INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
徹底的に自分の頭で考え、成長マーケットで独自性を磨け
突き抜けた”個の力”が新たなグローバル企業を創造する
株式会社グロービス 代表 堀義人、グリー株式会社 代表取締役社長 田中良和
※下記はベンチャー通信45号(2011年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―グロービス・グループは「ヒト」、「カネ」、「チエ」という3つの領域で事業を展開し、社会の創造と変革をサポートしています。グリーに対しては「カネ」の領域から2005年に約1億円の出資を行いました。なぜ、設立2年目のベンチャー企業に多額の出資をしたのですか?
堀:理由のひとつは、縁があったからです。もともと私たちの投資先企業であるネットエイジに学生時代の田中さんがインターンしていて、そこにミクシィ創業前の笠原さんもいらっしゃいました。その後、田中さんは楽天に入社。グリーを始めた翌年に、IT系ベンチャーの会合でウチのメンバーがお会いしました。そして、ソーシャルメディアに可能性を感じ、投資を決めました。本当は「最初から現在の成功を予期していた」と言った方がカッコいいかもしれませんが、ここまでは予想していなかったですね。楽天の三木谷さんもディー・エヌ・エーの南場さんも創業前から面識があるのですが、成功するかどうかはわかりませんでした。ただ、みなさん姿勢が素晴らしかった。スマートな気概というか、高い志と強烈な負けず嫌いの気質をもっている。そういった姿勢が後で大きな違いを生み出しているのだと思います。田中さんも投資後の成長がすごい。世界を見据えた高いマインドをもち、意思決定と事業展開が非常にスピーディーです。
―ベンチャー企業に投資する際は事業戦略やビジネスモデルよりも、起業家の資質や姿勢を重視するのですか?
堀:私たちが投資を検討する際、大きく2つの側面をチェックします。ひとつはマーケット、戦略、プロダクトなど、MBA的に分析できるもの。もうひとつが起業家、つまり人ですね。ベンチャーキャピタルを始めた当初は7:3で前者を重視していたのですが、経験を重ねるにつれて後者の比率が高くなっていきました。いまは2:8ぐらいで起業家を重視しています。その理由は、始めた事業と異なる事業でブレイクすることが多いからです。グリーやディー・エヌ・エーはそうですね。楽天は創業事業のインターネットモール事業だけでなく、証券事業や旅行事業なども含めて複合的に成長しています。ですから、マーケットやプロダクト以上に起業家のマインドやユニークに考える力が大切です。ユニークに考える力とは、人の意見を鵜呑みにせず、自分の頭で考え、とことんまで壊す力のことです。高い志をもって、ユニークに自分の頭で考えて、走りながら軌道修正していけば、成功する可能性が高いと思います。
田中:人と同じくらい、マーケットも大事だと思いますね。マーケット自体が成長しているという大前提があれば、優秀な人が一生懸命がんばったら成功する可能性は高い。一方、マーケット自体が縮小していれば、すごく優秀な人でも成功は難しいでしょう。当社の事業領域で考えると、「モバイル」と「ゲーム」というマーケットはこれからも成長します。スマートフォンを含めた携帯電話はこれからも増え続けるし、ゲームビジネスも伸び続ける。具体的な端末の機能やゲームの内容はどんどん変わっていけばいいのです。
堀:私たちがグリーに投資をしていると「あそこは単なるゲームの会社じゃないか」と揶揄されることもありますが、それには反論しています。なぜなら、ゲームにはさまざまな側面があるからです。たとえば、ゲームには「課題を乗り越えて目標を達成する」という側面があるので、教育と融合できるでしょう。さらにゲームのヴァーチャルな世界とリアルな世界の境目がなくなり、人材育成に活用できる可能性もあります。
田中:いまグリーが伸びている根本的な理由は、人間生活そのものが仮想化しているからです。「インターネットを通じてヴァーチャルな世界を生きている」というとSFのようですが、それは表現の問題です。では、メールを書いている時間はヴァーチャルな世界を生きているのでしょうか。おそらく5年後や10年後は、今よりもメールを書いているし、インターネットを見ている。では30年後、50年後・・・という風に考えると、どんどんメールやインターネットを活用する時間が増えていくでしょう。
