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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社スタートトゥデイ 代表取締役CEO 前澤 友作

反骨精神を持ち、常識をぶち壊せ

株式会社スタートトゥデイ 代表取締役CEO 前澤 友作

※下記はベンチャー通信42号(2010年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―ここからは前澤さんの経営論やベンチャー論を聞きたいと思います。御社は1998年の設立以来、増収増益を続けており、2010年3月期の年商は170億円を超えました。御社が目覚ましい成長を続けている理由を教えてください。

前澤:自分たちが楽しめる仕事をしているからです。僕たちは洋服が好き。そして、一緒に働いている洋服が好きな“仲間”が好き。誤解を恐れずに言えば、僕たちは趣味の延長でビジネスをしています。それが人の役に立っているから、今の成長につながっているのではないかと思います。実際、僕たちは「一緒に儲けましょう」なんて営業はしていません。スタッフが自分の好きなアパレルブランドに営業に行き、自分自身の情熱を伝える。「御社の商品が好きなので、多くの人に届けたい」と。これは僕が輸入レコードを販売していた頃の想いと同じです。そうやって、「ZOZOTOWN」に参加してもらえるショップやブランドを一つずつ増やしてきました。

―前澤さんは元ミュージシャンですが、音楽と経営に共通点はありますか。

前澤:ありますよ。たとえば、音楽ではリズムが重要です。1曲の歌はイントロから始まり、Aメロ、Bメロへと展開していく。そしてサビで盛り上げて、最後に収束させる。つまり全体のバランスをとりながら、数分の限られた時間の中で起承転結をつくる能力が必要なんです。これはビジネスでも同じだと思います。たとえば、資料を作るときもリズムが大事です。資料にも1曲の歌のようなリズムがなければ、読む人に伝わりません。たとえ文字の意味が伝わったとしても、心に訴えかけることはできないでしょう。また営業トークやオフィスデザインにおいても、リズムは大事だと思います。実際、当社のオフィスは直線的でリズミカルなデザインにしています。その他にも、音楽と経営の共通点があります。それはメンバー間の信頼関係が大切なこと。信頼関係がなければ、同じ目標に向かって協力しあうことはできません。それは4人のバンドでも270人の会社でも同じです。

―御社は新卒採用にも積極的に取り組んでいます。学生にとって、ベンチャー企業で働く魅力は何でしょうか。

前澤:経営に近い場所で働けること、若い仲間が多いことでしょうね。もちろん大企業と比べれば、リスクは高いかもしれません。でも、たとえ入社したベンチャー企業がうまくいかなくても、貴重な経験にはなる。だから、一度ぐらいベンチャー企業で働いてもいいと思います。ただ「ベンチャー企業」という言葉の定義が難しいですね。僕自身、「ウチはベンチャー企業です」と名乗ったことはありません。そもそも会社とは、常に革新しながら人や世界のために商品・サービスを生み出す公器だと思います。そういった意味では、大企業も老舗企業も「ベンチャー企業」になりえます。企業規模や設立年数は関係ありません。

―海外と比べて、日本は起業を目指す若者が少ないと言われています。この状況について、前澤さんはどう思いますか。

前澤:そんなに問題ないと思います。何も全部自分で新しいことをする必要はありません。先人の方々がやったことをアレンジするのも立派な仕事です。単に起業を奨励するのではなく、本当にやりたいことがある人が起業する方がいいと思います。だって、世の中には似たようなサービスを提供している会社がたくさんるでしょう?そんなにたくさん同じような会社はいらないと思います。

 そもそも、起業の成功率は非常に低いんです。たとえば、当社が2001年にこのビルのインキュベーション施設に移転したとき、すでにたくさんのベンチャー企業が入居していました。あれから10年近く経ち、いま残っている会社は数えるほど。拡大移転した会社もあるかもしれませんが、ほとんどはくなってしまったのでしょう。だから、軽い気持ちで起業してしまうと、なかなか継続が難しいと思いますね。

