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飲食・食品業界の起業家インタビュー

株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実

飲食・食品定食屋ブームの火付け役

株式会社大戸屋 代表取締役社長 三森 久実

※下記はベンチャー通信7号(2003年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―「大戸屋」を起業するまでの経緯をお聞かせください。

三森:新宿で修行を始めてから半年ほど経った頃、突然養父が体調を崩してしまったんです。いったん家に戻るよう言われた私は、職場に休職願を出しました。それから一年半くらいで養父は亡くなりました。同じころ、養父の看病をしていた養母も、疲れのせいで病気になってしまったのです。これはもう自分がお店を継ぐしかない。養父のことは尊敬していました。養父の残したものをこの自分の手で守っていくしかないんだ。こうして、20歳の時に「大戸屋食堂」を継ぐことになったのです。

―急に店を継ぐことになって、やはり不安はあったのですか。

三森:養父はよく遊んでいたわりに、店の借金はほとんど皆無でした。その上、キャッシュで数千万円あまりのお金があったので、資金面では不安はありませんでしたね。しかし、問題は人材の面にあったのです。当時、大戸屋の従業員の多くは、いわゆる流れ者。賃金の安さを理由に包丁で脅されたこともありました。それに、酔っ払っていても平気で店に来るし、無断欠勤なんて当たり前。従業員の間でもけんかが絶えず、寮の前にはいつもパトカーか救急車が止まっている。そんな状態からのスタートでした。

―実際に養父から店を引き継いでどうでしたか。

三森:私は、経営に関してはズブの素人でしたが、店にはいつも溢れんばかりのお客さんが来てくれていました。亡き養父の信用と実績でとにかく繁盛していたんです。私はなんとなくチェーン展開できるかなと思うようになりました。とは言っても、まずは資金が必要でした。私は遊びたいのをこらえ、朝から晩まで休む間もなく必死になって働き、資金をためました。そして、チェーン1号店を高田馬場に、2号店を吉祥寺に出店することができたのです。こうして大戸屋のチェーン展開はなんとか成功を収めたんですが、そこで調子に乗った私は大戸屋以外にも大手外食のフランチャイズにも手を出してしまったんです。しかし、それはことごとく失敗。大戸屋は、やはり亡き養父の信用とノウハウがあったからこそ若造の私でも成功できたわけなんですが、当時の私はその事をわかっていませんでした。この失敗は、本業である大戸屋の資金繰りを圧迫し、私は再出発を余儀なくされたのでした。

―再出発ということで、今のような"女性が気軽に入れる定食屋"というコンセプトのお店を始めたのですか。

三森:そうですね。しかし、決定的なきっかけは平成4年の秋のこと。なんと、吉祥寺店が全焼してしまったのです。幸いにもけが人等は出なかったんですが、これにはカウンターパンチをくらったようなショックを受けました。しかし、落ち込んでいてもしょうがない。私は、これをきっかけに吉祥寺店を新しいコンセプトのお店にしようと考えました。それが、今の大戸屋のような「若い女性も気軽に入れる定食屋」というものです。その狙いは的中し、吉祥寺店は驚くほど女性客の多い店となったのです。このとき、大戸屋の進んでいく道はこれしかないと確信しました。こうして、今のような大戸屋が誕生したわけです。

―話は変わりますが、外食産業で成功する秘訣は何でしょうか。

三森:外食産業で起業したいんだったら、どれだけ自分が現場にいることができるかが勝負ですよね。365日、寝る時間以外はずっと店にいても耐えられる人じゃないとダメですね。休暇も取らず、家族を犠牲にしてでも、朝から晩まで自ら厨房に立って頑張れる人が成功するんです。それができないんだったら、飲食店なんて絶対にやらない方がいい。外食産業っていうのは、「現場」が最も大変な上にいちばん大切なんですよ。だからこそ、そのトップである社長が現場を知らないとうまくいかないんですよね。社長が現場の苦しみを知っているからこそ、従業員もついてくるんです。「社長も自分たちと同じ苦しみを味わっているんだ」と従業員が思っていれば、自然と同志的な気持ちが芽生えて信頼関係ができるんですよね。すると、社長の持っている「志」を共有できる従業員の数だけ、新しい店ができるじゃないですか。こうやって飲食店は成長していくのです。

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