田中:人と同じくらい、マーケットも大事だと思いますね。マーケット自体が成長しているという大前提があれば、優秀な人が一生懸命がんばったら成功する可能性は高い。一方、マーケット自体が縮小していれば、すごく優秀な人でも成功は難しいでしょう。当社の事業領域で考えると、「モバイル」と「ゲーム」というマーケットはこれからも成長します。スマートフォンを含めた携帯電話はこれからも増え続けるし、ゲームビジネスも伸び続ける。具体的な端末の機能やゲームの内容はどんどん変わっていけばいいのです。
堀:私たちがグリーに投資をしていると「あそこは単なるゲームの会社じゃないか」と揶揄されることもありますが、それには反論しています。なぜなら、ゲームにはさまざまな側面があるからです。たとえば、ゲームには「課題を乗り越えて目標を達成する」という側面があるので、教育と融合できるでしょう。さらにゲームのヴァーチャルな世界とリアルな世界の境目がなくなり、人材育成に活用できる可能性もあります。
田中:いまグリーが伸びている根本的な理由は、人間生活そのものが仮想化しているからです。「インターネットを通じてヴァーチャルな世界を生きている」というとSFのようですが、それは表現の問題です。では、メールを書いている時間はヴァーチャルな世界を生きているのでしょうか。おそらく5年後や10年後は、今よりもメールを書いているし、インターネットを見ている。では30年後、50年後・・・という風に考えると、どんどんメールやインターネットを活用する時間が増えていくでしょう。
―アバターのアイテムが売れる背景には、そういった変化があるわけですね。
田中:ええ。「実際に着られない洋服を買って意味があるんですか?」とよく聞かれるのですが、現実の世界も同じなんですよ。たとえば、ユニクロで服を買う人の目的は何でしょうか。すぐに服を買わないと凍死する人はいないし、明日着る服がない人もいません。服を買う目的は、自分自身が満足したり、友だちにファッションを見せるためです。これはオンラインゲームでアバターのアイテムを買う動機と同じです。ですから、今後インターネットに費やす時間が増えていくほど、コミュニケーションを居心地よくするビジネスが大きくなっていくでしょう。この市場規模は現在の日本の実態経済ぐらい大きくなってもおかしくない。だから、私たちの本質はゲームビジネスではなく、人間生活の変化に対するソリューションの提供なのです。
―グリーは日本だけでなく、アメリカ、中国、韓国、シンガポール、イギリスなどに子会社を設立し、積極的に海外展開を進めています。日本のITベンチャーがグローバル市場に挑戦する意義について、どう考えていますか?
田中:たしかにグローバルに展開しているITベンチャーは少ないですが、ゲーム会社はほとんどグローバル企業です。任天堂、バンダイナムコ、スクウェアエニックス・・・。ですから、当社の世界展開は自然な流れです。
堀:戦後、ホンダやソニーが海外に進出し、グローバル企業に成長しました。成功した理由のひとつは、プロダクト(製品)に言語の壁がなかったからです。しかし、プロダクトを販売するビジネスからソリューション(解決手段)を提供するビジネスへと変化するにつれて、日本企業が勝てなくなった。
コンサルティング会社、会計事務所、法律事務所、SI会社などのグローバル企業はほとんどアメリカ企業です。そんな状況のなかで日本が強いのは、ゲームなどの言語に依存しないコンテンツ産業です。ですから、グリーがプラットフォーマーになると仮定した場合、国境は関係なくなります。スマートフォンの通信回線さえあれば、日本でつくったソーシャルゲームをイタリアでもインドネシアでもプレイできる。あとは現地の携帯会社やSNSなどと連携しながら、ローカルマーケットを攻めていけばいい。人間ではなくプロダクトで勝負するので、グローバル化できるのです。もちろん、強い意志と人材育成力も必要です。
堀:戦後、ホンダやソニーが海外に進出し、グローバル企業に成長しました。成功した理由のひとつは、プロダクト(製品)に言語の壁がなかったからです。しかし、プロダクトを販売するビジネスからソリューション(解決手段)を提供するビジネスへと変化するにつれて、日本企業が勝てなくなった。
コンサルティング会社、会計事務所、法律事務所、SI会社などのグローバル企業はほとんどアメリカ企業です。そんな状況のなかで日本が強いのは、ゲームなどの言語に依存しないコンテンツ産業です。ですから、グリーがプラットフォーマーになると仮定した場合、国境は関係なくなります。スマートフォンの通信回線さえあれば、日本でつくったソーシャルゲームをイタリアでもインドネシアでもプレイできる。あとは現地の携帯会社やSNSなどと連携しながら、ローカルマーケットを攻めていけばいい。人間ではなくプロダクトで勝負するので、グローバル化できるのです。もちろん、強い意志と人材育成力も必要です。
PROFILE
