INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
迷ったら、やる!
株式会社パソナグループ 代表取締役グループ代表 南部 靖之
南部は、小さい頃から“価値の多様性”について考えてきた。勉強だけが全てではない。スポーツができたり、人柄が優れていたり、そういう面も同じだけ大切だ。そんな教育を受けて育った南部は、いまの閉鎖的な日本社会に疑問を投げかける。そんな南部の起業のきっかけは、“社会の問題点を解決したい”という想いからだった。
※下記はベンチャー通信5号(2002年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―小さい頃の南部さんは、どんな少年でしたか。
南部:私はもともと神戸の生まれで、男ばかりの3人兄弟の末っ子として育ちました。また小学校6年生の時に、父親の勧めで、近所にあったお寺の私塾に通うことになりました。通照院という名のお寺で、そこでたくさんのことを学びました。朝5時半に起きて、庭掃除や写経などをしてから、学校に行きました。つまりお寺の書生として、和尚さんから人間としての生き方を教わったんです。学校教育では主に知識を学ぶじゃないですか。そのお寺で私が学んだのは、知恵なんです。いつもにこにこ明るく、爽やかに。そうすれば周りにいる多くの人が幸せになる。またいつも感謝感激を忘れないこと。そういう教えは、ベンチャーを起こす時にも非常に役立ちました。ベンチャーというのは、知識などの知力だけでは成り立ちません。対面能力などの人間力がとても必要です。そういった人間力を、お寺で学びました。
―お寺の教えによって、どのような考えを持つようになったのですか。
南部:私がお寺でいちばん学んだことといえば、それは“価値の多様性”ということです。算数で100点を取るのも、100メートルで一番を取るのも同じだけ価値のあることだと。偏差値だけで子供を評価してはいけないということを教えてくれたんです。だから私は学問ができなくても、全く落ち込みませんでした。自分には学問以外に優れている面が必ずあると信じていたからです。そのおかげで私はいつも元気でしたし、いつもすごく自信を持っていました。リーダーの条件として、自分に自信を持っているというのは、とても大事なことです。リーダーは活力のある人でないと務まりません。その活力とは、自分に自信を持ってないと出てこないものです。自分に自信を持っていなければ、エネルギーも生まれてこないし、人を引っ張っていく力も湧いてきません。 私は小さい頃に“価値の多様性”を学んでいたので、勉強が少々できなくても、全然自信をなくさなかった。だから、私がベンチャーを起こそうと考えたのも、“価値の多様性”を早くから認識していたおかげだと思います。
―そのお寺の影響で、大学時代に塾を始めたのですか。
南部:そうです。自分が小さい頃にお寺で教えてもらったことを、今度は自分が子供達に教えたいと思ったんです。勉強中心ではなくて、感性を豊かにする教育をしたかった。そこで大阪の千里ニュータウンにあるマンション群の集会所を借りて、塾を開きました。塾は当初10名くらいの生徒しかいませんでしたが、口コミでその人気が徐々に広がって、1年後には400人もの生徒が集まりました。もちろん勉強も教えましたが、中心は情操教育ですから、土日にみんなでお寺に行ったり、夏休みなどの長期の休みには信州辺りまで遠出して自然に親しみました。子供達の感性を伸ばすことができる教育をこころがけました。
―話は変わりますが、両親はなにをなさっていたのですか。
南部:私の父は化学系の会社を経営していました。接着剤や漂白剤の工場をいくつか所有していたんです。父がサラリーマンではなかったので、私が起業する時は応援してくれました。やはりファミリーの個性は重要だと思います。もし父がお堅い職業に就いていたら、起業に関してはあまり賛成しなかったと思います。新しいことに挑戦することには、非常に寛容な父でした。
―小さい頃の家庭の教育で印象に残っていることはありますか。
南部:小学校3年生の頃、算数の点数がたまたま良かったときがありました。家に帰ると、母は非常に誉めてくれた。そして私は夜遅くに父が帰って来るのを待ちわびて、帰るやいなや、「算数の点数が良かった。誰々くんに勝った、負けた」と言ったんです。そうしたら、父は怒ったんですね。「人と比べて勝った負けたとは何事か!」と。
「たとえ80点をとれたとしても、前のテストが90点ならば、前回よりも下がったんだから、次は頑張れ。たとえ30点だとしても、その前のテストが20点なら、10点上がったんだから素直に喜べ」。父はこう私に言ったんです。つまり人と比べて勝った負けたというのは非常にばかげていることで、勝てば天狗になるし、負ければ妬みやっかみが生まれる。人間にとっていちばん醜いのは、妬みやっかみであると教えてくれました。そういった父の教育のおかげで、私は小さい頃から“人の才能は様々だから、どんな人にも素晴らしいところは必ずある”と考えるようになったんです。勉強ができるだけが能ではない。人柄がいいということや、ピアノがうまい。そんなふうに色々な価値観で物事をみていかないといけない。そういった父からの影響は、とても大きかったと思います。
「たとえ80点をとれたとしても、前のテストが90点ならば、前回よりも下がったんだから、次は頑張れ。たとえ30点だとしても、その前のテストが20点なら、10点上がったんだから素直に喜べ」。父はこう私に言ったんです。つまり人と比べて勝った負けたというのは非常にばかげていることで、勝てば天狗になるし、負ければ妬みやっかみが生まれる。人間にとっていちばん醜いのは、妬みやっかみであると教えてくれました。そういった父の教育のおかげで、私は小さい頃から“人の才能は様々だから、どんな人にも素晴らしいところは必ずある”と考えるようになったんです。勉強ができるだけが能ではない。人柄がいいということや、ピアノがうまい。そんなふうに色々な価値観で物事をみていかないといけない。そういった父からの影響は、とても大きかったと思います。
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