INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
波乱万丈の人生を歩んだ連続起業家が挑む「再びの創業」
インターネット革命以来の新潮流で、未だ成し得ぬ「世界標準」をつかむ
株式会社BLOCKSMITH&Co. 代表取締役社長 CEO 真田 哲弥
Sponsored 株式会社BLOCKSMITH&Co.
2022年4月、ソーシャルゲーム大手KLabは、これからのテクノロジーの新潮流と目されるWeb3やブロックチェーンの関連事業への参入を表明し、子会社BLOCKSMITH&Co.を設立した。同社の代表取締役社長 CEOを務めるのは、KLabの創業者であり、現取締役会長を務める真田哲弥氏である。過去に2社をIPOに導いたシリアルアントレプレナー(連続起業家)としても知られる同氏が今回、自ら指揮を執り、新たな挑戦に踏み出した格好だ。一体、その原動力とはなんだったのか。また、この先に描く成長ビジョンとはどのようなものか。同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信89号(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
「これは必ず来る」既視感とともに働いた直感
―新会社BLOCKSMITH&Co.を設立した経緯を聞かせてください。
じつは、2019年にKLabの社長を降りて以来、意識的にKLabの経営に対する関与を弱めてきたなかで、なにか不完全燃焼のような日々が続いていたんです。事業家として、「これに没頭したい」というテーマが見つからなかったのです。そんななか、2021年に読んだ1本のある外信記事が、ブロックチェーンの可能性に気づくきっかけになりました。『NBA Top Shot』というブロックチェーンゲームがアメリカで大ヒットしているという記事でした。もちろん、2017年の仮想通貨ブームなどでブロックチェーンの存在は以前から把握していましたが、それまで私は否定的な立場でした。構造的な問題があり、持続的な成長は難しいマーケットだとみていたのです。
しかし今回は、その後のアジアにおける『Axie Infinity』というブロックチェーンゲームの大ヒットも相まって、「これは必ず来る」と直感が働きました。しかも、私の中ではある既視感もありました。それは、古くは1988年にアメリカで『900番サービス』を知り、その後の日本での『ダイヤルQ2』ブームの到来を直感した時や、1995年にインターネットに出合って抱いた「世の中が変わる」という直感、さらにはその後、アメリカで見たソーシャルゲームブームの日本上陸を確信した時の感覚と、まったく同じものでした。
ただし、当初は自分が事業の最前線に立つつもりはなかったんです。
しかし今回は、その後のアジアにおける『Axie Infinity』というブロックチェーンゲームの大ヒットも相まって、「これは必ず来る」と直感が働きました。しかも、私の中ではある既視感もありました。それは、古くは1988年にアメリカで『900番サービス』を知り、その後の日本での『ダイヤルQ2』ブームの到来を直感した時や、1995年にインターネットに出合って抱いた「世の中が変わる」という直感、さらにはその後、アメリカで見たソーシャルゲームブームの日本上陸を確信した時の感覚と、まったく同じものでした。
ただし、当初は自分が事業の最前線に立つつもりはなかったんです。
―それではなぜ、自ら会社を立ち上げる決断をしたのでしょう。
過去の成功事例を研究する中で、私がブロックチェーンゲームに感じたある種の「危うさ」を共有できる人がいなかったことが理由です。「人に任せていたら、うまくいかない」と思ったのです。というのも、トークン(暗号資産)を使ったブロックチェーンゲームの現在の仕組みでは、新規ユーザーが増加し続けなければ持続的に成長できない、といった構造的な問題があるのです。同時に、これを永続性のある仕組みにつくり変えていければ、世の中の発展につながる画期的な技術であることは間違いないという確信もありました。
