INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
90年代にクチコミサイトを立ち上げた起業家
自らブラック・ワーカーになれる“ミッション”をみつけろ
株式会社アイスタイル 代表取締役社長 兼 CEO 吉松 徹郎
いまやクチコミサイトはITサービスの主流のひとつ。だが、アイスタイル代表の吉松氏が、コスメ用品や美容サービスのユーザーによる感想を集めたWebサイト「@cosme」を立ち上げたのは1999年。前例のないサービスを周囲は理解してくれない。20代だった同氏は大きな壁にぶつかった。どうやってそれを乗り越え、「@cosme」を20代・30代の女性を中心に圧倒的な人気を誇るサイトに育て上げたのか。吉松氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信65号(2016年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
売上高数十億円の発想のままでは100億円を突破できない
―起業家や企業のコアメンバーとして活躍するために必要なのは「若さ」か、それとも「経験」か。20代でアイスタイルを立ち上げ、東証一部上場企業へと育て上げた吉松さんは、どちらだと思いますか。
「いまのアイスタイルでコアメンバーとして活躍する」という前提で言うならば、「経験」です。これからアイスタイルは売上高数千億円の規模へと成長していきます。そのためには、売上高が千億円単位の企業はどんな組織構造になっていて、どう動いているのか、イメージできているメンバーが必要だからです。
―2016年6月期売上高は140億円と、初めて100億円の大台を突破しました。でも、すでに「1000億円超」を見すえているんですね。
ええ。その100億円突破にしても、売上高10億円、20億円、30億円…という成長曲線の延長線上で達成したわけではない。売上高数十億円のときに、「売上高数百億円の企業になるためには、どんな組織構造であるべきか」をつきつめて考え、具体化したことで達成したのです。
たとえば経営陣。創業メンバー中心だったのを、がらっと変えました。社員も、いまは新しいメンバーがどんどん入って活躍してくれています。
そうした中途採用メンバーのなかには、アイスタイルと近い業界で、アイスタイルのもつリソースや、占めているポジションの優位性を外からの視点でみてきた人も多い。創業期からのメンバーはどうしても、いままでやってきたことの延長線上でしか将来を描けない面があります。ところが、外からの視点でみると、「アイスタイルさんって、こんな事業もできるのに、どうしてやらないんですか?」と。
たとえば経営陣。創業メンバー中心だったのを、がらっと変えました。社員も、いまは新しいメンバーがどんどん入って活躍してくれています。
そうした中途採用メンバーのなかには、アイスタイルと近い業界で、アイスタイルのもつリソースや、占めているポジションの優位性を外からの視点でみてきた人も多い。創業期からのメンバーはどうしても、いままでやってきたことの延長線上でしか将来を描けない面があります。ところが、外からの視点でみると、「アイスタイルさんって、こんな事業もできるのに、どうしてやらないんですか?」と。
―どう答えているのですか。
「それは、あなたがいないからですよ」って。ぜひ、あなたがウチに来て、やってください。そう口説いて、入ってくれたメンバーが新規事業を立ち上げ、いま軌道に乗せています。
新規事業を立ち上げたり、企業規模が大きくなっていったりと、未知の領域に踏み込もうとするとき。「それがどんなものかイメージできているメンバー」がいるかどうかが成否をわけるんです。
新規事業を立ち上げたり、企業規模が大きくなっていったりと、未知の領域に踏み込もうとするとき。「それがどんなものかイメージできているメンバー」がいるかどうかが成否をわけるんです。
20代で味わった人の心変わりの怖さ
―なぜ、イメージできていることが重要なのでしょう。
人を巻き込んでいけるからです。イメージできていないメンバーは、できている人についていく。それに、組織の外にいる人に対しても明確な説明ができるので、協力を取りつけやすいんです。