―成功する起業家は数少ないと。他に起業家に必要な資質はありますか。

前澤:センスと反骨精神ですね。センスを具体的に説明するのは難しいですが、「ミクロとマクロの視点を併せ持っている人」はセンスがいいと思います。まずミクロの視点とは、人の気持ちや物事の些細な変化に気づく視点のことです。そしてマクロの視点とは、時代や世界全体の大きな流れを見据えた視点のこと。この2つの視点を併せ持つ人は、起業家に向いていると思います。でも、ほとんどの人はミクロの視点しか持っていない。いわゆる「木を見て森を見ず」の状態です。やはり現場を細部まで理解したうえで、大局的な視点を持たなければいけません。

―なるほど。では反骨精神について、もう少し詳しく教えてください。なぜ起業家には反骨精神が必要なのでしょうか。

前澤:反骨精神とは、あらゆることを疑い、立ち向かう精神です。僕は常に常識を疑っています。政治、経済、社会、あらゆるルールやシステムを疑っている。なぜ、そんなルールが決まっているのか?いったい誰が決めたのか?本当にみんなの幸せに役立っているのか?このような反骨精神を持っていれば、きっと何かを変えたくなるはずです。「こりゃあ、ねぇだろう」と不満に思うことがたくさんあればあるほど、新しい発想やイノベーションが生まれやすい。そんな人が起業家に向いていると思います。世の中に何の不満もなければ、イノベーションを生み出すことはできません。

―最後に、若い読者へのメッセージをください。

前澤:自分が疑問に思っていることに対して、もっと反発してほしいですね。反戦運動でも何でもいいもし僕が大学に進学していたら、絶対に学生運動をやっていたと思いますよ。学生にはそれぐらいのパワーが欲しいですね。なんか僕の目からは、今の学生は社会のレールに沿った“いい子ちゃん”に見えるんですよ。たしかに、社会のレールに沿って生きるのはラクかもしれません。日本は平和で豊かな国ですから。でも、社会のルールや常識に反発してみると、もっと人生がおもしろくなるはずです。だから反骨精神を持って、ヤンチャな学生生活を送ってください。
PROFILE プロフィール
前澤 友作(まえざわ ゆうさく)プロフィール
1975年、千葉県生まれ。早稲田実業高校在学中にインディーズバンドを結成。高校を卒業後、音楽活動の一環で半年間渡米。1995年、輸入レコード・CDのカタログ通販ビジネスを自宅にて創業。1998年に有限会社スタート・トゥデイを設立し、代表取締役に就任。2000年にCDのカタログ通販をオンラインショップ化し、株式会社スタートトゥデイに改組。同年10月、ストリート系アパレルを販売するオリジナルセレクトショップ「EPROZE」をオープン。同年に自身のバンドはメジャーデビューを果たすも、2001年にバンド活動を休止。2004年に17店のオンラインセレクトショップを統合し、「ZOZOTOWN」をオープン。2007年10月、ファッションを中心にショッピング・各種情報サービスを展開するファッション総合サイト「ZOZORESORT」をスタート。同年12月に東証マザーズへ上場を果たす。
企業情報
設立 1998年5月21日
資本金 13億5,799万円(2010年6月末日時点)
売上高 171億5,900万円(2010年3月末)
従業員数 269名(アルバイト含む/2010年6月末日時点)
事業内容 1. 想像と創造のインターネット上のリゾート「ZOZORESORT」の運営・管理
2. インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」・「ZOZOVILLA」の運営・管理
3. ファッションショップ検索ナビゲーションサイト「ZOZONAVI」の運営・管理
4. メッセージ配信サービス「ZOZOARIGATO」の運営・管理
5. 質問回答掲示板サービス「ZOZOQ&A」の運営・管理
6. PC壁紙・携帯待受画像ダウンロードサービス「ZOZOGALLERY」の運営・管理
7. 情報発信サイト「ZOZOPEOPLE」の運営・管理
8. BtoB事業「アパレルメーカー自社ECサイト運営支援」
URL http://www.starttoday.jp/
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