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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社CsM 代表取締役 峰村 亮介

大企業出身の代表によるメソッドで「半年間で売上倍増」の事例も

個性を活かす育成で組織力を強化 。営業職が「仕事を楽しむ」職場へ

株式会社CsM 代表取締役 峰村 亮介

「経営者自ら営業していた時期は順調に業績が伸びていたのに、人材を採用し、組織的な営業にシフトしたら、業績の成長が鈍化した」。こうした悩みをもつベンチャー企業経営者は少なくないだろう。営業組織に対するコンサルティングを提供するCsM(シーズエム)代表の峰村氏は「社長やトップセールスのやり方をただ教えるのではなく、営業職一人ひとりの個性を活かす育成を行い、役割を任せ、活躍させれば、“売れる組織"へと変わる」と語る。同氏にベンチャー企業支援にかける想いを聞いた。

苦手を克服させるのではなく、個々の「得意」を活かす育成を

―事業内容を教えてください。

 従業員が10~50名程度のベンチャー企業の営業部門に対し、人材を育成して組織力を強化する伴走型のコンサルティングを提供しています。最近手がけた事例をお話しします。そこは、採用や人事評価制度設計など人事部門の支援を専門とするコンサルティング会社でした。設立5年で、従業員数10名・売上高3億円の規模にまで成長。起業当初は、社長が自ら営業し、順調に拡大していました。しかし、営業職を増員して、プレーヤーをマネージャーに昇進させ部下のマネジメントを任せ始めた頃から、徐々に成長の勢いが鈍化してしまったのです。そうした、営業組織の構築や人材育成の問題に起因した「成長の壁」にぶつかっているベンチャー企業がおもなクライアントです。

―その人事系ベンチャー企業には、どんな問題がありましたか。

 その会社は、メンバーが自ら新規の顧客を開拓してコンサルティングまで行う、それぞれ個人で業務が完結する体制でした。人にはそれぞれ「得意な業務」「苦手な業務」がありますが、そうした得手不得手は関係なく、苦手な分野の仕事も1人で行うため生産性もあがりませんでした。そのため、成果がなかなか出せず、営業職のモチベーションも下がっていたのです。しかも、高い目標を掲げられ、営業職同士が互いにライバルとして競い合う風土のため、メンバーは誰の協力も得られないまま、つねに目の前の仕事に追われる毎日でした。一方で、営業ノウハウを身につけた優秀な人材はより報酬の高い企業や、組織体制が整ってもっと活躍できる環境のある企業に転職してしまうため、人材が定着しないなど問題は山積みでした。

―CsMでは、どのような支援を行ったのでしょう。

 私がまず行ったのは、営業メンバーとマネージャーら全員と1時間程度、個別に面談することでした。そこで、一番重要な一人ひとりの個性を見極めることから始めました。また、彼らの実情を率直に話してもらえるよう、仕事に関係のない話も織り交ぜながら、対話を通じて私のことを信頼してもらうことにも注力しました。その後さらに、何度も面談を重ねるにつれ、「いま抱えている悩み」や「将来の目標」を徐々に教えてもらえるようになると、メンバーそれぞれに対し個性に合わせたアドバイスを行っていったのです。

 多くの対話を通して、組織にある2つの課題が浮き彫りになりました。1つ目は、個々の営業職の個性や将来の目標、現在の課題に関係なく、社長やマネージャーの成功体験である営業方法をただメンバーに教えていること。画一的なやり方に従うよう求められることで、「社長やマネージャーのようにはやれない」と挫折したり、モチベーションが下がってしまったりしている人が多かったのです。2つ目は、連携がとれずバラバラだったこと。メンバー同士が営業成績を競い合うライバル関係のため、情報やノウハウが共有されず、組織として知見を活かせない状態でした。

―2つの課題に対して、どのような処方箋を示したのですか。

 まず、1つ目の「画一的な育成法」に対しては、それぞれのメンバーがベストパフォーマンスを発揮できるよう、各人の個性を活かした育成を行うことによって、「誰もが個性を活かして活躍でき、仕事を楽しめる体制」の整備を図りました。なぜなら、メンバーがもつ最大限の力を引き出すには、一方的に設定された目標に従って同じやり方で仕事をさせるより、自ら立てた目標に基づき、自分の個性や強みを伸ばしながら活かせる「得意な業務」に取り組んでもらうべきだからです。そのほうがモチベーションを高めて楽しく仕事ができますし、成果があがります。たとえば、今回のクライアントのようにある程度の社員がいて、役割分担が可能であれば、自ら「やりたい」と思える仕事に携われるように役割を見直すことができます。具体的には、初対面の人と話すことが苦手な社員であれば、無理にがんばって新規の商談に取り組んで、克服させるのではなく、戦略の立案や、既存顧客の対応など、その人が得意な分野で活躍できるよう業務を振り分け、「組織としての成果」を目指しました。

