INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
ソニー前CEOがベンチャー育成に挑む
ベンチャーこそ、ルールブレイカーたれ
SBIホールディングス株式会社 代表取締役 北尾 吉孝
※下記はベンチャー通信24号(2007年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―なるほど。起業には、ビジネス上の表面的なテクニックではなく、"志"が何よりも大事だと。
北尾:そうです。京セラ創業者の稲盛和夫氏が、「人生の方程式」として、「人生や仕事の結果は、考え方×能力×情熱」だとおっしゃっています。考え方が間違っている人だと、考え方の部分がマイナスになり、どんなに能力があっても、どんなに情熱があっても、あればある程に結果は大きなマイナスになってしまう。逆に正しい考え方を持っていれば、結果はすべてプラスになるということです。
だから何よりも大事なのは、その人が正しい考え方を持っているかどうかということ。昨今の村上さんや堀江さんは考え方が間違っていたから、結果も大きなマイナスになってしまった。つまり社会に大きな迷惑をかけてしまったんです。彼らは能力と情熱が大きかった分、社会に対するマイナスもすごく大きなものになってしまった。最近のベンチャー企業の経営者の中には、比較的うすっぺらい、倫理的な価値観が欠如した輩が多いと思いますね。そんな人は起業家として絶対に成功しないし、成功させてはいけないんです。
やはり起業家なら、世のため人のために会社を起こし、正しいことをする人物でないといけません。ドラッカーも、「経営とは、人を通じて正しいことをすることだ」と言っています。まさに至言ですね。ビジネスモデルが優れていることは言うに及ばず、事業の根幹となるのは、やはり経営者の"徳"以外の何物でもない。そこを忘れてはいけません。
だから何よりも大事なのは、その人が正しい考え方を持っているかどうかということ。昨今の村上さんや堀江さんは考え方が間違っていたから、結果も大きなマイナスになってしまった。つまり社会に大きな迷惑をかけてしまったんです。彼らは能力と情熱が大きかった分、社会に対するマイナスもすごく大きなものになってしまった。最近のベンチャー企業の経営者の中には、比較的うすっぺらい、倫理的な価値観が欠如した輩が多いと思いますね。そんな人は起業家として絶対に成功しないし、成功させてはいけないんです。
やはり起業家なら、世のため人のために会社を起こし、正しいことをする人物でないといけません。ドラッカーも、「経営とは、人を通じて正しいことをすることだ」と言っています。まさに至言ですね。ビジネスモデルが優れていることは言うに及ばず、事業の根幹となるのは、やはり経営者の"徳"以外の何物でもない。そこを忘れてはいけません。
―最近ベンチャーと言うと、すぐにお金儲けのイメージに直結している気がします。
北尾:悲しいことです。戦前の日本の教育では、人間学の教育というのがあったんです。人としていかに生きるべきかを学ぶ場があった。でも、戦後になって、そういう教育もなくなり、しかも家庭でのしつけもない。学校のテストさえ良ければ、子供は学校でも家庭でも褒められる。でも、大事なのは、テストの点数よりも、人間としての品位なんです。どれだけ優秀な子供でも、間違った考え方を持っていれば、それは叱り飛ばさなければいけない。そこが無くなってしまったんです。
―なぜ無くなったのですか?
北尾:それは戦後のアメリカの占領政策によって、日本が弱体化させられたからです。アメリカは、戦争を通して日本人の精神力の強さを思い知った。神風特攻隊や人間魚雷回天など、日本人の精神力の強さに心底驚いたんです。そこでマッカーサーをはじめとしたアメリカ占領軍が、日本人の精神の弱体化のため、教育を今のような"誇りなき教育"に変えたんです。
近代日本資本主義の父とも呼ばれ、生涯で500社以上の会社を創った渋沢栄一氏は、"右手にソロバン、左手に論語"と言っていました。常に倫理的価値観を持ちながら、一方で科学的経営も同時に実践することの大切さを説いていたんです。最近のベンチャー経営者と呼ばれる人たちの中には、"志"を自らの"野心"と履き違えて、勘違いしているような輩が多い。そんな経営者は、本物の事業経営者とは呼べないと思いますね。
一時期、堀江さんが世の中で脚光を浴びた時がありましたが、僕は本当に信じられなかった。マスコミも財界も、こぞって彼を持ち上げた。日本中が狂っていたとしか言いようがない。僕は彼がやったこと、例えば1対100の株式分割などは、本当に許せない行為だと思っていましたから、証券市場の清冽な地下水を汚す行為だと思って、義憤を覚えずにはいられなかった。だからフジテレビ買収話の時、僕は立ち上がったんです。しかし、僕が立ち上がった意図は、マスコミを通じて世の中の人には全く理解されなかった。今の日本の精神文化のお粗末さにはビックリしましたね。
最近の日本のテレビ番組は、子供向けの暴力番組など本当にくだらないものばかり。一億総白痴化への道を歩んでると思います。またニュース番組では、実の親が子供に虐待するなんていう信じられないニュースが流れる。そんな親を生み出したのは、日本の教育がダメだからです。人としていかに生きるべきかを教えていれば、そんな親になることなんてないでしょう。
近代日本資本主義の父とも呼ばれ、生涯で500社以上の会社を創った渋沢栄一氏は、"右手にソロバン、左手に論語"と言っていました。常に倫理的価値観を持ちながら、一方で科学的経営も同時に実践することの大切さを説いていたんです。最近のベンチャー経営者と呼ばれる人たちの中には、"志"を自らの"野心"と履き違えて、勘違いしているような輩が多い。そんな経営者は、本物の事業経営者とは呼べないと思いますね。
一時期、堀江さんが世の中で脚光を浴びた時がありましたが、僕は本当に信じられなかった。マスコミも財界も、こぞって彼を持ち上げた。日本中が狂っていたとしか言いようがない。僕は彼がやったこと、例えば1対100の株式分割などは、本当に許せない行為だと思っていましたから、証券市場の清冽な地下水を汚す行為だと思って、義憤を覚えずにはいられなかった。だからフジテレビ買収話の時、僕は立ち上がったんです。しかし、僕が立ち上がった意図は、マスコミを通じて世の中の人には全く理解されなかった。今の日本の精神文化のお粗末さにはビックリしましたね。
最近の日本のテレビ番組は、子供向けの暴力番組など本当にくだらないものばかり。一億総白痴化への道を歩んでると思います。またニュース番組では、実の親が子供に虐待するなんていう信じられないニュースが流れる。そんな親を生み出したのは、日本の教育がダメだからです。人としていかに生きるべきかを教えていれば、そんな親になることなんてないでしょう。
―話は変わりますが、ソフトバンクの孫社長については、どう思われますか?
