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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

KLab株式会社 代表取締役社長CEO 真田 哲弥

「学生ベンチャー」の先駆者が語る 人材が成長する条件

もがいて這いずりまわって自力で壁を突破せよ!

KLab株式会社 代表取締役社長CEO 真田 哲弥

かつて大学入学と同時に起業、「真田を知らない学生はモグリ」と言われるほど関西のキャンパス界を仕切った男がいる。モバイル端末向けオンラインゲーム事業を中核とするネットベンチャー、KLab代表の真田氏だ。20代は情熱と勢いで次々と起業する一方、会社をツブすという苦い思いも味わった。そして、36歳にしてKLabを創業、同社を売上150億円超の東証一部上場企業に育て上げた。倒れても起き上がり、ついには大きな成功をつかむにいたった原動力はなんだったのか。真田氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信51号(2013年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―真田さんは波乱万丈の起業家人生を歩んできました。ふりかえってみて、ターニングポイントを教えてください。

真田:1997年、携帯電話向け通信技術を開発しているACCESSに入社、会社員として勤務したことです。 それを契機に、自分の人生はガラッと変わりました。わずか1年間ほどでしたけれど、もう後がない状況のなかでの、人生初の会社員生活でした(下記の「真田氏の起業家人生」を参照)。

―学生時代から企業経営をしてきた真田さんは、それまで会社勤めをしたことはいっさいありませんでした。なぜ、方向転換したのですか。

真田:方向転換ではありません。なぜなら、ネットビジネスで起業するため、ACCESSに入社したからです。1996年にヤフーが日本で発足、翌年には楽天が誕生していました。私も初めてインターネットに接した瞬間に「これからはネットの時代だ」と確信。「あれもしたい、これもしたい」とビジネスプランが次々と浮かんできました。しかし、アイデアをカタチにしようにも、その仕組みがサッパリわからない。それで、起業しようにもできなかったんです。だから、ネット技術の知識を習得する手段として、会社勤めを選んだのです。当初は3年計画だったのですが、最初の1年間で大体のことがわかり、1997年にはモバイルコンテンツ事業を主軸とするサイバードを設立しました。

―真田さんの会社勤めは、ベンチャー起業家の間で意外な転身と受け止められていましたね。

真田:真意を知らない人たちは、「宮仕えをするなんて、アイツも堕ちたな」などと、いろいろ論評していたようですね(笑)。もちろん、すぐに起業するという方法もありましたよ。結果を恐れずチャレンジしなければベンチャー企業の成功はない、という信念は当時もいまも変わりません。 でも私は、それまでに2度、起業した会社をツブしていました。さすがに3度目の失敗はできない。ラストチャンスは100%の確率で成功させなければならないんです。ネット技術を学べるなら、会社員になることにためらいはありませんでした。

―大きな成功をつかむため、あえて回り道が必要だったのですね。

真田:そうですね。それに、また学生ベンチャーのノリで起業して成功していたとしても、KLabは今日のような規模にはならなかったでしょう。ひとつのことに腰をすえてじっくり勉強する時間なんて、起業家として突っ走っているときにはありません。それができたのは、会社勤めだったからです。おかげでネット技術の本質を学ぶことができました。目的が明確であれば、回り道は決してムダではないのです。

―会社員になったからこそ学ぶことができたネット技術の本質とはなんですか。

真田:「技術は個人に帰属している」ということです。これはオールドビジネスと対比すればわかりやすいでしょう。

自動車、家電など旧来の産業では、技術は会社に帰属します。なぜなら、最初は社員個人の発想だったとしても、製品化する過程で組織を挙げてアイデアに磨きをかけ、その会社独自の技術に昇華させるプロセスが必要だからです。それは最終的に「特許権」として会社に資産計上されることになります。

一方、ネットの世界においては、ゲームにしろWebサービスにしろ、コンテンツ開発のベースになっているのは、Javaなどのオープンなデファクトスタンダート(標準化技術)。会社規模の大小に関係なく、みんな同じ土俵の上に乗っているんです。

そこで勝ち負けを決めるのはなにか。個人の力量です。だからネットの世界においては「技術は個人のモノ」なんです。

―会社は技術をもっていない、ということですか。

真田:そうです。どれだけすばらしいコンンテンツやサービスを提供していても、技術がある優秀な頭脳が流出すれば、その会社は終わり。これが冷徹な真理です。 だから、ネットビジネスの場合、「あの会社は、いいコンテンツを出すね」と形容するのは間違っています。「あの会社には、いいコンテンツを出す社員がいるね」というのが正しい。「企業はヒトなり」といいますが、その究極の形態がネットビジネスといえるでしょう。「何をやっているか」は、重要ではありません。「優秀な社員がいるのか」「どれだけいるのか」が、最大の競争力なのです。
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