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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社COMPASS 代表取締役 社長 安藤 祐輔

業界の「ブラックボックス」に切り込む元Webマーケターの挑戦

大家主体の不動産市場をITで実現し、業界に変革を起こす

株式会社COMPASS 代表取締役 社長 安藤 祐輔

ITを駆使し、不動産賃貸経営の支援サービスを開発・提供するCOMPASS。不動産の「自主管理オーナー」向けに特化した同社の事業戦略は市場から高く評価され、順調にサービスの登録者数を伸ばしている。そんな同社を率いるのは、2020年にIT業界から転身して代表に就任した安藤氏だ。「IT業界に長年携わってきた私だからこそ、果たすべき使命がある」と語る同氏に、その詳細と、使命を果たした先に描くビジョンについて聞いた。

自主管理オーナーの立場では、経営に必要な情報を得にくい

―事業内容を教えてください。

 不動産物件を自ら管理する大家さん、すなわち「自主管理オーナー」の賃貸経営を支援するITプラットフォーム『Owner WEB』の開発・提供を手がけています。自主管理オーナーは『Owner WEB』を活用することで、賃貸借や家賃保証の電子契約、変更・解約の手続き、送金明細の確認、入居者募集など、さまざまな賃貸管理を自ら効率的に行えるようになります。『Owner WEB』は2021年4月のリリース以来、多くの自主管理オーナーから好評をいただいており、登録者数は2023年5月現在で6,000人を突破しました。現在も毎月200人ほどのペースで増え続けています。

―COMPASSが自主管理オーナー向けに特化した事業を展開しているのはなぜですか。

 不動産管理会社との間で生じる「情報の非対称性」によって、弱い立場に立たされている自主管理オーナーが非常に多いことに問題意識を感じてきたからです。ある調査によると、全国の借家戸数のうちオーナーが自主管理している物件の比率は47.6%と、「自主管理市場」の規模は決して小さくありません。(※)しかし、不動産業界を構成する施工会社や清掃会社、保険会社といった事業者はどうしても、大口顧客となりやすい管理会社に向けたサービス提供を重視しがちです。その結果、自主管理オーナーは賃貸経営に関する十分な情報やノウハウを得にくくなり、賃貸経営において適正な判断を行うのが難しくなってしまっているのが現状です。そうした情報の非対称性をITの力で解消し、不動産業界の健全な発展に資することこそが、前職で長年Webマーケティングに携わってきた私に課せられたミッションです。
※出所 : 全国賃貸住宅新聞社発行『賃貸管理市場データブック2021-2022』

IT化の遅れを象徴する「FAXが主流」の文化

―IT業界に長年携わってきた安藤さんの目に、不動産業界はどのように映っていますか。

 「IT化が特に遅れている業界」という印象が大変強いです。たとえば、ほかの業界であればシステムやアプリといったITツールを使うのが当たり前の手続きにおいて、不動産業界ではいまだに「FAXを使うのが主流」です。これは、まさしくIT化の遅れを象徴するものと言えるでしょう。また、課題は単なる「手続きのデジタル化」だけにとどまりません。いま多くの業界では、インターネットを使った情報の発信・収集が当たり前ですが、不動産業界はそれを十分に行える状態にあるとは言えません。賃貸経営に必要な情報は、管理会社など各種事業者の中でだけ流通してしまい、自主管理オーナーはそれにリーチできない。いわば、業界に「ブラックボックス」が生じてしまっているわけです。私は、この不動産業界でIT化を推し進めることによって、ブラックボックスの解消と情報の共有化だけにとどまらず、業界そのものの変革すらも促せると信じています。

良い事業者が選ばれ成長する、健全な不動産業界の実現へ

―それはどういうことでしょう。

 IT自体は、人やデバイスなどの間で情報を橋渡しするツールでしかありません。しかし、ITによって情報がつながっていく過程では、業界の旧来の常識やルールを大きく変容させる可能性が生まれてきます。近年普及した「配車アプリ」を例にあげると、ミクロの視点では、ユーザーが「タクシーに乗りたい」という意志をオンラインで表明できるようになっただけです。しかし、マクロの視点で見れば、まさに「イノベーション」とも言える変革をタクシー業界にもたらしました。

 我々は、不動産業界でもそうした変革を起こしたいと考えています。これまで、賃貸経営を効率的に行っていくには、物件の管理を専門の事業者に委託することが必要とされ、賃貸経営の主導権は事業者にあったと言えるでしょう。それが、ITの力を駆使することで、オーナーが言わば「主役」になり、自ら望む通りの賃貸経営を行えるようになっていく。『Owner WEB』はまさに、不動産業界にそうした変革を起こせるITツールになると考えています。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 まずは、『Owner WEB』というプラットフォームをより多くの自主管理オーナーに知ってもらうことで、オーナーが主役となる新しい不動産業界の基盤固めを進めていきます。そのためにいまは、「大家の会」といったオーナー同士のコミュニティなどと連携して賃貸経営に関するセミナーを開くといった、リアルの取り組みにも力を入れているところです。『Owner WEB』を通じ、不動産業界における情報の非対称性を解消したさらにその先には、「本当に良い不動産サービス」を提供する事業者だけが自然と選ばれ、成長していく環境ができあがってくるでしょう。それにより、物件の入居者もより快適な暮らしを実現していく。そんな、本来あるべき明るい不動産業界をつくっていくことが我々のビジョンです。
PROFILE プロフィール
安藤 祐輔(あんどう ゆうすけ)プロフィール
1992年、大阪府生まれ。2016年に東京大学経済学部を卒業後、大手クラウドソーシング企業(上場会社)に入社。営業や広告運用などを経験した後、マーケティング部門の責任者を務める。2020年12月に株式会社Casaに入社し、マーケティング担当課長に就任。2022年4月、同社子会社である株式会社COMPASSの代表取締役社長に就任。
企業情報
設立 2019年6月
資本金 3,000万円
事業内容 不動産経営プラットフォームの提供、不動産取引に係る各種情報インフラの提供、不動産経営に係るコンサルティング事業など
URL https://compass-inc.jp/
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