価値のやりとりが、Web上だけで完結する世界
―ブロックチェーンの台頭は将来、どのような意味を持つと見通しているのですか。
私はブロックチェーンを「インターネット革命以来の新潮流」と位置づけており、ブロックチェーンを技術基盤とするトークンをメタバース上で自律分散的に流通させるようなWeb3の世界観は、世の中のあり方を大きく変えると見ています。それは単に、現実の通貨が仮想通貨に変わる、送金の仕組みが銀行振込ではなくなるといったことではありません。
インターネットの誕生以来、人々は現実世界とは別のもう1つの世界、つまりWeb上に別の人格を持ち、そこで人生の一部を送り、人間関係を構築してきました。そして、モバイル機器の登場、SNSの隆盛を経て、人々がそこで過ごす時間はどんどん長くなっているわけですから、そうなると、現実世界の経済圏とは別のパラレルな経済圏がWeb上に形成され、大きくなっていくことは必然的な流れと言えます。Web3は、トークンといった経済価値を流通させるだけではなく、価値を消費する場にも、さらには価値を稼ぎ出す場にもなっていき、価値のやりとりがWeb上だけで完結する世界が間もなく到来するでしょう。
インターネットの誕生以来、人々は現実世界とは別のもう1つの世界、つまりWeb上に別の人格を持ち、そこで人生の一部を送り、人間関係を構築してきました。そして、モバイル機器の登場、SNSの隆盛を経て、人々がそこで過ごす時間はどんどん長くなっているわけですから、そうなると、現実世界の経済圏とは別のパラレルな経済圏がWeb上に形成され、大きくなっていくことは必然的な流れと言えます。Web3は、トークンといった経済価値を流通させるだけではなく、価値を消費する場にも、さらには価値を稼ぎ出す場にもなっていき、価値のやりとりがWeb上だけで完結する世界が間もなく到来するでしょう。
―その、もう1つの経済圏を支える基本技術がブロックチェーンなのですね。
そのとおりです。その技術がいかに画期的かと言えば、たとえば、Amazonや楽天が駅前のリアル店舗をリプレースしていったように、Web2.0はあくまでリアルの世界の一部機能、この場合は財の購買行為を代替していたに過ぎません。それに対して、Web3は現実世界とは別のパラレルな、しかもそこで完結しうる世界をつくる技術であり、Web2.0の延長線上にありながらも大きな飛躍があると認識しています。
そして、もうひとつ重要なのは、これが不可逆的な流れだということです。パラレルな世界をつくるという行為は人間のある種の本能であり、インターネットの誕生以前から人類は経験しているのですから。
そして、もうひとつ重要なのは、これが不可逆的な流れだということです。パラレルな世界をつくるという行為は人間のある種の本能であり、インターネットの誕生以前から人類は経験しているのですから。
経済や社会、政治が生み出す、不可逆的な流れ
―どういうことでしょう。
たとえば、プレイヤーが没入するテレビゲームの世界は、まさにパラレルワールドにほかなりません。現実世界の不条理さや不合理さ、やりきれない気持ちを抱いた時、人々が理想を求めることもできるのがゲームの世界であり、Webの世界なのです。実際、すでに多くの若者にとってもっとも長い時間をともに過ごす身近な存在は、両親や友だちなどではなく、スマートフォンですよね。これは、経済や社会、政治といった状況が生み出している不可逆的な流れだということです。今般のコロナ禍がこの変化をさらに加速させたことは間違いないですが、単なるテクノロジーの進展がもたらす一過性のブームではないのです。
もっとも、「安近短」を追求する方向にテクノロジーを進化させてきたのが人類の歴史ですから、現在のような大きくて重いゴーグルを装着しなければならないようなメタバースの時代は決して来ることはないと思っているのですが。
もっとも、「安近短」を追求する方向にテクノロジーを進化させてきたのが人類の歴史ですから、現在のような大きくて重いゴーグルを装着しなければならないようなメタバースの時代は決して来ることはないと思っているのですが。
唯一やり残したことは「グローバルでの成功」
