ユーザー数2,200万人を擁し、国内最大級の規模を誇るSNS(ソーシャル・ネットワーキング サービス)「mixiミクシィ」。同サービスを運営する株式会社ミクシィは、代表の笠原健治氏が東京大学在学中に設立した企業である。なぜミクシィは、これだけ目覚ましい成長を遂げることができたのか。そして変化の激しいインターネットの世界で、同社は今後どこへ向かうのか。今回は代表の笠原氏に、起業の経緯、同社の成長理由、今後のビジョンなどを聞いた。
※下記はベンチャー通信43号(2011年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―笠原さんの起業の経緯を教えてください。
笠原:大学1、2年生のころにソフトバンクやH.I.S.が上場したこともあり、孫さんや澤田さんなど、多くの起業家がメディアで頻繁に取り上げられていました。そういった情報に触れる中で、初めて「起業家という生き方」を意識するようになりました。転機となったのは、大学3年生のとき。所属していた経営戦略のゼミでは、マイクロソフト、アップル、デルなど、米国のIT企業が多く取り上げられていました。今や世界的な有名企業の創業者であるビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、マイケル・デルたちは、自分と同じくらいの年齢のとき、一人か数人で自宅やガレージのような小さなところから起業している。ならば自分にも可能性があるのではないか―。そう思ったのが起業のきっかけでした。
―そして在学中に起業にチャレンジしたわけですね。
笠原:大学3年生のときに、「Find Job !」という求人情報サイトを立ち上げました。当時、私は日経新聞と日経産業新聞をとっていたのですが、それらを読んでいると、インターネットに関する会社がどんどん設立されており、今まさしく新たに「インターネット産業」が生まれつつあると感じました。ですから、自分にも成功の可能性があるとしたら、この新しい産業で起業することだと思ったんです。
―なぜ求人情報サイトを立ち上げたのですか?
笠原:きっかけは、アルバイト先の上司が「求人情報誌に広告を出しても人が集まらない」と悩んでいたことでした。当時、求人情報を扱う大手人材会社も、インターネットへの展開を始めていたのですが、どのサイトを見ても、ページを辿っていくと「詳しくは○日発売の情報誌をご覧ください」となっていた。つまり、Webサイトだけでは完結していなかったんですね。「情報誌」という強い媒体を持っているがゆえに、インターネットへの対応は遅れるだろう。今インターネットでの求人情報サイトをつくれば、成功するのではないかと思ったのです。当時の私はWebサイトをつくったことがなく、パソコンすら持っていませんでした。しかし、今すぐ始めなければチャンスを逃してしまうかもしれないと、急いで、お金を貯め、パソコンを買い、独学でWebサイトを立ち上げました。その後、自ら企業に営業電話をかけ、求人広告を出稿してもらえるように依頼していきました。本当にゼロから手探りでビジネスを立ち上げていきましたね。
―その後、「Find Job !」は順調に成長したのですか。
笠原:立ち上げ当初は苦労しましたが、一度軌道に乗ると順調に成長していきました。ただ、求人の分野では、やはり大手人材会社が圧倒的に力を持っている。あるいは、ヤフーとリクルートが提携するという噂話も出始めていました。そこで「Find Job !」に次ぐ新たな事業の柱を模索していたところ、出会ったのがSNSだったのです。2003年当時、米国で「Friendster」というSNSがスタートしていたものの、日本にはまだ存在していませんでした。それを初めて使ってみたとき、今までにない新しいネットサービス、つまり「人と人のつながり」という普遍的なテーマを持っていることにとても魅力を感じました。ただ、そのサービスは人と人がつながるだけでしたので、それだけでは日々使い続けてもらえない。日々使い続けてもらえなければビジネスとして成り立たない。日々使い続けてもらえる要素は「コミュニケーション」だと考え、人と人とのつながりの上に、日記などのコミュニケーションサービスを加え、新規事業としてSNSを開始しようと思ったのです。
―最初は社内に反対の声もあったそうですね。
笠原:今までにないネットサービスなので、サービスのイメージが湧きづらかったのだと思います。だから社内からは「怪しいサービスに見られてしまうんじゃないか」とか、「社内リソースが分散されてしまう」など、不安視する声もあったのです。ただ、私には「SNSは大きなポテンシャルを秘めたサービスだ」という確信がありました。そこで社員を粘り強く説得し、2004年に「mixi」のリリースを迎えることができました。
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