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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

サイクループ株式会社  代表取締役 綿谷 泰宏

急成長中のサブスク提供企業による業界への挑戦

電動アシスト自転車の利便性を、日本中の人々に届けたい

サイクループ株式会社  代表取締役 綿谷 泰宏

近年、急速に知名度が高まった、サブスクリプション(以下、サブスク)。いま、電動アシスト自転車のサブスクサービスを提供し、大きな注目を集めているのが、サイクループだ。わずか2年間でサービス提供エリアを関西から首都圏へと広げ、業容を急速に拡大させている。しかし、そのサービスについて同社代表の綿谷氏は「我々のビジョンを実現するための一手段にすぎない」と語る。そのビジョンとはどのようなものか。同氏に詳しく聞いた。
※下記はベンチャー通信88号(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

偶然にも知った、中古車体への強いニーズ

―事業内容を教えてください。

 電動アシスト自転車を月1,990円からの定額で貸し出す、『NORUDE(ノルーデ)』というサービスを提供しています。このサービスは2020年に関西で個人向けに提供を始めました。その翌年には首都圏にも提供エリアを広げたほか、法人向けサービスを展開するなど、スピーディに事業拡大を進めています。電動アシスト自転車には約30年の歴史がありますが、その市場はこれまで新車販売が主でした。そうしたなか、サブスクというかたちで貸し出す事業を始めたのは、当社が初めてだと自負しています。

―電動アシスト自転車のサブスクに着目したのはなぜでしょう。

 当初からサブスクの発想にいたったわけではないのですが、かつて中古医療機器の販売を行っていたことが電動アシスト自転車に着目するきっかけとなりました。売り手である事業者からは時折、機器と一緒に電動アシスト自転車の買い取りを依頼されることがありました。おそらく、事業所移転などの際に自転車もついでに売却したかったのでしょう。その後、我々がそれらを再販するなかで気づいたのは、電動アシスト自転車の引き合いが大変強いことでした。利用者に話を聞いてみると、幼い子どもの送り迎えや通勤などに便利だが、新車価格は約10万円からで決して安くはないと。しかも、「子どもが成長するまで」「転勤中の1年間」と、利用期間が短い場合はなおさら購入のハードルが上がってしまうようでした。そうした背景から、手が届きやすい中古品のニーズが強かったのです。

 そこで我々はさっそく、中古電動アシスト自転車の販売事業を始めました。

―事業の手応えはどうだったのですか。

 予想通り、中古車は飛ぶように売れました。10台ほどを店頭に並べ、その日の朝にホームページで情報を発信すると、昼にはすべて売り切れてしまうのです。いざ本格的にビジネスに着手して、そのニーズの強さを改めて実感したわけです。

 しかし同時に、中古の電動アシスト自転車は、需要に対して供給が圧倒的に少ない実態もわかってきました。その背景には、「使わなくなった自転車を売却する行為が一般的ではない」という事情がありました。そこで、中古の電動アシスト自転車を確保するためにはどうすればよいのかと考えた結果、決断したのが、我々が自ら「中古車をつくる」ことだったのです。新車で調達した電動アシスト自転車を定額で貸し出し、原価回収したうえで「中古車」として販売していこうと。そうして始めたのが、いま提供しているサブスクサービスなのです。

電動アシスト自転車産業に、中古車市場をつくってみせる

―サブスクサービスの提供そのものを目指していたわけではないと。

 はい。我々が目指すのはあくまでも、「中古の電動アシスト自転車が流通する市場をつくること」なのです。その市場において、人々は電動アシスト自転車を手頃な価格で購入できる。不要になった人は、すぐに売却できる。使わなくなった自転車を下取りしてもらうという流れができれば、新車販売市場の活性化にもつながります。そんな、住宅や自動車、宝飾品などの分野では当たり前に存在する中古市場を確立させたいのです。そうした市場をつくるには、売り手と買い手の間に立って自転車を整備し、次の利用者が安全に乗れるようにするサービスも必要になるでしょう。我々は将来的には、そうした「CtoBtoC」モデルの事業も展開していく考えです。言わば「電動アシスト自転車版の『カーセンサー』」として、中古市場をつくっていきたいのです。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 電動アシスト自転車を必要とする人に、「借りること」「中古車を購入すること」を当たり前の選択肢として提供していきます。従来型の自転車も歴史を遡ると、江戸時代に舶来品として国内に伝わってから庶民に普及するまでには、数十年もの時間がかかったそうです。我々はいま、その日本の自転車史に新たな1ページを刻むべく、誰もが電動アシスト自転車で気軽に移動できるための選択肢をつくり、人々のQOLを大きく底上げしていきたいと考えているのです。
 当社は2022年9月にサイクループと業務・資本提携を交わし、会社への出資と事業への投資を行っています。具体的には、事業で使用する電動アシスト自転車を当社が購入・所有することで、事業拡大に伴い膨らむサイクループの投資負担を軽減しています。

 同社に将来性を感じるのは、電動アシスト自転車という、ニーズの大きな商材に着目した点はもちろんのこと、自転車を安全に使ってもらうための体制づくりに力を入れている点です。同社では、サービスのローンチ前から、自転車の整備スタッフを育成していたと聞きます。そこからは、ただ安価に自転車を貸し出すだけでなく、安全安心な中古電動アシスト自転車が流通する市場をつくるという、綿谷代表の強い意気込みを感じます。また、社員のみなさんが明るく楽しそうに自転車に触れながら事業を支えている様子も非常に印象的で、私には「サイクループはきっと大きく成長するだろう」との強い予感があります。今後は、事業への継続的な投資に加えて、当社が持つさまざまな企業とのネットワークも活かし、サイクループの事業成長を支援していきたいですね。
日本アジア投資株式会社 企業情報
設立 1981年7月
資本金 54億2,600万円
営業収益 32億400万円(連結:2022年3月期)
従業員数 40名(連結:2022年3月31日現在)
事業内容 投資業務(プロジェクト投資・プライベートエクイティ投資)など
URL https://www.jaic-vc.co.jp/
 サブスク事業支援を手がける当社では、サイクループへの出資に加え、サブスクシステムの提供を行うことで、『NORUDE』事業のさらなる効率化や成長をサポートしています。私は「一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会」の代表理事を務め、数多くのサブスクビジネスを見ていますが、サイクループの事業は「世の中になくてはならないサービス」と言える点で非常に成長性が高いと感じています。電動アシスト自転車の利用者には、幼いお子さんを持つ親御さんが多いと思います。そうした人たちは若く、経済的にまだ余裕がないこともあるため、1ヵ月2,000円程度で電動アシスト自転車を借りられるこのサービスはとても画期的と言えるでしょう。

 一方で、車体の整備や傷害保険の付帯、車体の運送など、サービス運用にかかる負担が大きな事業という印象もあります。そのため、綿谷代表はかねてから「サービス品質を維持するため、お客さまを一気に増やすことはできない」と話していました。そこで当社では、システムの提供を通じ、サイクループが思い切りアクセルを踏んで事業を展開できるよう支援していく方針です。
テモナ株式会社 企業情報
設立 2008年10月
資本金 3億8,567万円
売上高 22億5,300万円(2022年9月期)
従業員数 120名(2022年12月31日現在)
事業内容 サブスクリプションに関わる各種支援事業
URL https://temona.co.jp/
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