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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社ジェイノベーション 代表取締役 宮城 建司

「ジャパンブランド」の再興を期す起業家の事業戦略とは

適切なマーケティングさえ行えば、日本の商品は海外を席巻できる

株式会社ジェイノベーション 代表取締役 宮城 建司

東南アジアに進出する日本企業に対するサポートで、実績を重ねているスタートアップがある。東南アジアにおけるマーケティング支援のほか、現地で同社が運営する店舗で実際に商品を販売する支援事業などをワンストップで手がけるジェイノベーションだ。同社代表の宮城氏は、「日本企業には『自分たちの商品は世界に通用する』という自信と誇りをもってほしい」と語る。同氏に、事業の詳細に加え、事業にかける想いや今後のビジョンなどについて聞いた。

世界中に根強く息づく、日本製品に対する信頼感

―事業内容を教えてください。

 日本企業が東南アジアで商品を販売する際のサポートを行っています。具体的には、物流から卸売り、マーケティング、商品プロモーション、現地販売まで、「オールインワン商社」として顧客のニーズに応じたあらゆる支援を手がけています。コロナ禍によって国をまたぐ商品流通が滞っていたこともあり、東南アジア各国では国外の新商品に対するニーズが非常に高まっています。そうした市場環境も相まって、当社の取扱商品はアパレル、美容、食品と多岐にわたります。

―起業のきっかけはなんだったのでしょう。

 2010年代に古着の輸入販売事業に携わりながら海外を飛び回る経験のなかで、「日本企業に、『自分たちの商品は世界に通用する』という自信と誇りをもってほしい」という想いが日に日に強くなっていったからです。かつては、「メイド・イン・ジャパン」というだけで、世界中でさまざまな商品が飛ぶように売れていました。けれども、近年は「日本製」というだけでは売れない状況になっています。実際、海外でスマートフォンといえばAppleやSAMSUNGですし、家電は中国メーカーの商品ばかりというのが実情です。

 しかし同時に、「メイド・イン・ジャパン」は安心・安全というイメージは世界中に根強くあります。日本製であるかのように装って販売されている商品が海外にあふれていることが、その証拠です。そのため、適切なマーケティングを行ったうえで、現地のニーズにマッチした商品を販売しさえすれば、日本の商品は再び世界を席巻できるという確信もありました。そうした想いと確信をもって、日本企業の海外進出をサポートする会社を立ち上げる準備を進めたのです。

―海外進出の支援のなかでも、東南アジアに特化しているのはなぜですか。

 東南アジアには人口6億人を超える市場があり、日本企業が市場開拓する余地はまだまだ大きいと考えたからです。そこで起業に先駆けて、2015年に「三井アウトレットパーク」がマレーシアでオープンする際、その一画で日本の商品を販売する店舗のマネージメントを担う現地のスタートアップにジョイン。そこに2年間ほど勤め、マレーシアならではの商品ニーズやマーケティング、物流、現地スタッフを雇用しての店舗運営などのノウハウを身につけていきました。そうした経験を積み重ね、満を持してマレーシアで会社を立ち上げたのです。

―どのように会社を成長させていったのですか。

 まずは、化粧品をはじめとする日本の商品を買い付け、現地のショッピングモール「Lot10(ロット・テン)伊勢丹」内に構えた自社店舗にて販売を始めました。その後、ちょうど一時帰国していたタイミングでコロナ禍に見舞われました。マレーシアへ戻れなくなってしまったため、日本に滞在しながら東南アジアで商品を販売する方法はないかと考え、越境ECの事業を開始しました。コロナ禍が収束に近づきつつあった1年ほど前には、マレーシアの小売店に日本企業の商品を卸す事業に着手。コロナ禍の影響によって海外商品のニーズが現地で高まっていたこともあり、初年度で販売先を100店舗以上に拡大することができました。そうした実績やSNSを活用したマーケティング手法などが評価され、2022年7月には中小企業庁が実施する「令和4年度当初予算『ジャパンブランド育成支援事業』(※)」の支援パートナーに認定されています。
※令和4年度当初予算「ジャパンブランド育成支援事業」 : 中小企業が海外展開やそれを見据えた全国展開のために、新商品・サービスの開発・改良、ブランディングや、新規販路開拓などを行う際に、その経費の一部を補助する事業。2022年に中小企業庁が実施