 2つ目の「メンバー間の連携がとれていない」という課題に対しては、情報の共有化で改善をしました。過去の商談での成功事例や失敗事例を社内で共有し、モデルケースを作成するのです。業種業態や規模、商談相手によって「どう提案すれば成功するか、失敗するか」をあらかじめ学ぶことで成約率は高まります。提案の準備に要する時間が短縮できるなど業務の効率化も実現。加えて、ビジョンを共有することによって組織の一体感が醸成されました。こうした取り組みによりメンバー間で共感が生まれ、悩みごとの相談やアドバイスができるようになるとともに、互いを「本当の仲間」と認め合えるようになったのです。

 これらの改革をマネージャーと共に推進し、マネージャーに育成方法やマネジメント方法を学んでもらいました。これには、メンバーの効果的な指導だけでなく、「次のマネージャー」の育成ができるようになってもらう狙いがありました。

バラバラの「個人商店」から、チームで成果を目指す組織へ

―支援の結果、どのような成果が生まれましたか。

 各人がそれぞれ業務を行う「個人商店」が並んだ状態から、「チームで成果を目指す組織」へと変わりました。社員一人ひとりが主体的に仕事に取り組み、自発的に本を読んで勉強するなど自己啓発に取り組むようにもなりました。こうした前向きな変化の積み重ねによって、支援を始めてから約半年で売上は前期比で約2倍に増加したのです。

―峰村さんが、そのようなコンサルティング手法を編み出した経緯を教えてください。

 私が新卒で入社した証券会社の営業活動で、日々感じていたことが背景にあります。当時はまだ「気合と根性」でとにかく数をこなして成果をあげることが求められ、がむしゃらに数字を追わなくてはならない環境でした。それに耐えられずに辞める人も多くいるなか、自分の部下や後輩ができたときに「仕事を楽しいと感じてほしい」「根性論ではなく戦略的な営業をしてほしい」と強く思ったのです。どうしたらいいか考えた結果、「メンバーの長所を活かし、個性を大事にする営業組織にすれば、仕事はもっと楽しくなるし、成果もあがるはず」との思いに至りました。いま思えば、現在行っているコンサルティングの原型となるメソッドはこのときの経験があったから考案できたのかもしれません。自分の部下への指導で実践したところ、前向きに取り組む姿勢を引き出せ、実際に営業成績も伸ばすことができました。その際、「いつか、世の中で悩んでいる多くの営業職のみなさんの力になることで、彼らにもそうした成功の経験をしてほしい」という気持ちが芽生え、のちの起業につながったのです。

―最後に、成長率の鈍化に悩むベンチャー経営者にアドバイスをください。

 「この会社で働きたい」「この会社のビジョンを叶えたい」と入社してくれた社員一人ひとりをしっかりと成長させ、力を最大限発揮させることができているでしょうか。社員一人ひとりが「自分の力を発揮できている」「会社に貢献できている」と感じ、「毎日仕事が楽しい」と心の底から思い、社員一丸となって仕事に取り組む。それが、企業が成長するために最も必要な要素だと考えています。現状、「それができていない」と感じているベンチャー企業の経営者の方々は、ぜひ、ご相談ください。
PROFILE プロフィール
峰村 亮介(みねむら りょうすけ)プロフィール
1986年生まれ。2009年に早稲田大学を卒業後、野村證券株式会社に入社。個人・法人営業に従事した後、コンプライアンス部門、支店管理部門で、コンプライアンス関連の社内ルールの作成と運営、業務改善、仕組み構築を行う。2020年に退社後、人事コンサルティングのベンチャー企業、人材系ベンチャー企業勤務を経て、2022年に株式会社CsMを設立。
企業情報
設立 2022年4月
事業内容 営業組織力強化コンサルティング、財務改善コンサルティング
URL https://c-sm.co.jp/
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