じつは、ぼくが20代だったとき、いちばん苦労したのが「他人がイメージできていないことを、どうやって理解してもらうか」でした。ぼくらが「@cosme」を立ち上げたのは1999年。いまだったら「食べログの化粧品版です」とか、いくらでも説明のしようがある。でも、当時はクチコミサイトなんかどこにもないから、どう説明してもわかってもらえないことが多かった。
じつは、ぼくが20代だったとき、いちばん苦労したのが「他人がイメージできていないことを、どうやって理解してもらうか」でした。ぼくらが「@cosme」を立ち上げたのは1999年。いまだったら「食べログの化粧品版です」とか、いくらでも説明のしようがある。でも、当時はクチコミサイトなんかどこにもないから、どう説明してもわかってもらえないことが多かった。
―どんなことがあったのか教えてください。
創業してすぐに直面したITバブル崩壊のとき。「ネットがブームだから」と出資していた投資家たちの態度が180度変わりました。「ネットはリスキーなビジネスだから出資しない」と。アイスタイルも3億円を調達する話が白紙に。経営危機に直面しました。
どんなに「ウチのビジネスモデルは、ほかのネット企業と違うんです」と説明しても、まったく聞く耳をもたずに「もう帰ってよ」と。ちょっと前まで「ぜひ、出資させてください」と言っていたのに。人の心って、こうも変わるのかと思い知りました。
どんなに「ウチのビジネスモデルは、ほかのネット企業と違うんです」と説明しても、まったく聞く耳をもたずに「もう帰ってよ」と。ちょっと前まで「ぜひ、出資させてください」と言っていたのに。人の心って、こうも変わるのかと思い知りました。
―どうやって、その苦境から脱出したのですか。
どれだけ門前払いを食らおうと、とにかく多くの投資家のもとへ行きました。その結果、ついにある個人投資家から1億円を調達することに成功。窮地を脱しました。
仕事はタスクじゃないミッションなんだ
―説明してもわかってもらえない」のを、圧倒的な行動量でカバーしたわけですね。
はい。「@cosme」は考えに考えたすえに、「絶対に間違いない」と確信して立ち上げたビジネス。これをやりとげるのは、自分にとって“タスク"ではなく“ミッション"なんです。「タスクをこなす」という発想だと、いかに効率よく仕上げるかを考えてしまう。でも、「ミッションを果たす」という考え方に立てば、いくらでも時間を使うでしょう。
20代のみなさんには、仕事に圧倒的な時間を使ってほしい。もちろん、やりたくもない仕事で長時間労働をするなんて無意味です。でも、自分が「ミッションだ」と感じる仕事であれば、むしろいくら時間を使ったって苦にならない。
20代のみなさんには、仕事に圧倒的な時間を使ってほしい。もちろん、やりたくもない仕事で長時間労働をするなんて無意味です。でも、自分が「ミッションだ」と感じる仕事であれば、むしろいくら時間を使ったって苦にならない。
―「仕事のためにプライベートを犠牲にしたくない」と考える人も多いです。
仕事をミッションととらえる人は、そうは考えません。逆に、デートしたり、おいしいラーメンを食べる時間よりも仕事したいと思うはずです。圧倒的な時間を、自らすすんで仕事に使うブラック・ワーカーに自然となってしまう。そんな“ミッション”をみつけてほしいですね。
PROFILE
プロフィール
吉松 徹郎(よしまつ てつろう)プロフィール
1972年 、茨城県生まれ。1996年、東京理科大学基礎工学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング株式会社(現:アクセンチュア株式会社)に入社。1999年7月に有限会社アイスタイル(現:株式会社アイスタイル)を設立、代表取締役に就任。12月、化粧品クチコミサイト「@cosme」オープン。国内最大のコスメ・美容の総合サイトに成長させ、2012年3月、東証マザーズ上場。同年11月、東証一部に上場。「生活者中心の市場創造」をビジョンに掲げ、中国をはじめグローバルにビジネスを展開している。
企業情報
設立 | 1999年7月 |
---|---|
資本金 | 15億9,119万円 |
売上高 | 96億6,376万円(2015年6月期:連結) |
従業員数 | 409名(2015年6月30日現在) |
事業内容 | 美容系総合ポータルサイト@cosme(アットコスメ)の企画・運営、関連広告サービスの提供 |
URL | http://www.istyle.co.jp/ |
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