現地のニーズにマッチした、商品とプロモーションを選定

―なぜ、事業を順調に拡大できたのでしょうか。

 ポイントは大きく3つあります。1つは現地のニーズにマッチした商品を取り扱ったことです。たとえば、化粧品。日本には四季があり、それに合わせた商品が売られています。しかし、マレーシアは熱帯なので、長時間エアコンにさらされることによって皮脂が多く水分が少ない「混合肌」の人が多いです。そこで、混合肌に適した商品をピックアップして現地で販売するなどしています。2つ目のポイントは、効果的なプロモーションです。現地で人気のインフルエンサーにSNSを活用したプロモーションを依頼するとともに、現地の人たちが日常的に利用するWebメディアに広告を出稿しました。そういったことが可能だったのは、現地でノウハウをしっかり蓄積してきたからこそです。

―3つ目のポイントは、なんでしょう。

 複数の事業者の商品を一度にまとめて現地に輸送し、プロモーションと販売を行うことで、顧客の負担を抑えるようにしている点です。仮に私たちが個別に流通経路やプロモーション手段を用意してしまうと、費用も手間も顧客の負担が大きくなります。その場合、商品の取扱量がある程度大きい事業者でなければ私たちに依頼することは難しいでしょう。当社のビジネスモデルでは、1回の輸送やプロモーション・販売活動で対応する顧客が増えるぶん、交渉や調整は大変になります。しかし、中小企業が多い日本の商品を海外に広めていくためには非常に重要なことだと考え、商品の取扱量が小さい会社でも利用しやすいビジネスモデルの構築にはこだわりました。実際、この点が評価されて、数多くの中小企業から相談や支援依頼を獲得することができています。

―今後の事業展開について教えてください。

 現在は、現地のニーズにマッチした日本企業の商品を1つのブランドとしてプロモーション・販売していく「プライベートブランド事業」の準備を進めています。これを東南アジアの誰もが知っているブランドに育て上げれば、現地での知名度が低い企業の商品でも、消費者に手に取ってもらいやすくなります。それと並行して、拠点拡大も進めていきます。まずは今年度中にシンガポールに進出。その後は年に1ヵ国のペースで、ベトナム、タイ、インドネシアなどに展開していく予定です。

 最終的には、日本企業が海外で商品を販売する際に利用できる「総合プラットフォーム」の構築を計画しています。海外で売りたい商品を登録するだけでマーケティングと販売が自動で行われるうえに、POS機能によって各商品がどこで、どれだけ売れたのかをリアルタイムに把握できるプラットフォームです。そういった日本企業が世界に羽ばたくためのインフラとなる事業を手がけていくことで、「東南アジアで日本の商品を一番売ってくれる会社」を目指します。
PROFILE プロフィール
宮城 建司(みやぎ たけし)プロフィール
1983年、大阪府生まれ。2002年、株式会社ヒューマンフォーラムに入社。販売やバイヤー、SV、経営企画に10年間携わった後、海外販売のベンチャー商社を2社ほど経験し、2017年にマレーシア現地法人JINNOVATION(M) Sdn. Bhd.と株式会社ジェイノベーションを同時に立ち上げ、代表取締役に就任する。
企業情報
設立 2017年5月
資本金 1,300万円
事業内容 雑貨・食品・化粧品・アパレル販売、物流貿易代行、越境EC事業、海外進出コンサルティング、海外メディアコンテンツ事業、海外イベント事業、海外ライセンス事業
URL https://jinnovation.jp/
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