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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

KLab株式会社 代表取締役社長 CEO 真田 哲弥

徹底した合理化の先に攻めの一手を打つ、不屈の連続起業家の決意

経営の原則に立ち返って窮地を脱し、グローバルの舞台で再び勝負を挑む

KLab株式会社 代表取締役社長 CEO 真田 哲弥

インターネットの黎明期から新潮流に身を投じてきたシリアルアントレプレナー、真田哲弥氏。2025年3月、代表を退任してから6年ぶりにKLabの代表取締役社長 CEOに復帰した。復帰当初の同社は4期連続の赤字に沈み、手元資金の確保が急務となる厳しい経営環境にあったが、真田氏は独自の戦略によって上場維持基準への適合を見通すまでに再建を進めた。窮地を脱し、再成長へのスタートラインに立ったいま、いかなる舵取りを行っていくのか。同氏に詳しく聞いた。
※下記はベンチャー通信94号(2026年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「年内に資金が尽きかねない」危機的状況から再建を主導

―昨年3月の社長への復帰後、どのような使命感を持ってKLabの立て直しに取り組んできましたか。

 当時、強く感じたのは、会社が相当に傷んでいるということでした。4期連続の赤字が続き、私が引き継いだ時点で5期連続の赤字がほぼ確実視されるような状況だったからです。それまでは取締役会長という立場ではありましたが、後継がやりづらくならないよう、あえて経営の数字や実務からは距離を置いていました。しかし、いざ中身を精査してみると、キャッシュの減少スピードが凄まじく、このままのペースでいけば年内には資金が尽きかねないという、東証プライム上場企業としてはあるまじき危機的な事態に直面していることがわかりました。正直なところ、引き受けた直後は「大変なことを引き受けてしまったな」という強い不安に押しつぶされそうになった時期もありました。ですが、私がやらなければこの会社は終わってしまうという切迫した使命感が、私を突き動かしました。

―そうした状況のなか、どういった経営判断で会社の再起を図ってきたのでしょう。

 経営に行き詰まった際にとるべき手段というのは、じつはどこの業界でもそれほど多くはありません。まずはコストを削減し、次に資金を調達し、そのうえで新しい売上をつくる。この順番こそが経営の鉄則です。コスト削減においては、多くの会社で大部分を占めるのが広告費、人件費、オフィスの3つです。切りやすい広告費から手をつけると売上まで下がってしまうため、私は痛みを伴うものの、人員の適正化とオフィスの縮小を優先して断行しました。そしてもっとも苦慮したのが資金調達です。経営が苦しい上場企業に対し、市場価格からディスカウントして発行する「MSワラント」という調達手法の提案が何件も舞い込みました。これは手っ取り早く現金を得られる誘惑がありますが、際限のない株価下落を招き、既存の株主を裏切るだけでなく上場廃止のリスクも高めます。私はこれを「会社を終わらせる最後の一手」だと考え、すべてお断りしました。その代わりに、保有資産のうち、売れるものはすべて売って現金をつくりながら、長期的な視点で支えてくれる投資家を自らの足で探し歩きました。その結果、UAEの投資会社などから51億円という大規模な資金調達を受けることができ、上場維持基準への適合についても見通しが立ちました。

AIの普及による変化は、ネット黎明期も凌駕しうる

―資金調達の舞台となったUAEは、もともと注目していた地域だったのですか。

 最初からUAEを狙っていたわけではありません。日本国内で機関投資家を回ってもMSワラントの提案ばかりでらちがあかず、夏頃には「金融機関経由では無理だ」と判断し、自分の友人知人を手当たり次第に頼って紹介をつないでもらう泥臭い活動に切り替えました。そのなかで「アラブなら可能性があるかもしれない」という話を耳にし、すぐ現地へ飛びました。昨年だけで5回は足を運び、ときには現地0泊の強行軍もありました。そこで実感したのは、日本のIP(知的財産)が持つ偉大さです。アラブでは『キャプテン翼』が『キャプテン・マジッド』という名前で認知されていて、いまの大人世代は全員が知っていると言っても過言ではないほどの人気を博しています。実績資料を見せた瞬間に「おお、マジッドじゃないか」と距離が縮まりました。彼らは親日家で、これまで日本の上場企業がIRで訪れることがほとんどなかったため、わざわざ社長が足を運んだこと自体、非常に感謝されました。この経験から、日本発のIPは中長期的な成長を支える強力な柱になると再確認しました。このIP事業は引き続き、今後の売上を創出していくうえでの、「3つの主軸」の1つとなります。

