INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
京都の町工場を年商1000億円超のグローバル企業へ成長させた起業家
「おもしろい」ことを徹底追求すれば世界で勝てる
株式会社堀場製作所 最高顧問 堀場 雅夫
※下記はベンチャー通信53号(2013年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―つねに最先端の技術を追求し続ける、社員のモチベーションの源泉はなんでしょう。
堀場:社員が「おもしろい」と思う分野を追求させていることですね。おもしろいと思えることなら、みんな情熱をもって働くもの。それは世界どこでも同じです。当社はいま、27ヵ国に拠点をおいています。国によって法律も習慣も違いますが、「仕事はおもしろいほうがいい」というのはアジアであろうがアフリカであろうが一緒です。だから、当社のグローバルな人材マネジメントはシンプル。得意な分野を伸ばせるようなポジションにつける。それだけなんです。ただ高い給料をあげたって、仕事が毎日楽しくなかったら良い仕事はできないし、新しいアイデアも出ないんですから。
―グローバル企業に成長したいま、本拠地を海外に移すこともありえますか。
堀場:いいえ。私の目の黒いうちは京都に本社をおき続けます。私の地元なので、濃密な人間関係のネットワークがあるからです。業界全体の課題に共同で取り組む同業の経営者や、技術面のアドバイスをくれる研究者など。とくに京都大学は、シリコンバレーにおけるスタンフォード大学と同じ。多くの京都企業に技術面での支援をしていて、当社もその恩恵を受けている。コストを考えたら、海外のほうがいいでしょう。シンガポールなら、法人税は半分になる。でも私は、生まれ育った土地で起業するほうがいいと思っています。起業家の人脈を資産にできるからです。
―しかし、日本のベンチャー企業は東京に集中する傾向があります。
堀場:日本市場だけを相手にするなら、東京に行けばいいと思います。国内でいちばん市場が大きいのだから。でも、グローバル市場をねらうのであれば、東京である必要はない。当社の場合、グループ全体の売上高に占める日本市場の割合は4割ほど。社員に占める日本人の割合もやはり4割です。だから、東京に本拠をおく必要はまったくないんです。
―最後に、起業を目指している学生にメッセージをお願いします。
堀場いちどフルスロットルで走ってみたらいい。日本人は自己の実力を過小評価しがち。「どうせできない」という意識がリミッターになっている。それを外して、フルスロットルを踏んでみればいいんです。自分が想像していた以上のスピードが出ますよ。社員が「それはできません」といってきたら、私は「ごちゃごちゃいわずに、とにかくやれ」といっているんです。やらせてみると、10人のうち7~8人はできる。そして自信がつき、急成長していくんです。だから、まず自分が「おもしろい」と思えることをみつける。そしてその分野で一流になるために、フルスロットルで走る。そうすれば、世界の舞台で戦えるはずです。
PROFILE
プロフィール
堀場 雅夫(ほりば まさお)プロフィール
1924年、京都市生まれ。1945年、京都帝国大学(現:京都大学)理学部在学中に堀場無線研究所を創業。1950年に日本初のガラス電極式pHメーターの開発に成功する。1953年に株式会社堀場製作所を設立、代表取締役社長に就任。社員に博士号の取得を推奨し、自身も1961年に医学博士号を取得。1964年に日本初の自動車排ガス測定装置を開発。1978年に代表取締役会長就任。1982年に東証・大証一部に上場。2005年に最高顧問に就任。2006年、分析化学の世界でもっとも権威のある「ピッツコン・ヘリテージ・アワード」を欧米人以外ではじめて受賞。著書に『イヤならやめろ!』(日本経済新聞出版社)など、ベストセラー多数。
企業情報
設立 | 1953年1月(創業:1945年10月) |
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資本金 | 120億1,100万円(2012年12月31日現在) |
売上高 | 1,176億900万円(2012年12月期:連結) |
従業員数 | 5,530名(2012年12月31日現在:連結) |
事業内容 | 自動車計測機器、環境用計測機器、科学計測機器、医用計測機器、半導体用計測機器の製造販売 |
URL | http://www.horiba.co.jp/ |
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