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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社one net 代表取締役社長 星 祐貴

北海道で躍進するテレマーケティング企業の新事業戦略

「人を大切にする」経営を貫くためには、あらゆることは変えていい

株式会社one net 代表取締役社長 星 祐貴

北海道を拠点にBtoCのコールセンター事業を展開するone net。「ヒトがヒトを育む企業づくり」という創業以来の理念を軸に、売上、人員ともに近年、急成長を遂げてきた。その同社がいま、主力事業の分社化や新事業の立ち上げによって、グループ化を志向。新たな成長ステージに入っているようだ。同社代表の星氏は、「『人を大切にする』という軸がぶれなければ、あらゆるものは変えていいと思っています」と語る。経営の根幹にある、人づくりにかける想いや、今後の成長ビジョンなどについて、同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信86号(2022年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「次なる成長ステージへ」という明確な意思決定

―one netは今年2月に、主力であるコールセンター事業などの分社化を発表しました。その背景はなんですか。

 個人のお客さまへコンタクトをとる「コールセンター事業」を創業以来の主力としてきた当社ですが、この間、事業が順調に拡大し、会社の成長をけん引してきました。全社売上高は、2020年10月期が18億6,000万円となり、今期は30億円を見込んでいます。こうした確固たる事業基盤を築けたいま、当社では「次なる成長ステージに移行しよう」という明確な意思決定を行ったのです。

 当社には、コールセンター事業のほかにも、Webサイト運営や集客を行う「Webマーケティング事業」、全国のパートナーの営業支援を行う「パートナー事業」なども育ってきました。さらに、昨今ではテレマーケティング事業の経験やノウハウを活用した新たな事業領域にも参入し始めています。そこでone net本体では、今後こうした「新事業創出」に事業の軸足を移すこととし、コールセンター事業の運営は新会社「one net INSIDE SALES株式会社」に移管することを決めたのです。

―現在手がけている新事業とは、具体的にどのようなものですか。

 たとえば、デジタル庁も推奨している「引越しワンストップサービス」があります。これまで提携してきた不動産会社のお客さまに対して、公共料金の手続きや転入・転出届といった行政手続きなど、引越しに伴う手続きを一括で行う支援サービスを提供する事業です。また、不動産や通信回線の契約でコンタクトをとるお客さまに対して、新たな保険商品を提案する「保険事業」などもあります。いずれも、従来のコールセンター事業で培った強みを活かし、さらに飛躍させるために構想した新事業です。

―ここにきて新事業創出に軸足を移すことには、どのような狙いがあるのでしょう。

 ひとつは、変化の激しい時代にあっても、つねに世の中に新たな価値を提供し続けるのが、我々ベンチャー企業の「本分」であると考えるからです。大手ではなしえない意思決定と事業運営のスピード感は、ベンチャー企業の醍醐味にほかなりません。

 それに加えて、メンバーたちに「成長への新たなチャンスを与えたい」という想いもありました。コールセンター事業が拡大していくにつれ、そこで成長を遂げていくメンバーが増えていく一方で、社内で活躍できるメンバーのタイプがだんだんと絞られていくような感覚があったのも事実でした。人それぞれがもつ個性や、「向き」「不向き」といった違いを吸収しながら、みんなが成長していく。それが本来、当社が目指す姿であり、そのためには新しい舞台が必要だと考えたのです。

新事業創出という戦略は「現時点での答え」に過ぎない

―幅広く社内の人材に成長の機会を与えたいと。

 その通りです。本来、当社は「ヒトがヒトを育む企業づくり」を企業理念に掲げて発足した会社です。数字で人を評価する風潮があるなか、「人の成長にコミットする」ことを第一に掲げる会社があってもいいじゃないか。そんな想いが、創業の原点になっています。その創業時の「理想」に立ち返るための十分な人や事業といった基盤が、ようやくできたというのが正直なところです。経験をもった若手中途人材も加わり、現在従業員数は約300名へと増えました。昨年には念願の新卒採用も開始し、今年新卒1期生が入社。新しい時代の常識をもって、会社に刺激をもたらしてくれています。今後、コンシューマーサービスの中心的な購買層を形成していく、こうした若手人材の個性や発想を取り込みながら、一緒に成長していける会社でありたいです。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 新事業に従事するメンバーの「目の輝き」や活気づく社内の雰囲気を見ながら思うのは、今後も会社の柱となりうる新事業を1年に1つずつでも立ち上げていきたいということです。事業同士が切磋琢磨しながら、そこで個々のメンバーが新しい挑戦や責任を担うことは、人を何よりも成長させると感じています。

 ただし、決して新事業の数を目標にするつもりはありません。大事にしたいのは、あくまで「人を大切にする」経営。新事業創出という戦略は、その理想を実現するための「現時点での答え」に過ぎません。この軸がぶれさえしなければ、あらゆることを変えていいとさえ思っています。もしかしたら、1年後にはまったく違う事業戦略の話をしている可能性もあります。ただし、思考の軸には、つねに「人」を置くことだけは変えるつもりはありません。
主力のテレマーケティング事業を分社化し、新事業の創出に力を入れようとしているone net。今後、グループ体制へと移行するなか、事業の責任を担うリーダーは、グループの成長にとってこれまで以上に重要な役割を担うことになる。ここでは、そんな2名の事業責任者を取材。今後の成長ビジョンなどを聞いた。