北尾:天才だと思いますよ。孫さんの集中力は本当にスゴイ。でも、天才が最後まで生き残るかどうかは分かりません。経営者は晩年に老醜をさらしてはいけませんから、「足るを知る」ということが大事だと思います。僕が野村證券を辞めてソフトバンクに行くと決めた時に、僕が尊敬しているイトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊さんのところに報告に行ったんです。そしたら、まず伊藤さんに「北尾君が辞めたら、野村證券に誰がいるというんだ」って言われました。
しばらく沈黙した後に続けて、「で、どこに行くの」と聞かれたんで、「ソフトバンクという会社に行こうと思っています」と僕は言いました。それを聞いた伊藤さんは、「あっ、孫君のところか。それならいいね」と。「ご存知なんですか?」と聞くと、「孫君は天才だよ。でも、重大な欠陥があるんだよ」と伊藤さんが言う。
僕は思わず、「欠陥とは何でしょうか?」と聞きました。そして伊藤さんは、「孫君は事業欲が強すぎるんだよ」と言われたんです。さらに「まあ、北尾君なら孫君を止めることができるかもしれない。いいコンビになるよ」とも言われました。はじめ伊藤さんが言われる「事業欲が強すぎる」の意味がよく分かりませんでしたが、入社して2ヶ月もしないうちにその意味が分かりましたね(笑)。さすが伊藤さんです。その慧眼には驚きました。ダイエー創業者の中内さんもそうでしたが、どんなに商売の天才でも、事業欲が強すぎて、晩年まで事業をして失敗するケースもある。孫さんも“止まるを知る”、“足るを知る”ということが鍵になると思いますね。
しばらく沈黙した後に続けて、「で、どこに行くの」と聞かれたんで、「ソフトバンクという会社に行こうと思っています」と僕は言いました。それを聞いた伊藤さんは、「あっ、孫君のところか。それならいいね」と。「ご存知なんですか?」と聞くと、「孫君は天才だよ。でも、重大な欠陥があるんだよ」と伊藤さんが言う。
僕は思わず、「欠陥とは何でしょうか?」と聞きました。そして伊藤さんは、「孫君は事業欲が強すぎるんだよ」と言われたんです。さらに「まあ、北尾君なら孫君を止めることができるかもしれない。いいコンビになるよ」とも言われました。はじめ伊藤さんが言われる「事業欲が強すぎる」の意味がよく分かりませんでしたが、入社して2ヶ月もしないうちにその意味が分かりましたね(笑)。さすが伊藤さんです。その慧眼には驚きました。ダイエー創業者の中内さんもそうでしたが、どんなに商売の天才でも、事業欲が強すぎて、晩年まで事業をして失敗するケースもある。孫さんも“止まるを知る”、“足るを知る”ということが鍵になると思いますね。
―最後に若い読者にメッセージを下さい。
北尾:まずは人間学を学んで、徳を積んでほしい。そして奥深い人間になってください。せっかくこの世に生まれてきたのだから、自分自身の成功のためだけに生きるのではなく、世のため人のためという“志”を持ってほしい。最近ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなどのアメリカの実業家が、莫大な額の個人資産を慈善事業に寄付することを決めました。日本の起業家も、これを見習ってほしいと思いますね。
PROFILE
プロフィール
北尾 吉孝(きたお よしたか)プロフィール
1951年、兵庫県神戸市生まれ。1974年、慶応義塾大学経済学部卒業、野村証券入社。ケンブリッジ大学経済学部へ留学後、世界を舞台に活躍。また企業のM&Aや株式公開などに腕をふるう。1995年、孫正義社長に招へいされ、ソフトバンクに常務取締役として入社し、ソフトバンクグループの急成長を支える。2005年、ソフトバンク取締役を退任。現在は、SBIホールディングスの代表取締役CEO。
企業情報
設立 | 平成11年7月8日 |
---|---|
資本金 | 542億2,910万9,209円 |
従業員数 | 1,375名(連結ベース:2006年9月30日現在) |
事業内容 | 株式等の保有を通じた企業グループの統括・運営等 |
URL | http://www.sbigroup.co.jp/ |
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