株式会社Teo　代表取締役　片切真人

労働集約型業務を外注して、社員は「コア業務」に専念

―事業内容を教えてください。

　おもにベンチャー企業に対し、単発で仕事を請け負う「スポットワーカー」を紹介する事業を手がけています。たとえば、電動キックボードのシェアサービスを行う企業で、当社が紹介したワーカーが活躍してくれています。車両の貸し出しや返却を行う拠点ごとに、車両の数にばらつきが出ないよう、ワーカーが車両を定期的に移動させる仕事をこなしているのです。また、駐車場のシェアサービスを提供する企業では、新規で駐車場を確保するために、候補となる用地を探す業務をワーカーが担っています。目ぼしい地域を自転車で巡回し、空き地などを写真撮影してクライアントに報告するまでを任されています。

―Teoのスポットワーカー紹介サービスを活用する企業には、どのようなメリットがありますか。

　手間がかかる「労働集約型のノンコア業務」を外注することで、正社員のメンバーが「コア業務」に専念できることです。

　ベンチャー企業にジョインしたメンバーが「思ったよりハードワークだった」という理由で辞めてしまうケースは多いと思います。しかし、「業界の古い体質を変える」「新しいサービスを普及させる」「尊敬できるトップの下で働き自己成長する」といった志を抱いてジョインしたのですから、少しくらい労働負荷がかかっても、耐える覚悟はあったはず。それが心折れてしまうのは、特に負担が大きいのが「ノンコア業務」だからです。「コア業務に時間をさけない」ことが、メンバーのモチベーションを下げている大きな要因の一つだと思います。電動キックボードのシェアサービス運営会社を例に挙げれば、拠点の新設場所の開拓や車両の稼働計画の策定、未来の市場環境分析、サービスの運営方法改善などが、本来、社員が取り組むべきコア業務のはずです。しかし、実際には、拠点間で車両を移動させるノンコア業務まで、社員が担っているのです。

　社員自ら、こうした業務をこなしてくれれば、外注コストは発生しません。しかし、社員のモチベーションが下がり、コア業務の質が低下すれば、企業成長のスピードは遅くなるでしょう。まして、メンバーの退職につながってしまうこともありえる。それを考えるなら、スポットワーカーにノンコア業務を任せることは、有力な選択肢になると考えています。

―Teoのサービスを活用して社員のモチベーションを高めた事例を教えてください。

　シェアリングサービスを提供している、あるベンチャー企業のケースを共有します。それまでは「サービスに不具合がある」「利用方法を教えてほしい」といったユーザーからの問い合わせに対応するカスタマーサポートまで社員が担当していたのです。そこで、当社がカスタマーサポート業務を引き受けました。このときはスポットワーカーの紹介ではなく、BPOの形でしたね。その結果、クライアントの経営者から「創業以来、全社員が年末年始を休むことができたのは初めて。英気を養うことができ、改めて“この新しいサービスを世の中に広めよう”と一致団結し、業績も急上昇しています」と大変、感謝されました。

ワーカーが集まらなければ、引き受けた業務を自ら遂行

―起業のきっかけを教えてください。

　前職の家事代行サービスを提供する会社での経験が大きかったですね。そこでは、家族の介護や子育てなどさまざまな事情で、決まった曜日や時間では勤務できないスタッフが多くいました。業務スキルに優れ、「クライアントに貢献したい」という意欲が高いのに、辞めざるをえなかったスタッフも。その姿を見たとき、「隙間時間を使い、スポットワークという形でもっと自由に働けるサービスがあれば、事情を抱えるスタッフでも勤め続けられて、クライアントにも喜んでもらえるのでは」と考えたのです。実際、Teoを起業した後、大手企業の社員などが、休日を利用した「副業」として、当社のスポットワーカーとなって活躍してくれています。

―片切さんが経営で大事にしている考えを教えてください。

　「あきらめない」ことです。具体的には「引き受けた業務は途中で投げ出さず、必ず遂行する」。スポットワーカー紹介サービスに依頼したのに「ワーカーが集まらなかったので、受注した業務を完遂できません」というケースもあると聞いています。しかし当社では、もしクライアントが必要とする数のワーカーを集めることができなくても、代わりにTeoの社員が自ら業務を担ってでも、必ず仕事を完了させます。時には、私自身がワーカーとして現場で働くこともあります。

　また、ワーカーが行う仕事の質の担保でも妥協しない方針です。当社では、ワーカーに仕事を任せる前に、まず、Teoの社員がその業務を実際にやってみて、現場の状況や業務の手順を十分理解することを鉄則にしています。そのうえで、スポットワーカーに仕事を教え、質の高いサービスを提供できるようにしているのです。こうした姿勢によって、クライアントに「Teoなら必ず期待通りに業務を行ってくれる」という信頼感をもってもらえると考えています。

―今後のビジョンを教えてください。

　「世の中を変える仕事に携わりたい」という使命感をもってベンチャー企業にジョインした社員のみなさんが「本当にやりたい仕事」「やらなければいけない仕事」に集中できるよう、「コア業務以外はすべて請け負える」会社を目指します。ベンチャー企業の困りごとは何でも引き受けられる、頼りがいのある会社に成長したいですね。

　社名のTeo(テオ)は、オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホの弟の名(テオドルス・ファン・ゴッホ)に由来します。画業に専念できるようテオは兄を支え続けました。テオなしではゴッホの傑作の多くは生まれなかったとも言われており、当社は「ベンチャー企業の夢の実現を支える」という意味を社名に込めたのです。

　ベンチャー企業の経営者には、スポットワークという選択肢もあることを知ってほしいですね。当社のサービスを活用していただくことで、設立当時に掲げた夢の実現に近づくお手伝いができるなら、これほどうれしいことはありません。

PROFILE プロフィール

片切真人（かたぎりまさと）プロフィール

1978年、神奈川県生まれ。2000年に大学卒業後、アパレル企業に入社し、営業職などを担当。2005年、家事代行サービス大手の株式会社ベアーズに入社。取締役としてマーケティング、営業推進、新規事業開発など多岐にわたる部門で事業拡大を推進。2024年、株式会社Teoを創業し、代表取締役に就任。

企業情報

設立	2024年3月
事業内容	スポットワーカーの紹介による企業支援（スポットワーカー紹介実績／延べ約1,000名）
URL	https://teo-inc.com/

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株式会社Teo 代表取締役 片切 真人