「成長したい」という想いは、誰にでもあるもの

―業務内容を教えてください。

 4月に設立された新会社「one net INSIDE SALES株式会社」において、one netグループの主力事業であるコールセンター事業を統括しています。これまでもone net本体において、担当役員としてコールセンター事業の立ち上げから従事してきたので、業務自体に変わりはありません。しかし、新たなグループ戦略のもと、経営基盤を支える役割の重要性はいままで以上に強く認識しています。また、もっとも多くのメンバーがかかわる事業を統括する立場として、人材育成も私の重要なミッションだと自認しています。

―人材育成については、どのような方針をとっているのですか。

 「やりたいことがある人は歓迎、やりたいことが無い人は大歓迎」というのが、会社のスタンスです。one netでも昨年から新卒採用を開始していますが、かつての私がそうであったように、なかには「明確な夢や目標がない」と語っていたメンバーもいます。それでも、入社したからには「がんばりたい」「成長したい」という想いは誰もがもつものなんです。one netは、その想いを最大限に伸ばし、それぞれの夢や目標を一緒に探していくことが得意な会社だと思っています。ですから、私はone netを紹介する際によく、「若い力をとことん信じる会社」だと表現しているんです。新たなグループ体制のもとで、若手メンバーには活躍の場がさらに広がっています。事業の安定的な成長を通じて、こうした成長環境を数多く提供していきたいと考えています。

「ヒトの成長」に対しても、日本一でありたい

―事業運営にあたり、今後の目標を聞かせてください。

 新会社を「日本一のコールセンター」に育てるのが目標です。これは以前から口にしている目標であり、かつては漠然と「売上高が日本一」だとか「知名度が日本一」、「『コールセンター 日本一』と検索すると最初にone netが出てくる」といったイメージで語っていました。しかし、最近ではそこに、「『ヒトの成長』に対して日本一でありたい」という想いが加わっています。新たな組織を率いる立場になったことで、「ヒトを大切にする」という事業方針に対する想いは、これまで以上に強くなったかもしれませんね。今後は、one netが大切にしてきた「ヒトがヒトを育む会社づくり」という企業理念を、one net本体以上に体現する存在でありたいと思っています。

「スキルアップしている」毎日のように感じる手ごたえ

―現在、どのような仕事に従事しているのでしょう。

 当社が今後新たに手がける「引越しワンストップサービス」という事業の立ち上げ準備に従事しています。引越し業者さんと提携し、引越しにまつわる行政手続きやライフラインの契約などの各種手続きを一括して請け負うサービスを開発しており、現在は来年春をめどにサービスの窓口となるポータルサイトの立ち上げを目指しています。今後、新事業の創出に力を入れていくone netにとっては、その方針を確かなものにするうえでとても重要な事業です。じつは、私にはITサービスに従事した経験がありません。そのためわからないことや事業のスピード感に戸惑うことも多いです。しかし、会社からは寛大にチャレンジの機会をもらっており、感謝とともに「自分のスキルアップにつながっている」という手ごたえを毎日のように感じています。

―責任ある立場ですが、どのような経緯で抜擢されたのですか。

 私が直接社長に対して、立候補の意思を伝えたのです。というのも、もともと私が昨年、one netに転職した動機が、「ビジネスで新しいチャレンジがしたい」というものでしたから。前職で私は、大手人材会社に所属し、企業の採用支援を手がけていました。しかし、コロナ禍に突入して以降、自分の将来に不安を覚え、「これからは個人として本質的なビジネススキルを身につけなければならない」と痛切に感じるようになりました。新事業創出に舵を切ろうとしていたone netは、まさに自分が求めていた環境であり、実際に入社して、望んでいた通りの機会をいただけたわけです。

人は環境次第で、いくらでも成長できる

―今後の目標はありますか。

 社内には、私のほかにもきっと新しいチャレンジをしたいと考えているメンバーはいるはずです。その人たちのためにも、ぜひこの事業を軌道に乗せ、one netにいままでにない職種やポストをつくっていきたいです。

 私は、ありがたいことに今回、新しいチャレンジの機会を与えられたことで、「人は環境次第で、いくらでも成長できる」と強く実感するようになりました。私がそのことに気づいたのは、転職を決意してone netに入社してから。30歳を過ぎてからでしたが、若い方々には、年齢やキャリアに関係なくチャレンジの機会があるone netで、そんなチャンスを早く手にしてほしいですね。
PROFILE プロフィール
星 祐貴(ほし ゆうき)プロフィール
1987年、北海道生まれ。大学在学中からコールセンターでのアルバイトを経験。2012年、北海道教育大学大学院教育学研究科修了後、情報通信会社に入社。2016年に独立し、株式会社one netを設立。代表取締役社長に就任。
企業情報
設立 2016年2月
資本金 1,000万円
売上高 30億円(2022年10月期見込み)
従業員数 283名(2021年8月現在)
事業内容 テレマーケティング事業、アライアンス事業、Webマーケティング事業、コンテンツサービス事業、パートナー事業、セールスプロモーション事業、BPO事業
URL https://one-net.jp/
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