INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
学生時代から活躍してきた起業家からの経験的アドバイス
マネジメントは後回し でいい まず「リーダーシップ」 を学べ
株式会社じげん 代表取締役社長 平尾 丈
創業から2016年3月期まで9期連続の増収増益を達成した「じげん」。同社は2021年3月期までに売上高を3倍増にすることなどを目標とした「5ヵ年計画」を発表、成長スピードを加速させている。そうした同社の代表である平尾氏は、大学在学中から2社のITベンチャーを経営するなど、早くから起業家として活躍してきた。自身の経験を通じて、若くして活躍する条件とは何かを同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信65号(2016年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
20 代でリーダーシップをもて
―平尾さんは学生時代に起業を2度、経験しました。起業への強い想いはどのように生まれたのですか。
祖父が起業家だった影響で、幼い頃から起業への興味がありました。最初のターニングポイントは、学生起業家を扱ったテレビ番組を偶然、見たことでした。その学生起業家に触発され、その後を追うように慶應義塾大学SFCに進学するのですが、大学4年間はまさに起業にすべてをかけました。
学ぶ環境にも周囲の仲間にも恵まれ、多くのビジネスモデルについても考えてきました。そのなかで学んだ最も重要なことは、経営者に必要なコンピテンシーであるリーダーシップだったと思っています。
学ぶ環境にも周囲の仲間にも恵まれ、多くのビジネスモデルについても考えてきました。そのなかで学んだ最も重要なことは、経営者に必要なコンピテンシーであるリーダーシップだったと思っています。
―なぜ、リーダーシップが必要だと。
起業もその後の会社経営も、ひとりではなにもできないからです。経営者に必要なのは、優秀な人材をひきつける能力です。必要な人材であれば、自分と違う考えをもった人物であっても一緒に働いてもらわなければならない。その際に必要なのがリーダーシップ。そのことを学生時代に実践的かつ徹底的に学ぶことができました。
―平尾さん自身が20代で活躍できた要因もリーダーシップにあるんですか。
大きな要因だとは思います。組織をまとめる経営者に必要なものとして、リーダーシップのほかに、マネジメントがありますが、このふたつは似て非なるもの。マネジメントはいつ学んでも手遅れということはありません。
しかし、リーダーシップは違う。早い人は幼少期からさまざまな体験を経てリーダーシップを身につけていく。その経験は拡大再生産され、リーダーシップを発揮した経験がない人とは、どんどん差がついていく。遅くとも20代でリーダーシップを身につける経験をしていないと、ビジネス人生で活躍することはむずかしいでしょうね。
しかし、リーダーシップは違う。早い人は幼少期からさまざまな体験を経てリーダーシップを身につけていく。その経験は拡大再生産され、リーダーシップを発揮した経験がない人とは、どんどん差がついていく。遅くとも20代でリーダーシップを身につける経験をしていないと、ビジネス人生で活躍することはむずかしいでしょうね。
会社に身を任せるな
―やはり若さは大きな強みですか。
若さがすなわち強みかと問われれば、そうとは思いません。若さとは、経験不足という弱みを埋めるための機会に過ぎません。若いこと自体は、強みでもなんでもない。
だからと言って、経験が若さに勝るとも限りません。現代のように変化の激しい時代では、経験値が通用する期間はとても短い。逆に変化対応への足かせになりかねません。重要なのは、その経験値を次の新たな環境にコンパイル(変換)し、ヨコ展開していける柔軟性・潜在能力です。また、若いうちに自分をどんな環境に置くかは、よく考えるべきです。
だからと言って、経験が若さに勝るとも限りません。現代のように変化の激しい時代では、経験値が通用する期間はとても短い。逆に変化対応への足かせになりかねません。重要なのは、その経験値を次の新たな環境にコンパイル(変換)し、ヨコ展開していける柔軟性・潜在能力です。また、若いうちに自分をどんな環境に置くかは、よく考えるべきです。
―その理由を教えてください。
私はよく、レールを市場、列車を会社に見立てて考えるんです。市場すなわちレールが伸びているとき、その上にある列車は止まっていても外から見たらレールと同じ速度だけ動いてみえます。しかし、レールが伸びていくスピードと同じ速度しか出せない列車には魅力はない。会社も同じで、市場成長率以上に伸びている会社でなければ選ぶ意味はない。
また、先頭車両と最後尾の車両とでは、見える景色がまったく違います。同じ列車なら先頭車両に乗るべきです。その会社の事業やロジックを理解できれば、最初は最後尾の車両でも、次々と車両を飛び越え、先頭車両に近づくことができます。市場や会社の動きに身を任せているだけでは、自分を輝かせることはできません。
