INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
次々と人が育つ“サイバーエージェント流”成長環境のつくり方
成功する人材の条件「言うことは壮大、やることは愚直」
株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 曽山 哲人
いまや日本を代表するメガベンチャーとして、就職人気企業ランキングでは上位ランクインの常連となっているサイバーエージェント。良質な実践経験を経た若手人材が次々と第一線で新たな事業を生み出し、同社の成長をけん引する。そればかりか、起業家として羽ばたく人材も多く、まさに人材育成企業と呼ぶにふさわしい。いかにして、その成長環境はつくられているのか。同社取締役人事統括の曽山氏に、サイバーエージェント流人材育成術の真髄を聞いた。
※下記はベンチャー通信69号(2017年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
企業のなかに労働市場がある
―曽山さんは日ごろ、「人材こそ成長力の源泉」と語っています。人材育成に対する考え方を聞かせてください。
強い企業グループにするための人事戦略として、これまで「採用・育成・活性化」という3つのキーワードを重視してきました。ここに近年、「適材適所」「企業文化」をくわえています。とくにいまチカラを入れているのは、「適材適所」。昨今の急速な事業領域の拡大によって、社内で人材が成長していくキャリアモデルが多様化しているためです。
―どのように適材適所を実現しているのですか。
当社では、それぞれが活躍できる最高の場を得られるようにと多くの制度を設けています。社内異動の公募制度「キャリチャレ」や、社内ヘッドハンティング組織「キャリアエージェントグループ」、エンジニアが入社から2ごとに異動希望を出すことができる「FA制度」などが代表的なものです。こうした制度をしっかりと機能させることで人材の流動化が加速し、結果としてグループ内で独自の「企業内労働市場」が形成されるようになりました。海外の研究者は「世界でも珍しいケース」と分析していますが、こうした環境こそ人材を活性化し、成長させる当社の強みのひとつです。
―そうした環境で現場経験を重ねた人材はどんなチカラが身についていくのでしょう。
当社の場合、3つあげるとすれば、「決断経験」「変化対応力」「事業開発力」ですね。このうち、いちばんベースとなるのが決断経験です。典型的な例をあげましょう。当社には新卒として入社し、子会社の社長になっている人材が50名以上いますが、なかには内定者時代に社長に抜擢され、現在社長歴5年という強者も2名います。この間、彼らは会社存続にかかわる壁になんどもぶちあたり、人材、資金、事業に起因する経営問題にみずから決断を下してきました。いまでは立派に営業利益を稼ぐ存在です。こうした良質かつ厳しい決断経験を積んだ人材は、同じようなケースが起こっても臆せず決断が下せるようになり、対応できる環境変化の幅がどんどん広がっていくんですね。すなわち、「変化対応力」が上がるんです。また、新規事業も多く幅広い事業を展開するなか、世のなかのトレンドや技術の変化を見極める能力も高まり、必然的にどんな商品、サービスが求められているのかもわかる。結果、「事業開発力」も上がっていくというわけです。
企業を選ぶ基準は3つ「市場・会社・人」を見極めよ
―若手人材でも良質な決断経験を積むことはできますか。
できます。そのために当社では、若手の初期のキャリア設定において、「私はこの仕事をしています」と明確に答えられる仕事を与える方針を貫いています。仕事上の役割を明確にすることで出すべき成果も明確になり、その成果実現のために地位や職種に関係なく自分なりの決断が迫られる。そんな環境を意識的につくっているのです。その決断経験を積むことで、若手といえども徐々に「決断のサイズ」を上げ、責任領域を広げながら活躍できるように導いています。
―曽山さんからみて、成功する人材の条件とはなんでしょう。
「言うことは壮大、やることは愚直」であること。これは当社グループで活躍し続ける人材に不思議なほど共通している性質ですね。壮大なことを言って高い理想を掲げることは、応援を得ることもあれば反発を招くこともある。それ自体がリスクを背負う行為です。その覚悟をもったうえで、「現実はまだまだ」と自分の立ち位置を素直に受け止めることができれば、どんな地道な仕事にも「理想への道筋のなかの一歩」という意味づけができ、愚直に努力を振り向けられる。結果、チカラがついていき、いずれ大きなことを成し遂げる資質が育っていくのでしょうね。
―「チカラがつく企業」を選ぶ基準があれば教えてください。
私がいつも伝えているのは、3つ。「市場、会社、人」を見ることです。まずは、その会社が身を置く市場が伸びているかどうか。この先、伸びる市場ならば、その市場で成功するための答えをもっている人は少ないので、若手人材でも市場のパイオニアになれる可能性が高まります。また、会社の有言実行度合いも大切です。立派なビジョンやミッションを掲げていても、それが絵に描いたモチで終わっているなら、その会社に成長はないでしょう。そして、人。いっしょに働く仲間との相性が重要なのは、言うまでもないですね。
この3つをしっかりと見ることができれば、会社選びで大きく失敗することはないはずです。自分が就活生に戻ったとするなら、絶対に見極めたいポイントです。
この3つをしっかりと見ることができれば、会社選びで大きく失敗することはないはずです。自分が就活生に戻ったとするなら、絶対に見極めたいポイントです。
PROFILE
プロフィール
曽山 哲人(そやま てつひと)プロフィール
1974年、神奈川県生まれ。1998年に上智大学文学部を卒業後、株式会社伊勢丹(現:株式会社三越伊勢丹ホールディングス)に入社。1999年に株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部統括を経て、2005年に人事本部長に就任し、2008年に取締役就任。2016年から現職。業界の垣根を越えて注目される人事制度や社内制度を導入し、採用・育成・活性化を行う。近著に『強みを活かす』(PHPビジネス新書)がある。
企業情報
設立 | 1998年3月 |
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資本金 | 72億300万円(2017年3月末現在) |
売上高 | 3,106億6,500万円(2016年9月期:連結) |
従業員数 | 3,858名(2016年9月末時点:連結) |
事業内容 | メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業 |
URL | https://www.cyberagent.co.jp/ |
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