累計経営者579人に取材、掲載社数320ニッポンを創るビジョナリーベンチャーを紹介

著名起業家インタビュー

株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長(CEO) 澤田 秀雄

著名起業家やり方次第で「不良債権」も「 宝の山」に生まれ変わる

株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長(CEO) 澤田 秀雄

航空業界への参入や証券会社の買収、地方のバス会社やヨットハーバーの再生、そして極めつけは、開業以来18年間赤字が続いていたハウステンボスの半年での黒字化。いずれも勝算が薄いと思われた案件の多くを見事再建してきたのは、エイチ・アイ・エス代表の澤田氏だ。時代の流れを先取り顧客の動向をつかみ、数々の事業を成功に導いた同氏に、独自のマーケティングセンスに基づいた事業再建の秘訣、さらには動き始めた新たなチャレンジについて聞いた。

※下記はベンチャー通信71号(2018年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

大胆な事業の撤退・清算で1年で経費を約25億円カット

―2016年11月、突然社長に復帰しました。背景はなんだったのですか。

 長年の懸案だったハウステンボスの債権が、100億円前後の利益を生み出せるようになった。一方で、中核の旅行事業の成長がここ4~5年、鈍化していたため、再び2桁成長の軌道に乗せようと。それが第一の理由です。もうひとつは近年、次々と事業を多角化していったことで、経営の舵取りが難しくなってきたこと。ここでいちど、大胆な再編が必要になってきたと考えました。思い切った決断も必要になるでしょうから、それは創業者である私が陣頭指揮をとるしかないと。それが第二の理由ですね。

―復帰後の経営状況を振り返ってください。

 各事業を検証していくなかで、大きなムダがいくつも浮き彫りになりました。そこで「事業の成長性」という視点に絞り、ビジネスモデル自体に問題があると思われる事業はすべて撤退・清算を決めました。その結果、経費を約25億円前後カットできました。この一年間は2桁の増収増益になる見込みです。

 一方で、将来成長が見込まれる事業であれば、かりに足下では赤字であったり、収益貢献が小さくても、投資は続けます。目先の収益だけで判断してはいません。

少しでも安く価値を提供し顧客を引きつける

―成長性のある事業とはなんでしょう。

 ひとつは、ハウステンボス内で始めた電力販売事業。当初は園内の電力コスト削減が目的でしたが、これを一般家庭向けにも販売を開始しました。毛色の違う商売と思われがちですが、「少しでも安く価値を提供し、顧客を引きつける」という当社のマーケティング理念でみれば、旅行事業も同じなんです。

 この事業は、ストックビジネスなので、成長性のみならず、安定性も期待できる。最新のソーラー技術や蓄電池の開発、発電所の建設なども視野に入れ、前期は50億円、今期は100億円の売上を見込んでいます。

 また、同じくハウステンボスが起点となったホテル事業も有望です。ロボットがスタッフとして働く『変なホテル』、通称ロボットホテル。今年からは海外展開も視野に入れ、3~5年で100棟建設する計画です。1棟で2億円前後の利益を見越すと、100棟で200億円。電力事業に次ぐ柱になると期待しています。

―エイチ・アイ・エスの成長についても教えてください。

 どこに戦力を集中するかの話です。海外の旅行事業では、東南アジアからの旅行需要が高まっていることから、タイ・インドネシア・ベトナムなどのローカルマーケットにむけたアウトバウンドを強化。日本国内では法人の出張需要や団体旅行、クルーズ部門が伸びている。伸びる部門にヒト、モノ、カネを投下し、逆に伸びない部分をカット。選択と集中を進めれば、2桁成長くらいはすぐにできます。至ってシンプルなことなんです。経費を2割カットして売上を2割上げれば、単純に4割の増収増益になる。それで、大概の会社は利益が出ます。これで黒字にならない会社はつぶれています。この「2割×2割」の発想は、ハウステンボスの再建でも同じでした。

再建にあたり徹底した3つの施策

―ハウステンボスの再建を依頼された際は、2度断ったそうですね。

 ええ。テーマパーク事業の生命線となる「周辺商圏」の小ささ、九州の西の端に位置する不利な立地条件、「長崎は今日も雨だった」と歌謡曲にもあるほどの天候の悪さ。「勝算がない不良債権」と考える理由はいくつもありました。ただ、3回頼まれると、引き受けてしまう性格なんです。引き受けた以上は、黒字にしなければならない。そこで私が徹底したのは3つです。

