わらない

―具体的にどのようなコンサルティングを行っているのですか。

 言わば、「スタートアップならではの良さ」が損なわれない管理体制の整備を勧めています。たとえば稟議書。以前は紙でプリントアウトして、上長の押印が必要でしたが、スピード感が強みのスタートアップには不向きです。そこで、「電子印鑑や、上長にしか入れないアカウントで承認を得るようなITツールの活用でもいいですよね」と、証券会社や証券取引所と交渉する。また最近では、リモートワークに伴う勤怠管理の相談が増えていますね。証券会社や証券取引所から見れば、「会社支給のPC端末を管理していても、打刻後に従業員私用のPC端末でサービス残業をさせる可能性がある」と考えるわけです。これに関しては正直、明確な正解はないですが、こうしたグレーなポイントでも、スタートアップの柔軟さを活かした形で細かく調整していくのです。

―なぜ、そのような支援を提供できるのでしょう。

 私自身、前職時代に証券会社で主幹事業務を行い、テクノロジーの理解やテック企業のカルチャーを学んできたことを礎に、20年にわたってIPO支援を行ってきた経験があるからです。また、会社創業後は、ミクシィやfreeeなど、時代を代表するような銘柄の上場支援にも関与しました。審査のトレンドや社内管理に利用するツールは年々変化しますが、上場審査で求められるものの本質は変わっていません。当社は、単なる申請書類の作成や社内規程の作成支援だけではなく、IPOの本質を理解したうえでのコンサルティング提供が可能なのです。

効率的なIPOの実現には、コンサル企業の協力が効率的

―スタートアップの経営者に、IPOを目指す際のアドバイスをお願いします。

 IPOを目指すのであれば、社会的な責任が伴います。そこで重要になるのが、やはりコーポレート・ガバナンスやディスクロージャーといった「守り」の領域です。企業によっては、従業員の育成目的でそうしたIPO準備を内製するケースもあります。ただ、企業競争が激しい昨今、いち早くIPOを実現して会社を成長させる必要があります。そのためには、当社のようなコンサル会社の協力を得たほうが効率的です。

 また昨今、グローバルオファリング(※)を通じて海外売り出し比率をあげることがトレンドですが、私はやみくもに海外の比率を増やせば良いわけではないと考えています。
※グローバルオファリング:株式などの有価証券の募集・売り出しを国内だけでなく海外市場でも同時に行うこと

―それはなぜですか。

 海外機関投資家は株式を長期保有する傾向にあり、長期保有目的の株主ばかりになると株の流動性がなくなります。結果、株が売り買いされた際に株価が乱高下するリスクがあるからです。上場審査対応だけでなくIPO時の資本政策などの助言も行っていますので、ぜひIPOを検討する際は当社に相談してほしいですね。
PROFILE プロフィール
早川 智也(はやかわ ともや)プロフィール
1976年、三重県生まれ。2001年に関西大学大学院商学研究科(会計学専攻)修士課程を修了後、大和証券エスエムビーシー株式会社(現:大和証券株式会社)に入社。公開引受部にてIPO支援業務、証券取引所折衝業務に従事する。インターネット関連企業を中心に複数社のIPOを実現。2006年3月、プロジェクト・オーシャンLLPを設立する。2009年6月の株式会社化に伴い、代表取締役に就任。
プロジェクト・オーシャン株式会社 企業情報
設立 2006年3月
事業内容 IPOコンサルティング業務、J-SOXコンサルティング業務、M&Aアドバイザリー業務、人材紹介業務
URL https://project-ocean.com/
お問い合わせメールアドレス info@project-ocean.com
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