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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田 晋

4000万ユーザーの支持に安住せず新領域に挑む開拓者

技術と感性を高いレベルで融合させた 企業が勝つ時代です

株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田 晋

※下記はベンチャー通信60号(2015年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

若い人が中心になれる ネットの登場がすべてを変えた

―サイバーエージェントは設立から17年。2015年9月期売上高は2400億円を見込むまでに成長しました。この間、ベンチャー起業をめぐる環境や起業家の資質はどう変わりましたか。

 服装が変わりましたね(笑)。昔のベンチャー起業家は、着なれないスーツを着て、日本社会のなかで上手に立ち回る必要がありました。ベンチャー起業家は新しい領域を開拓し、世の中を変革するもの。そうはいっても、私が起業したころは、まだまだ既存の業界のなかで自社の成長する余地を見つけなければいけない環境だった。ですから、先輩経営者に支援してもらえる起業家が成功していました。

 しかし、インターネットの出現がすべてを変えました。ゼロから新しい市場とサービスを創造していくのだから若い人に無限のチャンスがある。今の起業家はシリコンバレーのIT起業家たちのようにノーネクタイの人も増えています。私自身、「インターネットという新しい産業で、若い人が中心となる会社をつくり、あとに続く人たちのロールモデルになるんだ」という意識でやってきました。それは達成できたと自負しています。

 逆に当時、インターネット分野に参入した大企業がうまくいかなかったのは過去の成功体験にとらわれ、新しいことができなかったからです。

―ベンチャー企業の資金調達の面でも大きく変わったと思います。

 はい。以前は「日本とシリコンバレーの違いは、ベンチャーへの資金供給量の差」といわれました。しかし、今は国内でも十分な資金調達ができる環境ができていると思います。

 ただし、今のベンチャー投資をめぐる状況は明らかにバブルでしょう。ベンチャー起業のラッシュになるような環境にないのに、資金だけが投じられている。振り返れば「ネット回線がブロードバンド化した」「スマホの普及が一気に進んだ」とか、ベンチャーの事業機会が一気に増える時期がありました。ガラケーからスマホに変わって、アプリを提供する会社が一気に伸びたように。今後も、そういう時期は必ずめぐってきます。でも、今は違います。

―今は起業するのにいい時期ではないのでしょうか。

 正直、事業機会を探すうえで、今は良いタイミングではありません。自分のタイミングで起業して、自滅する人がとても多いように思います。ただ、個人によって事情が違うので、客観的なタイミングと自分のタイミングと、勝負の時期を見極めるのが大事です。たとえば、若いうちのほうが未知の領域にチャレンジできるし、周囲も応援してくれやすいというのもあります。

 志があって、「やってみたい」と思うのならば、やってみたらいいと思います。経営というものを知るのに、経営学を学ぶというのは回り道。自分で起業するか、メンバーが少なくて重要な仕事をまかせてもらえそうな会社や新しいことに挑戦しようとしている会社に入って、自分でやってみる。そうして身につけるのがいちばん早いはずです。

いちど就職して組織を学び それから起業するのもアリ

―サイバーエージェントは新卒入社から間もない人材でも子会社の社長などに抜擢していて、「自分でやってみる」ことができる会社です。藤田さんが抜擢の対象にする人材の条件を教えてください。

「相当にがんばりそうだ」と思える人材かどうか。やる気があって、成功するまでやり抜く覚悟があるなら、まかせています。やってみないとわからないので、どういうタイプがうまくいくか先入観を持たないようにしています。それに若い人材は成長が早く、1年経つと見違えるように変わります。だから、あまり現在の知識や経験、能力は関係ない。結局、やる気と覚悟につきます。

―ベンチャーへの就職や起業に関心のある学生にメッセージをお願いします。

 すぐ起業するよりも、いちど就職したほうがいいかもしれません。私自身がそうでした。ベンチャー企業に入って、組織というもののあり方を内部から見ることができた。組織というものがどうつくられているのか、先人の知恵を学んだわけです。それに、社会人としての常識も身につきました。

 そのことが起業してから、つねに地に足をつけ、身の丈にあった経営を貫くことができたひとつの要因になったと思います。それは、元ライブドア代表の堀江貴文さんを見ていて、そう思いましたね。彼は私と同じぐらいの世代ですが、起業したのは私より1年早い。学生起業家だったからです。組織を回していく先人の知恵を学ぶ機会も、社会人の常識を身につける機会もあまりないまま、会社を立ち上げた。そのことが、後のライブドア事件の失敗につながった大きな要因のひとつだと思います。

 だから、まずはベンチャー企業に就職するのもひとつの方法です。そこで仕事をまかされて、自分で事業を動かしていくことを経験する。そのうえで、新たな事業機会が一気に増えるようなタイミングで、起業したらいいと思いますよ。
PROFILE プロフィール
藤田 晋(ふじた すすむ)プロフィール
1973年、福井県生まれ。1997年に青山学院大学経営学部を卒業後、株式会社インテリジェンスに入社し、営業に携わる。1998年に株式会社サイバーエージェントを設立し、代表取締役社長に就任。2000年3月に、当時の史上最年少(26歳)で東証マザーズに株式上場を果たす。著書に『渋谷ではたらく社長の告白』『起業家』(どちらも幻冬舎)などがある
企業情報
設立 1998年3月
資本金 72億300万円(2015年3月末現在)
売上高 2,052億3,400万円(2014年9月期:連結)
従業員数 3,059名(2014年9月末現在:連結)
事業内容 Ameba事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、メディアその他事業、投資育成事業
URL http://www.cyberagent.co.jp/
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