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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

BROTHER株式会社 代表取締役 藏脇 健太 

地方発のベンチャー企業が価値提供する「メタバース」「XR」「web3」の組み合わせとは

先端ITを複合的に活用し、地域課題の解決に新たな道筋を創る

BROTHER株式会社 代表取締役 藏脇 健太 

先端ITを活用して、地域の課題解決の支援を行っているBROTHER。このページでは、同社と伊佐市(鹿児島県)発の『13verse(イサバース)』プロジェクトに取り組んでいるDesign Space代表の脇黒丸氏と、BROTHER代表の藏脇氏との特別対談を企画。プロジェクトが始まった経緯や取り組みの詳細などを、2人に語ってもらった。

同じ想いをもつ仲間として、プロジェクトがスタート

―『13verse』プロジェクトが始まった経緯を教えてください。

脇黒丸:私が藏脇さんに、「先端ITを活用して『伊佐米』を生産する伊佐市の新規就農者を増やしたい」と依頼したのがきっかけです。当社は現在、伊佐市に拠点を置き、農業支援やeスポーツの振興、介護施設・保育園の運営などを通じて、地域課題を解決するサービスを提供しています。そのなかで、同市ではスマート農業を普及しようとしてもITが苦手な高齢者には難度が高いうえに、そもそも農業を継ぐ若手がいないという課題を抱えていました。そこで、eスポーツを通じて「東京ゲームショウ」に2年連続で参加し、首都圏の若者との関係人口をつくる取り組みを行ってきました。そのイベントで、「メタバース」や「web3」などのことを知り、「『メタバース』で農業体験を提供できないか」「さらには『web3』を活用して、メタバース内に農家がユーザーに直接『伊佐米』を販売できる仕組みがつくれないか」と考えたのです。地元に戻って周囲に相談をしたところ、藏脇さんとつながったのです。

藏脇:この話を脇黒丸さんから聞いたとき、「私以外に同じような想いをもっている人が近くにいたんだ」と感動しました。そこで、ほかの会社も巻き込んだプロジェクトが2024年1月からスタートしたのです。『13verse』という名前は、私が提案しました。伊佐とメタバースの語呂合わせで、漢字より数字のほうが印象に残りやすいと考えたのです。

地方からの発信でも、インパクトは与えられる

―その後、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょう。

藏脇:とりあえずは、同年9月に開催される「東京ゲームショウ2024」に仮想空間で農業体験ができるコンテンツを制作して出展することにしました。制作にあたっては、私が鹿児島市から車で2時間ほどかけて伊佐市に行き、農家の方々へのヒアリングを繰り返しました。多いときは、週2日で通っていましたね。何気ない会話から、たとえば「では、こういうアングルで農作業をしている画像を入れてほしい」という生産者ならではの意見が聞けたのはありがたかったです。最終的には、伊佐市の後援のもと、農業体験だけでなく、伊佐市の観光名所を、VRを使って仮想空間で巡れるコンテンツと、「UEFN(※)」を使ってオンラインゲーム『フォートナイト』上に伊佐市のまちを再現し、そこでバトルができるコンテンツも併せて出展しました。
※Unreal Editor For Fortniteの略で、『フォートナイト』上で動くゲームを作成できるツール

―反響はいかがでしたか。

脇黒丸:農業体験した若い人からは「使いやすくて面白いし、伊佐市の農業のことがよくわかった」という声が聞かれました。また、イベントに参加した域外のクリエイターからも「伊佐市はおもしろい取り組みをしている」と知ってもらうことができました。さらに、イベントを通じて『13verse』の「地域課題解決コンテンツ」のことを知った内閣府から「大阪・関西万博」に出展の招待を受けることにもつながったのです。

藏脇:ちなみに、イベント後に一般公開した「伊佐市版『フォートナイト』」を利用したユーザー数は20万人を超えました。実際に伊佐市へ20万人を一気に呼び込むのは難しいと思うので、かなりの宣伝効果にもなったと思います。

―『13verse』の今後のビジョンを教えてください。

藏脇:現状は、「大阪・関西万博」に向けて、コンテンツのブラッシュアップを図っているところです。その作業では、県内の高校と連携し、生徒にもコンテンツ作成に参加してもらっています。『13verse』プロジェクトの輪を広げていくことで、伊佐市の魅力の発信はもちろん、地方の中小・ベンチャー企業でもインパクトを与える取り組みができるということを世の中に伝えていきたいですね。

脇黒丸:今後は当初の目標のひとつだった、農家が直接米をユーザーに販売する仕組みづくりにも取り組んでいきます。そうしてコンテンツをひとつのパッケージにして、国内外に展開していきたいですね。
PROFILE プロフィール
藏脇 健太(くらわき けんた)プロフィール
1989年、鹿児島県生まれ。2011年に専門学校を卒業後、柔道整復師の資格を取得し、整骨院勤務やフリーのトレーナーとして施術を提供。その後、一念発起してIT業界へ転身を図り、2023年にBROTHER株式会社を設立し、代表取締役に就任する。
Design Space合同会社 代表取締役 脇黒丸 一麿(わきくろまる かずま)プロフィール
1974年、大阪府生まれ。1997年に鹿児島経済大学(現:鹿児島国際大学)を卒業後、ゼネコンに入社し、橋梁設計業務を担当。その後、家業を経て、2017年にDesign Space合同会社を設立し、代表に就任する。
BROTHER株式会社 企業情報
設立 2023年8月
資本金 100万円
事業内容 メタバースの空間制作、XR活用支援、web3事業開発
URL https://brother-crosstheme.com/
Design Space合同会社 企業情報
設立 2017年11月
資本金 300万円
従業員数 52人
事業内容 橋梁設計、農業支援、eスポーツの振興、介護施設・保育園の運営など
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