―それはなんですか。

 まずは、園内をきれいに掃除すること。発展している会社は、オフィスや工場、厨房などが本当にきれいなところが多い。そこで、園内をみなで掃除しようと声をかけました。毎日15分でいいからやりましょうと、私も率先して参加しました。次に、社員が明るく元気に仕事をしましょうと。これも発展している会社に共通した要素です。ましてや、ハウステンボスはお客さんに非日常を味わって楽しんでもらうテーマパーク。明るく元気に仕事してくださいと。そしてできれば、楽しく。最後が、先ほども指摘した、経費を2割下げて、売上を2割上げること。これはすなわち、個々人が生産性を上げるということ。だから、各現場で生産性を上げる施策を考えてくれと。それができない人には、「早く歩いてくれ」と呼びかけました。園内は広く、端から端まで歩くと20~30分ほどかかる。これを10分で移動すれば、生産性は上がりますよね。

―売上はどうやって上げたのですか。

 通常、テーマパークというものは、お客さんの6~7割が地元客なんです。2000万人の商圏がある関東とは違い、長崎は100万人もいない。だから地元客の誘致には限界がある。そこで、目を向けたのはアジアです。日本の西の端ということは、アジアの玄関でもある。だから、アジア人客の誘致を見込んだ数々の新イベント、新アトラクションを次々に導入しました。2年後には海外の大型クルーズ船も招へいします。

 このほか、電力事業による光熱費の削減、話題を呼んだロボットホテル事業での誘客効果などもくわわった。これらはエイチ・アイ・エスとしての新規事業にもつながっており、グループとしての相乗効果をもたらし始めているのは、当初の想定以上の成果です。今では、2度も依頼を断ったことなど忘れて、「こんなにいい案件はない」「可能性を秘めた❝宝の山❞だった」なんて言っていますよ。

何度失敗しても最後に成功してしまえばいい

―事業を成功・再建させるうえで、大切なことはなんですか。

 事業の成否はトップの資質で決まります。まずは、トップにしかできないビジョンを打ち立てること。そこでは3年後、5年後を見すえ、しがらみを捨てて純粋に成長性で事業を判別する。そして、いったん決めたら、実行し続ける継続力をもつこと。さらに、トップは明るく元気で、周囲を巻き込む陽性のパワーをもっていたほうがいい。

 こうした資質をもっていれば、きっと事業を成功に導けます。何度失敗したっていいんです。最後に成功してしまえば、周囲はこれを「成功」と評価する。ハウステンボスの事例が示す通り、やり方次第でどんな事業にも再建の可能性はあるものです。

―起業やベンチャー企業への就職を考えている若手人材にメッセージをお願いします。

 新しい技術の登場で、世界が変わろうとしている今は、新しいチャレンジをする人や企業には大きなチャンスであり、逆に古い考え方には危機と映ります。守りに入ってはダメ。失敗を恐れず、何度でも挑戦してほしい。

 そして、「日本で勝つ」ではなく、「世界で勝ち抜く」視野をもたなければならない。そのために、いろいろな文化や企業にふれて、刺激を受けてほしい。若いうちは、とにかく世界を旅して、パワーを蓄えてください。

澤田 秀雄(さわだ ひでお)プロフィール

1951年、大阪府生まれ。1980年、旅行会社(現:株式会社エイチ・アイ・エス)を開業。海外格安航空券の販売を柱に事業を発展させる。1996年にスカイマークエアラインズ株式会社(現:スカイマーク株式会社)を設立し、1998年に国内航空業界への新規参入を果たす。1999年、協立証券株式会社の株式を取得し、エイチ・アイ・エス協立証券株式会社(現:エイチ・エス証券株式会社)の代表取締役に就任。2010年3月、ハウステンボス株式会社の代表取締役社長に就任。開業以来18年連続赤字だった同社を黒字に転換させる。2016年11月にエイチ・アイ・エスの社長に復帰し、現職に。

企業情報

設立 1980年12月19日
資本金 110億円(2017年10月31日現在)
売上高 6,060億円(2017年10月期:連結)
従業員数 1万6,932名(2017年10月31日現在:連結)
事業内容 旅行事業、ホテル事業、テーマパーク事業など
URL https://www.his.co.jp/

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