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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社エイチーム 代表取締役社長 林 高生

マザーズ上場から史上最速の233日で東証一部に昇格したITベンチャー

ニッポンの「チーム力×開発力」で名古屋から世界市場を席巻してみせる

株式会社エイチーム 代表取締役社長 林 高生

※下記はベンチャー通信53号(2013年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―そのころから、一気に成長路線へ進んだんですね。

林:いえ。思わぬ落とし穴が待っていました。社員の裏切りにあったんです。ある社員がゲームの重要なプログラムを盗み出し、起業準備をしている事実が発覚。別のゲームプログラムも盗んでいたことがわかり、解雇しました。創業から苦労した6年間を経て、「これからすばらしい会社がつくれる」「働く人が幸せになれる」と思っていた矢先の事件でした。この事件をきっかけに、現在の経営理念である「みんなで幸せになれる会社にすること」が生まれました。この経営理念に共感し、新しく入社してきたスタッフたちの活躍によって、100人体制へ急拡大しました。しかし、今度は企業成長のスピードに役員のマネジメントが追いつかなかった。彼らの意見がバラバラで、現場が機能不全になったんです。

―どうやって困難を乗り越えたのですか。

林:解決のヒントは、あるテレビ番組でした。人ごみの交差点で、ひとりがある方向に指をさしても誰もその方向を見ない。しかし、3人が指をさすと、つられて多くの通行人が見るようになる。いわゆる、同調行動の実験でした。これは反射的な行動ですが、人間の本質をついている。マネジメントに活かせると思いました。会社の方向性に対する想いを役員が同じくして、私と一枚岩になれば、現場の混乱を解決できると判断。経営陣の入れ替えを行い、私と経営方針を共有できる2名を新たな役員に選出しました。

―その後、2012年にリリースした『ダークサマナー』が世界的にヒットしました。なぜ、ユーザーから高い評価を得られたのですか。

林:海外市場を意識した作品だからでしょう。開発当初からカナダ人のスタッフをプランナーとしてチームにくわえ、欧米のユーザーが好むゲームテイストに。これまでにないチャレンジで、世界で約700万ダウンロードされる作品ができました。もともと、海外に進出したい想いはありました。スマホは世界統一のプラットフォーム。私たちのゲームを世界にアピールするチャンスですからね。

―グローバル市場において、日本のゲームメーカーの強みはなんでしょう。

林:ケータイでゲームをする文化が、世界に先がけて浸透していることでしょう。日本は2001年から、携帯電話でゲームアプリを提供。キャリアが代理徴収する課金制度をつくりました。その仕組みは、世界中の人がスマホでゲームをするようになっても変わっていない。ガラケーのゲームで培った日本発の仕組みを、スマホでも活用できるんです。たとえば、小さな画面でいかに遊びやすくつくれるか。そして、どうすれば長い期間で遊んでもらい、課金につながるかといったユーザー動向分析のノウハウが養われました。

―今後の事業戦略を教えてください。

林:世界市場に挑む方針は変わりません。いままでのターゲットは北米でしたが、東アジアや欧州にも進出したい。スマホ市場で、世界的に有名なゲームメーカーになることを目指します。ただ、開発は海外で行いません。現地採用をすると、彼らの価値観でつくってしまう。『ダークサマナー』に対する世界の評価で、当社の開発力が世界に通じるという自信がつきました。そのノウハウを活かしていくつもりです。

―ベンチャーへの就職や起業に関心のある学生にメッセージをお願いします。

林:最初に描いたビジネスモデルが、そのままうまくいくことはありません。でも、あきらめないでください。「やりとげる」という強い意思で、多角的にアプローチすればいいんです。私も高い目標を掲げましたが、強い想いがあったから達成できた。そこで挫折するなら、本当にやりたいことじゃないんです。頭だけで考えていたら、失敗します。強い心でビジネスに挑む。そんな信念を持った若い人が、たくさん現れてほしいですね。
PROFILE プロフィール
林 高生(はやし たかお)プロフィール
1971年、岐阜県生まれ。中学卒業後、新聞配達やビルの窓清掃など、20代前半までさまざまなアルバイトを行う。1994年、23歳でプログラマーとして独立。1997年、個人事業でソフトウェアの受託開発を開始し、2000年に有限会社エイチームを設立。2004年に株式会社に組織変更。2012年4月に東証マザーズ上場後、わずか233日で東証一部へ市場変更を行い、注目を集めた。
企業情報
設立 2000年2月
資本金 5億2,319万9,760円(2013年5月期)
売上高 63億7,900万円(2012年7月期)
従業員数 402名(アルバイトを含む)
事業内容 ゲーム・デジタルコンテンツの企画・開発・運営、日常生活に密着した比較サイトや情報サイトの企画・開発・運営など
URL http://www.a-tm.co.jp/
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