―果たして、過去に何度もブレイクの到来を見抜いた真田さんの「直感」の正体はなんなのでしょう。
自ら意識したことは無いのですが、敢えて言えば2つの要素があると思います。1つは、周囲にいる尖った感覚を持つ人々の意見を、自分の感性の正しさを測る物差しにすることを心がけています。自分の感覚だけで突っ走ることはしないようにしていますが、それは多数派の見解を確認するのとは違います。あくまでも物差しにできるのは、同じ感覚を共有できる尖った意見の持ち主でなければならない。
もう1つは、直感の伏線となるべき、知的好奇心の存在です。今回のブロックチェーンゲームの際も、過去の『ダイヤルQ2』の際も、1つの記事に直感が働いたのですが、その記事が偶然目に留まった裏には新たなシーズを探し求め、テクノロジーの潮流を研究し、調べ尽くしていた行動がありました。物理学者のアイザック・ニュートンも、決して木から落ちる林檎を見て、急に万有引力を思いついたはずはなく、誰よりも深く物理学を研究し続けた伏線があったに違いありません。知的好奇心を持って調べ尽くす。その行動こそが、偶然や直感を呼び寄せる秘訣なのかもしれませんね。
もう1つは、直感の伏線となるべき、知的好奇心の存在です。今回のブロックチェーンゲームの際も、過去の『ダイヤルQ2』の際も、1つの記事に直感が働いたのですが、その記事が偶然目に留まった裏には新たなシーズを探し求め、テクノロジーの潮流を研究し、調べ尽くしていた行動がありました。物理学者のアイザック・ニュートンも、決して木から落ちる林檎を見て、急に万有引力を思いついたはずはなく、誰よりも深く物理学を研究し続けた伏線があったに違いありません。知的好奇心を持って調べ尽くす。その行動こそが、偶然や直感を呼び寄せる秘訣なのかもしれませんね。
―BLOCKSMITH&Co.における今後の成長ビジョンを聞かせてください。
世の中の誰もが、Web3の世界でもう一人の自分を持てるような、社会をつくっていくこと。そこで必要となる経済的な仕組みを提供していくことが使命だと思っています。それと、個人的にはもう1つ、起業家人生の中で唯一やり残したことを成し遂げたいという「野望」もあるんです。それは、日本のIT企業がまだどこも成し得ていない「グローバルでの成功」です。チーム日本のIT産業はWeb2.0では完敗を喫し、それが日本の「失われた30年」をもたらしたと思っています。その教訓を活かし、Web3では法規制などの環境整備で日本が世界をリードしている現状があります。さらに、Web3をけん引するゲームやアニメといったコンテンツは、昭和の時代から脈々と築き上げてきた日本がもっとも得意とする産業です。戦後、先人たちが製造業で築き上げた日本の栄光を再び取り戻す好機が、まさに今です。ブロックチェーンやWeb3には、それほどのポテンシャルがあると私は感じているんです。
PROFILE
プロフィール
真田 哲弥(さなだ てつや)プロフィール
1964年、大阪府生まれ。大学在学中の19歳で起業。その後、24歳で2度目の起業で短期の急成長を遂げるも、事実上の倒産という成功と挫折を経験。1997年に株式会社アクセス(現:株式会社ACCESS)に入社。1998年に堀主知ロバート氏らとともに株式会社サイバードを設立。2000年、ジャスダック(当時)へ上場。同年に株式会社ケイ・ラボラトリー(現:KLab株式会社)を設立し、代表取締役社長CEOに就任。モバイルゲーム分野への事業転換に成功し、2011年に東証マザーズ(当時)へ上場。翌年、東証1部(当時)へ市場変更。現在は、KLab株式会社の取締役会長の傍ら、株式会社BLOCKSMITH&Co.の代表取締役社長 CEOも務める。
企業情報
設立 | 2022年4月 |
---|---|
資本金 | 1,499万9,950円 |
従業員数 | 28名(2023年8月現在) |
事業内容 | ブロックチェーン技術または暗号資産、NFTを活用したプロダクトの開発および配信 |
URL | https://www.blocksmithand.co.jp/ |
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