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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社ミライカメラ 代表取締役 石田 史

業界未経験から3DVRコンテンツのリーディング企業をつくり上げた女性起業家の志

注目の撮影技術「マーターポート」を軸に、顧客の「あったらいいな」を形にする

株式会社ミライカメラ 代表取締役 石田 史

世の中でDXが急速に進むなか、『Googleストリートビュー』の屋内版などでも活用される『マーターポート』という360°3DVR撮影技術が注目を集めている。そうしたなか、業界未経験ながら、2017年に『Googleインドアビュー(※)』に関するサービスで起業したのが石田氏だ。マーターポート事業で全国有数の実績を誇るリーディング企業、ミライカメラをつくり上げた同氏に、起業の経緯や事業戦略、経営にかける「想い」について聞いた。

※Googleインドアビュー : オンラインで建物の屋内を見られるサービス。現在は『Googleストリートビュー』に名称を統合

創業以来の制作実績は、500コンテンツを超える

―事業内容を教えてください。

 『マーターポート』を活用したサービスを中心に事業を展開しています。撮影した空間を、パソコンやスマートフォン、タブレット端末上から3D映像で360°見渡せるように編集したコンテンツの提供です。一般的な360°パノラマ画像と異なり、実際に訪れているかのように自由に視点を移動させながら見渡せるうえに、外からの視点で俯瞰することもできる点が特徴です。当社はマーターポート社の認定キャプチャー技術者とGoogleの「ストリートビュー認定フォトグラファー」のライセンスを取得しており、特別な訓練を受けた社員が専用カメラで対象を撮影。その後、専用ソフトで3D化した映像に、文字や画像、映像などを埋め込むといった編集を行います。

―マーターポートは、どのようなシーンで活用されているのでしょう。

 たとえば、観光施設や店舗、企業のオフィスを紹介するコンテンツとしてホームページなどに掲載されています。そのほかにも、空間内の物体を採寸できる機能を活かして設備のサイズを具体的に示せるため、住宅メーカーや不動産会社が営業ツールとして活用するケースも多く見られます。実際、当社では観光施設や住宅展示場から多くの依頼を受け、2017年の創業以来500を超えるコンテンツを制作してきました。これは、中国・四国・九州エリアでトップクラス、全国でも有数の実績だと自負しています。

起業のきっかけは、衝撃を受けた「VRの没入感」

―起業のきっかけを教えてください。

 父が経営者だった影響で、幼いころから漠然と将来は起業したいという想いを抱いていました。しかし、父の苦労も目の当たりにしてきたこともあり、新卒の折には安定した生活を求めて大手化粧品メーカーに就職しました。そこに15年間ほど勤めたのですが、やはり起業して自分の力を試してみたいという想いはくすぶり続けていました。「せっかく起業するなら異業種で自分の力を一から試してみたい」と考えていたタイミングで、『Googleインドアビュー』を通じてマーターポートの魅力を知ったのです。

―どういった点に魅力を感じたのですか。

 スマートフォン1つで、まるで現地に居るかのように屋内の様子を隅々まで確認できる点です。ある日、道案内をした際に向かう先を『Googleインドアビュー』で確認したのですが、そのことを知って大変な衝撃を受けました。そして、『Googleインドアビュー』に使われているのがマーターポートだったのです。事前に中の雰囲気を体感できるので、お店や宿、行楽施設などを選ぶ際の参考になります。さらに、内部の構造やバリアフリー設備についても確認できるため、高齢者や障がい者の方々がお出かけする際にも非常に有用だと感じました。また、お店や施設を運営する側はマーターポートを活用すれば、その魅力を広く発信できます。そのため、「こういったVRコンテンツが『当たり前』に使われるようになれば、世の中がとても便利になる」と考え、『Googleインドアビュー』に関するサービスでの起業を決意したのです。

県主導のプロジェクトで、観光の魅力などを発信

―事業が成長している要因はなんでしょう。

 顧客の「あったらいいな」という要望に応えるべく、さまざまなことにチャレンジし続けた結果だと考えています。たとえば、マーターポートの撮影をきっかけに、ハウスメーカーから「建築現場用のネットワークカメラをより低価格で高品質な製品へと切り替えたい」という相談を受けたことがあります。その際には、すぐさま電気通信事業者の届け出を行い、ネットワークカメラの提供を開始しました。そうやって顧客の「あったらいいな」を実現していくことで築いた信頼関係が、マーターポート事業でのリピート受注や紹介受注にもつながっていると考えています。

 また、山口県が運営を支援するスタートアップ向けのシェアオフィスで起業したご縁もあり、県が主導するプロジェクトにも参画しています。具体的には、山口県が県内の企業を求職者向けに紹介するサイトや、観光スポットの魅力をインバウンド向けに発信するサイトなどで、当社が作成したマーターポートのコンテンツが使われています。最近では古き良き伝統を後世に残していきたいという想いから、マーターポートを活用して、松下村塾や錦帯橋といった文化財のデジタルアーカイブ化にも取り組んでいます。

―今後のビジョンについて教えてください。

 より多くの「あったらいいな」を「当たり前」にしていける会社を目指します。そのためにも、引き続き、マーターポート事業と並行して、顧客の要望に応える事業を多方面で展開していく方針です。その一環として、現在は「後継者がいない」「事業をスピーディに拡大したい」といった悩みや要望に応えるために、M&Aの支援事業を準備しているところです。また、今後は当社もM&Aを含むレバレッジ戦略を加えることで、持続的な成長を実現する計画です。

 起業当初は単に自身の力を試したいと考えていました。しかし、より良いサービスを提供するために撮影やコンテンツ制作の専門家を採用し、組織として動くようになってから、「なにかを仲間とやり遂げる楽しさ」を知ったのです。仲間と共に新しい事業に次々とチャレンジしながら、顧客の「あったらいいな」をかなえていける会社にしていきたいですね。
PROFILE プロフィール
石田 史(いしだ ふみ)プロフィール
1981年、山口県生まれ。大手化粧品メーカー勤務から転身。Googleの「ストリートビュー認定フォトグラファー」のライセンスを取得して2017年に起業。2019年には株式会社ミライカメラを設立した。現在は360°3D VR撮影技術『マーターポート』を活用し、全国で500ヵ所を超える多種多様な施設を3Dデジタル化。同社を全国有数の実績を誇るリーディング企業に成長させた。また、文化財をデジタルアーカイブ化して後世に残す事業も行っている。
企業情報
設立 2017年8月
資本金 3,000万円
従業員数 13名(2023年8月現在)
事業内容 マーターポート3D撮影、Googleストリートビュー、Web制作、動画制作、ネットワークカメラ、 SNS広告・投稿代行、MEO対策、Grow with google、Tips、パーキングペイ正規代理店、コインランドリー運営
URL https://miraicamera.co.jp/
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