―残りの「2つの主軸」はなんですか。

 2つ目はブロックチェーンです。私は子会社のBLOCKSMITH&Co.を通じて取り組んできましたが、ドバイなどではすでに暗号資産での不動産や車の売買が一般化しており、世界は確実にそちらへ向かっています。ビットコインとゴールドを組み合わせた運用など、世界標準の財務戦略として取り組んでいく考えです。そして、3つ目の主軸として今後もっとも注力し、最大の柱に据えるのがAIです。私は1998年にサイバードを創業し、インターネットやモバイルの黎明期を最前線で見てきましたが、いまは当時の変化をはるかに凌駕するような凄まじいことが起こる予感があります。この黎明期から開花期へと向かうタイミングでどれだけ事業をつくれるかが、今後5~10年の成否を分けるでしょう。

―昨年はAI関連の事業を相次いで発表しました。

 はい。ゲームで培った企画・運営力とAIを掛け合わせた「AI音楽専門レーベル」や、AIを活用してファンとともにアイドルをつくることをコンセプトとしたAIアイドルプロジェクト『ゆめかいろプロダクション』、企業向けのAIクリエイティブ制作事業などを発表しました。ただ、これらはあくまで氷山の一角に過ぎません。水面下では昨年の夏前から着々と研究開発を進めてきました。今年はまだお話しできない新しいAI関連事業を、いくつも発表していくことになるはずです。現場にもがっつり入り、自らAIを使ってモックやサンプルを作成しながら、スピード感を持ってビジネスモデルを練り上げています。

―多くの企業がAIに注目している現状を、どのように見ていますか。

 AIを使った業務の効率化やDXといった領域は、すでにレッドオーシャン化しています。かつてのSaaS企業が看板をAIに付け替えたようなケースも多く、非常に競争が激しい。また、汎用的な領域はGoogleやOpenAIが進化するだけで、スタートアップがつくってきたツールが不要になってしまうリスクもあります。だからこそ、私たちはそうならない領域を慎重に見極めなければなりません。

高い志を持つ者同士で、大きな挑戦を続けてほしい

―新しく事業を立ち上げるうえで大事にしていることはなんですか。

 誰もやっていない、または「そんなものは無理だ」と他人が避ける領域をあえて狙うことです。誰もが「面白い」と思う場所は大企業が参入し、すぐに過当競争に陥ります。一方で、誰もやらないことには必ず「やりたくない」「やるべきではない」と思わせるネガティブな理由が隠れています。しかし、その理由がある限り、競合は今後も参入してきません。ですから、まずはその「ダメな理由」を特定し、それをどう解決するかを考え抜くことが、結果として独占的な市場を築く近道になるのです。サイバードを創業した際、最初に取り組んだのが「サーフィンの波情報」や「宝塚歌劇の情報」でした。これらはビジネスとして成立するのかと疑問視される領域でしたが、少人数でもお金を払う層へ確実にリーチできるチャネルを確保することで、競合が来ないニッチな場所を制したのです。また、現在は、AIを用いることでこうした仮説を低コストかつ超高速で検証できるようにもなりました。議論を重ねるよりも、まずはサンプルをつくり、市場の反応を見る。このスピード感こそ、現代の事業開発における不可欠な要素だと考えています。

―最後に、ベンチャー企業の若い経営者にメッセージをお願いします。

 いまの日本は起業環境こそ整いましたが、どうしても事業が国内市場に特化し、規模が小粒にまとまってしまう傾向があります。日本という市場に安住するのではなく、最初からグローバルな視座を持ち、世界を舞台に勝負してほしいですね。そして、志の高い友人や知人を持つことも大切です。私自身、周囲で成功を収めている仲間の存在が「彼らにできるなら、自分にもできるはずだ」という健全な競争心を生み、厳しい局面での支えにもなりました。高い志を持つ者同士で刺激し合いながら、世界を熱狂させるような大きな挑戦を続けてください。
PROFILE プロフィール
真田 哲弥(さなだ てつや)プロフィール
1964年、大阪府生まれ。大学在学中の19歳で起業。その後、2度目の起業で短期の急成長を遂げるも、事実上の倒産という成功と挫折を経験。1997年に株式会社アクセス(現:株式会社ACCESS)に入社。1998年、株式会社サイバードを設立。2000年に株式会社ケイ・ラボラトリー(現:KLab株式会社)を設立し、代表取締役社長CEOに就任。2019年、取締役会長に就任。2022年、Web3関連事業を管轄する関連会社の株式会社BLOCKSMITH&Co.を設立し、代表取締役社長CEOに就任。2025年、KLab株式会社の代表取締役社長CEOに就任。
企業情報
設立 2000年8月
資本金 86億1,396万円 (2025年12月末現在)
売上高 68億5,627万円 (2025年12月期)
従業員数 294名 (2025年12月末現在)
事業内容 モバイルオンラインゲームの企画・開発・運用、GPUサーバーの調達・販売・運用・保守、総合AIエンタテインメント事業、AIクリエイティブ制作事業
URL https://www.klab.com/jp/
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