EVENT REPORT イベントレポート
【ベストベンチャー100カンファレンス 2025 Autumn 講演②】ハードシングスを乗り越えた起業家たち
株式会社パトスロゴス 代表取締役CEO 牧野 正幸 / 株式会社アドベンチャー 代表取締役社長 中村 俊一
これから成長が期待されるベンチャー企業を厳正な審査の下に100社選出する『ベストベンチャー100』。その選出企業を始め、完全招待制でベンチャー企業の経営陣に参加を呼びかけ、2025年9月20日に『ベストベンチャー100カンファレンス』を明治記念館で開催した。第一部の講演では、日本を代表するベンチャーの経営者4名が登壇。今回は「講演➁」として、「ハードシングスを乗り越えた起業家たち」をテーマに、株式会社パトスロゴス代表取締役CEOの牧野正幸氏と、株式会社アドベンチャー代表取締役社長の中村俊一氏が行った講演の内容をレポートする。
自己紹介と会社概要
牧野:パトスロゴスの牧野です。私は1996年にワークスアプリケーションズを創業し、2019年までCEOを務めました。同社は国産ERP、特に大企業向け人事分野でシェア55%を占め、売上500億円強の企業に成長しました。退任翌年の2020年、自身2度目の起業となるパトスロゴスを設立。いわば「シリアルアントレプレナー」といったところでしょうか。ありがたいことに前職の実績もあって50億円強を早期に調達でき、初回とは違って潤沢な資金で先行投資できる状況です。パトスロゴスでは、AI時代に備え、領域特化型HR Saasのデータを一元化する共創プラットフォーム『PathosLogos』を展開しています。
中村:アドベンチャーの中村です。私は大学1年、19歳の時に個人事業主で起業し、2年次には法人化しました。それ以来ずっと経営一筋で、31歳で東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。当社はオンライン旅行事業を手掛け、航空券やホテルをネット販売しています。現在、連結従業員は約600名、子会社は十数社を抱え、なかには上場企業もあります。当社のサービスは多言語対応を進めていて海外展開に強く、従業員も日本より海外の方が多いです。アプリダウンロード数は約2,300万と、国内では相応のシェアですが、時価総額約30兆円のブッキング・ホールディングスさんと比べれば、我々はまだまだ小さな存在。今も創業したてのベンチャー企業という気概で毎日を戦っています。
中村:アドベンチャーの中村です。私は大学1年、19歳の時に個人事業主で起業し、2年次には法人化しました。それ以来ずっと経営一筋で、31歳で東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。当社はオンライン旅行事業を手掛け、航空券やホテルをネット販売しています。現在、連結従業員は約600名、子会社は十数社を抱え、なかには上場企業もあります。当社のサービスは多言語対応を進めていて海外展開に強く、従業員も日本より海外の方が多いです。アプリダウンロード数は約2,300万と、国内では相応のシェアですが、時価総額約30兆円のブッキング・ホールディングスさんと比べれば、我々はまだまだ小さな存在。今も創業したてのベンチャー企業という気概で毎日を戦っています。
ハードシングス [ケースⅠ]
―➀どういうハードシングスがあったか?
牧野:最初のハードシングスは、多くの企業が直面する「優秀な人材を採用できない」という問題です。ワークスアプリケーションズが上場直後に急成長した際、売上が急激に伸びすぎて業務が回らず「受注停止」寸前に陥りました。ベンチャー企業は勢いがある時に伸ばすべきなのに、コストを恐れて採用がワンテンポ遅れがちです。この成長期における採用の遅れは、ベンチャー企業にとって致命傷になりかねません。この「採用力」の欠如こそが成長を阻む最大の要因であり、実際、それによってチャンスを失う痛みを経験しました。
―➁その時、どんな意思決定をしたか?
牧野:私は「ブレーキを踏まない」、つまり「採用を徹底的に前倒しする」という決断をしました。リスクは承知でしたが、当時、ワークスアプリケーションズは上場していて、資金調達のめどは立ち、キャッシュフローも黒字でした。「赤字にならない範囲で、コストはとことん使おう」と考えました。業績悪化で株価が下がり、投資家から厳しく非難される恐れもありましたが、「そんなことはどうでもいい。事業を伸ばすのが最優先だ」と腹をくくりました。採用に一切の制限を設けず、あらゆるコストを最大限にかける決断を下したのです。
―➂ハードシングスを乗り越えた理由・結果
牧野:私がこの意思決定をしたのは、従来のスペック重視の経験者採用では、必要な人材を永遠に採用できない「無限ループ」に陥ると分かったからです。「経験者を採用しようと無駄なコストをかけるより、未経験でも、地頭の良い人材を育てた方が早い」と考えたのです。そのために適性検査で地頭を見抜き、新卒は1ヵ月間のインターン、中途は3ヵ月間の「虎の穴」と呼ぶ実習で、ベンチャー必須の「頭の柔らかさ」を徹底的に見極めました。
その結果、年間最大25億円もの採用コストを投じ、「地頭が良く頭の柔らかい未経験者」の確保に成功。キャリアがなくても高報酬を提示し、厳しく教育することで、通常の社員が習熟まで4~5年かかるレベルの業務を2年で追い抜く非常に優秀な人材を育成でき、事業の急成長を支える人的リソースの問題を解決できたのです。
その結果、年間最大25億円もの採用コストを投じ、「地頭が良く頭の柔らかい未経験者」の確保に成功。キャリアがなくても高報酬を提示し、厳しく教育することで、通常の社員が習熟まで4~5年かかるレベルの業務を2年で追い抜く非常に優秀な人材を育成でき、事業の急成長を支える人的リソースの問題を解決できたのです。
ハードシングス [ケースⅡ]
―➀どういうハードシングスがあったか?
