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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社F-area 代表取締役 迫田 清龍

登録者数約80万人のYouTubeチャンネルを運営するベンチャー企業トップの想い

食や伝統品を動画で世界に発信し、老舗企業の販路開拓を支援する

株式会社F-area 代表取締役 迫田 清龍

YouTubeチャンネルの運営を通じて、「メイド・イン・ジャパン」の食文化や伝統工芸品を世界に紹介し、日本の老舗企業のブランディングを行っているF-area。同社代表の迫田氏は、「動画をフックにして、地域の飲食店やメーカーが永続的な経営ができるよう、海外への販路開拓支援を行っていきたい」と意気込む。今後は輸出支援も強化していきたいという同氏は、なぜこうした事業を行おうと考えたのだろうか。同氏に、事業の詳細を含めて聞いた。

視聴者のコメントを重視し、動画の見せ方にこだわる

―事業内容を教えてください。

 登録者数約80万人、毎月約500万人が視聴するYouTubeチャンネル『食(しょく)えもん』の運営を行っています。こちらは、日本ならではの飲食店や伝統工芸品などを世界に向けて紹介するチャンネルで、ECサイトと連動しており、視聴者が気に入ったものを購入できる仕組みになっています。視聴者の割合は、海外と国内で6:4となっており、海外でも特に北米の視聴者が多いですね。実績で言いますと、たとえば毎月10袋しか売れていなかったふりかけがYouTubeにアップして商品販売をスタートしたところ、一週間で約800袋が売れたり、包丁の職人を紹介した際は、初めてECサイトを活用したにもかかわらず、その包丁が欠品状態になったりしました。

―事業を行っていくうえでのこだわりはありますか。

 動画の見せ方にこだわっています。たとえば屋台の紹介であれば、調理や接客はもちろん、屋台を引いているところからセッティング、そして屋台をたたむところまで。包丁の紹介であれば、火づくりから叩きあげて成形し、研磨するといった工程を1から10まで撮影します。加えて、その合間に店主や職人の想いやこだわりをドキュメンタリータッチで伝えるのです。そうすることで、視聴者の商品に対する理解度の向上や、「この商品を応援したい」という気持ちの醸成を促すのです。

 また、視聴者から送られてくるコメントを動画に活かすように心がけています。たとえば、海外の視聴者は清掃シーンに大きな関心を示します。「すごい、日本人はこんなに毎日清掃しているのか。ウチの国では考えられない」という具合にコメントが投稿されます。つまり、清掃のようす自体が商品やサービスのブランディングになるんですね。そこで、「必ず一定時間、清掃シーンを入れよう」と、次の動画づくりの参考にしています。そうした細かいこだわりが、視聴者の獲得につながっているのだと思います。

 さらに、動画づくりの体制面でこだわっていることがあります。

―それはなんでしょう。

 海外人材の採用です。各動画は自動翻訳ツールを使い、約30ヵ国語のテロップに分けて配信しているのですが、世界でもっとも話されている英語に関しては、ネイティブな外国人スタッフが正しい英文になるよう校正をしています。また、マーケティングの観点でも海外人材は必須です。たとえば、ふりかけは白米にかけるのが一般的ですが、ヨーロッパなどではシェフがパスタの最後の仕上げに使用しているそうなんです。海外に商品を売り込むうえで、そうした情報は重要で、それを外国人スタッフから直接得られるのも当社ならではの強みだと思います。

伝統的な商品やサービスを、今後も残していきたい

―なぜそうした一連の事業に取り組んでいるのですか。

 「100年先まで情緒ある風景を残すこと」という想いを実現するためです。もともと民泊事業をメインに起業したのですが、コロナ禍のためにいったんその事業は縮小することになりました。同時期に実家の鹿児島に帰った際、小さい頃から通っていた駄菓子屋さんがつぶれていて、それがすごく悲しかったんです。かつて、学生時代に海外留学したとき、外から見た「メイド・イン・ジャパン」ならではの伝統的な商品やサービスのすばらしさを改めて感じたものでした。しかし、それがコロナ禍だけでなく、人口減少などもあり、老舗企業を中心にどんどんつぶれている。その状況が、すごくもったいないと感じたのです。そのとき、「YouTubeで日本の食文化や伝統工芸品を海外に紹介し、それに付随する商品をECサイトで販売するスキームをつくれば、日本の老舗企業が海外に新たな販路を見い出せ、永続的な経営につなげることに貢献できるのでは」と考えたのです。

 YouTubeチャンネルを開設して4年になりますが、動画投稿数も600を超え、おかげさまで「観たことあるよ」という経営者の方々も増え、動画制作の提案もしやすくなっています。

輸出販売のサポート強化や、体験ツアーの企画を検討

―今後のビジョンを教えてください。

 『食えもん』の運営を通じたBtoC支援に加え、今後はBtoBの支援も強化していきます。具体的には、当社が海外に拠点をもつ商社とアライアンスを結び、特に日本国内の地方のメーカーを対象に、食品や伝統工芸品などを海外の卸会社やレストランなどに輸出販売するための支援を行っていきます。輸出の手続きから、海外向け営業資料の作成代行、海外での展示会出展などさまざまなサポートを行っていく予定です。

 また、ゆくゆくは海外の視聴者向けに国内旅行ツアーの企画なども行っていきたいと考えています。たとえば、動画で登場した飲食店やメーカーを我々が案内し、食事や伝統工芸品の手づくり体験を提供して、その地域にある空き家に民泊してもらうのです。「モノ」に加えて、そうした「コト」を提供することで、より海外の方々に国内の飲食店やメーカーのファンになってもらうことが狙いです。さらに、空き家の再利用により、それが情緒ある風景を残すことにもつながります。これらの取り組みを通じて、地域経済の底上げに貢献できればと考えているのです。「海外に販路を開拓して、持続的な経営を目指したい」という飲食店やメーカーの方々は、ぜひ一緒に日本のすばらしい商品やサービスを世界に発信していきましょう。
PROFILE プロフィール
迫田 清龍(さこだ せいりゅう)プロフィール
1993年、鹿児島県生まれ。2017年に久留米大学を卒業後、2018年に合同会社F-areaを設立。2020年に株式会社F-areaに組織変更し、代表取締役に就任する。
企業情報
設立 2018年5月
資本金 100万円
従業員数 7名
事業内容 YouTubeチャンネル『食(しょく)えもん』(英語名『Japanese food craftsman』)の運営、越境Eコマース事業、海外輸出支援事業、ホテル・民泊運営代行事業など
URL http://www.f-area.co.jp/
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