また、先頭車両と最後尾の車両とでは、見える景色がまったく違います。同じ列車なら先頭車両に乗るべきです。その会社の事業やロジックを理解できれば、最初は最後尾の車両でも、次々と車両を飛び越え、先頭車両に近づくことができます。市場や会社の動きに身を任せているだけでは、自分を輝かせることはできません。
―成長できる環境を自ら獲得することが重要なんですね。
そうです。さらにいえば学ぶ相手が多い環境の方がいい。日本の武道などには「守破離」という考え方がありますよね。師匠の技を身につける「守」。他の師匠からも良いものを取り入れる「破」。そして、独自の新しいものをつくり上げる「離」。この考え方で言えば、若くして成功したいなら、守はできるだけ短く、一刻も早く破に移ることを意識すべきです。そして10個、20個の破を身につけることができれば、離に移ることができる。この離の段階こそ、自分にすべての責任が委ねられている状態。まさに経営者です。
客観的・合理的に説明責任を果たす
―今後の目標を聞かせてください。
現在のテーマは経営の質的向上です。「ライフメディアプラットフォーム事業」という独自のビジネスモデルで9期連続の増収増益という「爆発的な成長」を達成できました。
一方で、この10年を振り返ると、会社のカタチも大きく変わりました。今後も爆発的な成長を継続するため、経営資源を効率的に活用し、企業価値の最大化をさらに追求していきます。そのためには、より客観的な指標で事業を評価し、事業再編成で経営をシャープにしていく必要があると考えています。
一方で、この10年を振り返ると、会社のカタチも大きく変わりました。今後も爆発的な成長を継続するため、経営資源を効率的に活用し、企業価値の最大化をさらに追求していきます。そのためには、より客観的な指標で事業を評価し、事業再編成で経営をシャープにしていく必要があると考えています。
―具体的なビジョンを教えてください。
2021年3月期をゴールとする「第1次中期経営計画Protostar」をまとめました。そこでは「トリプル25」という目標を掲げています。営業利益率、営業利益年率成長率、(※)ROEでいずれも25%以上を達成するというもの。売上も現在の50億円に対し150億円に、営業利益も16億円から50億円にそれぞれ引き上げることを目指します。
私には「経営者は経営で語るべき」という信念があります。結果責任を負う経営者は定量的な数字をもって客観的、合理的に説明責任を果たすべきだと思っています。5ヵ年計画を達成し、会社を持続的に成長させること、そして理念の実現とビジョンの達成を通じて社会全体に貢献する存在にすることこそが、いまの私のミッションです。
私には「経営者は経営で語るべき」という信念があります。結果責任を負う経営者は定量的な数字をもって客観的、合理的に説明責任を果たすべきだと思っています。5ヵ年計画を達成し、会社を持続的に成長させること、そして理念の実現とビジョンの達成を通じて社会全体に貢献する存在にすることこそが、いまの私のミッションです。
※ROE : Return On Equityの略で、自己資本利益率のこと。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。 財務指標のなかで最重要視される項目の代表
PROFILE
プロフィール
平尾 丈(ひらお じょう)プロフィール
1982年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部に在学中から2社のITベンチャーを経営し、数々の学生起業家選手権で優勝。ITベンチャー1社の代表取締役を兼任したまま2005年に株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に新卒入社。2006年にリクルートより最年少取締役として現・株式会社じげんの創業に参画。2008年に代表取締役社長に就任。2010年にMBOにより完全独立。2013年に東証マザーズ上場。EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン 2013 大賞受賞、2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。
企業情報
設立 | 2006年6月 |
---|---|
資本金 | 5億3,136万円(2016年3月31日現在) |
売上高 | 50億3,173万円(2016年3月期) |
従業員数 | 304名(連結:2016年3月現在) |
事業内容 | ライフメディアプラットフォーム事業 |
URL | http://zigexn.co.jp/ |
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