中村:私は2つ、お話しさせてください。私にとっての最初のハードシングスは、「コロナ禍における旅行需要激減」です。当時はキャンセル電話が毎日鳴りやまず、年間800億円あった取扱高が、キャンセル処理で月次マイナス5億円に転落しました。これは経営者として初めての恐怖でした。しかも数ヵ月後には数十名の新卒入社が控えており、社内からは「全員採用を取り消すべきだ」という声まで飛び交う、まさに絶望的な状況でした。
―➁その時、どんな意思決定をしたか?
中村:私はまず、雇用について「最悪の場合、私が個人で全部払う。だから雇用は一人たりとも切るな」と宣言しました。事業については、「困難から逃げたら負けだ」として、「ピンチこそチャンスだ」と考えました。そこで、それまで契約ゼロ件だった国内ホテル事業に、ほぼ全リソースを集中するという意思決定をしたのです。社内から約50名の体制で一斉に国内ホテルへ営業の電話をかけさせたところ、驚くほど契約が取れたため、「今こそ攻めるときだ」と判断しました。社内の反発はありましたが、会社としての全体最適化を考え、雇用を維持するためにも「嫌な人は辞めてください」というくらいの強いトーンで実行を命じました。
―➂ハードシングスを乗り越えた理由・結果
中村:「社内の雇用を維持して、国内ホテル事業に全リソースを集中する」という意思決定にロジックはありませんでした。社内は「人を減らせ」という声ばかりで、私の決定には反発しかありませんでしたね。でも、「やると決めたら、理屈抜きでやる」のが私です。情熱と気持ちだけで押し通しました。幸運だったのは、ホテル側も旅行需要激減で同じ「地獄」を見ており、「こんな時期に客を連れてきてくれるのか」という強いニーズが存在したことです。
結果は劇的でした。契約ゼロだった国内ホテル事業は、今や約1万施設。月の取扱高は約10億円、年間100億円超を見込む事業となり、コロナ禍の壊滅的状況から一転、当社の最注力領域へと変貌を遂げたのです。
結果は劇的でした。契約ゼロだった国内ホテル事業は、今や約1万施設。月の取扱高は約10億円、年間100億円超を見込む事業となり、コロナ禍の壊滅的状況から一転、当社の最注力領域へと変貌を遂げたのです。
ハードシングス [ケースⅢ]
―➀どういうハードシングスがあったか?
中村:もう1つは、当社の「子会社での不正発覚」です。しかも2件。2件ともにM&Aで取得した会社で、買収後に発覚しました。1件目は約3億円の横領で、刑事事件にまで発展して逮捕者も出ました。これをデューデリジェンスで見抜けなかったのです。東証からは厳しく指導され、市場変更準備が2年間進めることができないという重いペナルティとなりました。2件目は今まさに進行中です。上場子会社の助成金不正受給の疑いから決算が遅延し、調査中に別の不正まで発覚し、監査法人や金融庁への対応に追われています。
―➁その時、どんな意思決定をしたか?
中村:M&Aにはリスクが伴うことを深く認識しておりますが、将来の成長のために必要な挑戦は続けていこうと決意しました。今後ともステークホルダーの皆様にご心配をおかけすることのないよう、引き続き最大限のリスク管理体制を構築した上で着実に歩みを進めようと考えています。
―➂ハードシングスを乗り越えた理由・結果
中村:私がM&Aを止めない理由は、第一に、「困難と挑戦を切り離せない」という性格にあります。批判されるほど意欲が湧いてくるのです。また、「成長中の会社がリスクを恐れすぎると成長が止まってしまう」というジレンマも認識しています。その結果、私たちは不正発覚という困難に直面してもM&Aを推進し続けております。今後も積極的なM&Aにより、企業価値を高めていきたいと考えています。
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