プロフィール
堀義人、田中良和(ほり よしと、たなか よしかず)プロフィール
■堀 義人(ほり よしと)
1962年、茨城県生まれ。京都大学工学部を卒業後、住友商事株式会社に入社。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。1992年に株式会社グロービスを設立し、代表取締役に就任。1999年、エイパックス・グロービス・パートナーズ(現:グロービス・キャピタル・パートナーズ)を設立し、代表取締役に就任。2006年4月にグロービス経営大学院を開学し、学長に就任。2008年4月、大学院の設置者を学校法人に転換。若手起業家が集まるYEO(現:EO)日本初代会長、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders 日本代表などを歴任。現在、経済同友会幹事、日本プライベート・エクイティ協会理事を務める。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人の任務』(東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)などがある。
■田中 良和(たなか よしかず)
1977年、東京都生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現:ソネットエンタテインメント株式会社)を経て、2000年に楽天株式会社に入社。2004年2月、個人の趣味としてSNS「GREE」を開発。公開1ヵ月後に、ユーザー数が1万人を突破。同年10月に楽天株式会社を退社し、12月にグリー株式会社を設立。代表取締役社長に就任する。2006年よりモバイル版を本格始動させ、いち早くソーシャルゲームを開発。同社は2008年に東証マザーズ、2010年に東証一部に上場。2011年にアメリカ法人を設立し、米OpenFeint社を子会社化。グループでの総ユーザー数が1.5億を突破する(日本のユーザー数は2700万超)。現在はアメリカ法人以外にも、中国、韓国、シンガポール、イギリスなどに子会社を設立し、積極的な世界展開を進めている。
1962年、茨城県生まれ。京都大学工学部を卒業後、住友商事株式会社に入社。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。1992年に株式会社グロービスを設立し、代表取締役に就任。1999年、エイパックス・グロービス・パートナーズ(現:グロービス・キャピタル・パートナーズ)を設立し、代表取締役に就任。2006年4月にグロービス経営大学院を開学し、学長に就任。2008年4月、大学院の設置者を学校法人に転換。若手起業家が集まるYEO(現:EO)日本初代会長、世界経済フォーラム(WEF)が選んだNew Asian Leaders 日本代表などを歴任。現在、経済同友会幹事、日本プライベート・エクイティ協会理事を務める。著書に、『創造と変革の志士たちへ』(PHP研究所)、『吾人の任務』(東洋経済新報社)、『人生の座標軸』(講談社)などがある。
■田中 良和(たなか よしかず)
1977年、東京都生まれ。日本大学法学部卒業後、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現:ソネットエンタテインメント株式会社)を経て、2000年に楽天株式会社に入社。2004年2月、個人の趣味としてSNS「GREE」を開発。公開1ヵ月後に、ユーザー数が1万人を突破。同年10月に楽天株式会社を退社し、12月にグリー株式会社を設立。代表取締役社長に就任する。2006年よりモバイル版を本格始動させ、いち早くソーシャルゲームを開発。同社は2008年に東証マザーズ、2010年に東証一部に上場。2011年にアメリカ法人を設立し、米OpenFeint社を子会社化。グループでの総ユーザー数が1.5億を突破する(日本のユーザー数は2700万超)。現在はアメリカ法人以外にも、中国、韓国、シンガポール、イギリスなどに子会社を設立し、積極的な世界展開を進めている。
企業情報
設立 | 1992年8月 |
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事業内容 | グロービス・マネジメント・スクール、グロービス・エグゼクティブスクール、グロービス・オーガニゼーション・ラーニング、出版 |
URL | http://www.globis.co.jp |
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