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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康

世界の自動車市場に勝負を仕掛ける注目のEV開発ベンチャー

みずから限界を決めず、突き抜けた車をつくり続ける

GLM株式会社 代表取締役社長 小間 裕康

2010年に京都の地に産声を上げ、大手メーカーがしのぎを削る世界の自動車市場に名乗りを上げたGLM。周囲からの「無理だ」「無謀だ」との声をものともせず、設立4年にして量産初号車を出荷。この春には、最新の次世代モデルも発表するなど、その躍進は業界関係者を驚かせている。独自のビジネスモデルで自動車業界に革新をもたらす同社代表の小間氏に、これからの挑戦について聞いた。
※下記はベンチャー通信70号(2018年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「エコシステム」を拡大し新産業を創出するパワーをもつ

―香港の投資会社との資本提携に続き、ドイツの大手部品メーカーとの協業と、事業環境が整ってきた印象があります。

 そうですね。初号車となった『トミーカイラZZ(以下、ZZ)』を宣言どおり量産、納品できたことで、「GLMは言ったことを実現できる会社だ」と評価してもらえるようになったのだと思います。設立当初は、「ベンチャーに車づくりなんて無茶だ」といった声ばかり聞こえてきましたが、そうした懐疑的な予想を『ZZ』によって覆すことができた。それにより、これまで相手にしてもらえなかった部品メーカーや投資家などから逆に声がかかるようになり、結果、世界をワクワクさせる車づくりに挑戦できる環境が整ってきたと言えます。

―その集大成が4月に発表した最新モデル『GLM G4』ですね。

 そのとおりです。『GLM G4(以下、G4)』には、現時点で自動車産業が実現しうる最先端の技術が集約されています。1000台という中規模生産を掲げ、ハイエンドモデルの価格帯を打ち出している『G4』には、量産車並みのコストダウンが不要です。そのため、たとえコスト面では量産レベルに乗らなくても、「性能では最先端」という尖った技術を搭載できる。最高出力や連続航続距離などのスペックで世界を驚かせることができたのは、そのためです。『G4』は、まさに自動車産業の「テクノロジーショーケース」という位置づけです。

―「ハイエンドモデルの中規模生産」というビジネスモデルがポイントなのですね。

 そう考えています。自動車産業は今後、大きくふたつの潮流に分かれていくとみています。ひとつは、これまでどおり個人が車を所有するニーズ。顧客層は富裕層が中心となり、車はますます高付加価値化が進んでいくでしょう。もうひとつは一般消費者を中心としたカーシェアニーズ。こちらは量産型自動車産業の行き着く未来です。当社はいずれのニーズにも対応していきます。前者のニーズに対しては、『G4』のような完成車を開発し、先端テクノロジーが醸し出すワクワク感を提供していきます。「車を所有する」というより、「先端テクノロジーを体感する時間を所有する」という感覚に近づいていくでしょう。

―後者のニーズにはどう対応しますか。

 主要パーツをユニット化し、『プラットフォーム』(車台+パワーユニット)として、世界の新興自動車メーカーに供給していきます。その結果、当社を中心とした「エコシステム」をつくることができれば、大きな可能性が開けてくる。たとえば、車を使ったサービスを手がけるIT企業や物流企業は、独自仕様車の開発ニーズを抱えています。そうしたニーズは、従来の自動車産業の枠を超えた一大産業を生み出すとみています。エコシステムの拡大は、そのニーズを取り込み、新産業を創出していくパワーをもつことにつながるのです。

失敗が許される それこそベンチャーの特権

―GLMが周囲の予想を覆し、EV量産化の壁を乗り越えられた要因はなんですか。

 まじめに自分たちの現状を理解してきたからです。そのうえで、自分たちに足りないこと、できないことを誠実に相手に説明してきました。そこに信頼が生まれ、相手の理解と支援を引き出すことができた。当社に超一流の人材が集結している背景にも、こうした姿勢があります。たとえば、人材採用で当社では「明日、会社がつぶれるかもしれない。それでも来ますか」と問います。相手は最初、「冗談だろう」という反応をしますが、そこで「なぜ、つぶれるか」を事細かく、真剣に説明するんです。「それでもGLMにいたことは、あなたのキャリアに活きるか」と問い続ける。ベンチャーでの自動車開発という仕事は、はたで想像するほど華やかなものではない。実際は泥臭く、地道な作業の連続。それを理解したうえで入社する人材は、相当に自分の腕に自信をもっている人。だから、当社に集まる人材はみな、超一流なんです。

―一流の人材が集まるGLMは、社会にどのようなインパクトをもたらしますか。

 われわれが社会に提供したいものを、ひと言で表すと「ブルースカイ」です。これにはふたつの意味があります。ひとつは、文字どおりの「青い空」。環境企業として、美しい環境を後世に残す責任を感じています。もうひとつは、「青天井」という意味。みずから限界を決めずに、技術面で徹底的に❝突き抜け❞、❝尖った❞車をつくり続けたい。現在の自動車開発は大量生産が前提となっているため、機能や性能を削ってコストダウンを追求しています。そこには「技術の粋を集めた最高傑作を生み出す」といった野心的な挑戦がありません。当社は、車づくりに「ワクワク感」を取り戻し、つくる側も、使う側も心躍らせるような車を提供したいのです。

―ベンチャー業界で大きな夢の実現を志す若者たちにメッセージをお願いします。

「事業をカタチにする」、もしくは「なにかのプロフェッショナルになる」には、最後まであきらめず、立ちはだかる試練に勝ち続けようとする姿勢が重要です。もちろん、試練の過程では失敗もあるでしょう。ただし、失敗と敗北とは違います。失敗を将来の勝利の糧にできれば、それは敗北ではない。失敗はベンチャーに許された特権のひとつ。失敗しないように安全策をとる大手企業の文化に対し、「失敗した後にどうすればいいか」を考えるのがベンチャーの発想。そんな環境をうまく使って、チャレンジに勝ち続ける人が増えていけば、もっともっと日本は楽しくなると思いますよ。
PROFILE プロフィール
小間 裕康(こま ひろやす)プロフィール
1977年、兵庫県生まれ。2000年に甲南大学を卒業し、株式会社コマエンタープライズを設立。国内外の家電メーカーへのビジネスプロセスアウトソーシング事業を展開。年商20億円まで成長させる。2009年、「京都電気自動車プロジェクト」に参画。2010年にグリーンロードモータース株式会社(現:GLM株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任する。2014年にはベンチャーとして初の量産EVスポーツカー『トミーカイラZZ』の国内認証を取得。2015年には量産を開始。2017年、次世代EVスーパーカー『GLM G4』を発表した。
企業情報
設立 2010年4月
資本金 32億2,914万円(資本準備金、資本性ローン含)
従業員数 26名(2017年11月末時点)
事業内容 環境対応自動車の開発・販売、それに付随するサービスの開発
URL https://glm.jp/
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