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EVENT REPORT イベントレポート

楽天株式会社 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史 / 株式会社セールスフォース・ドットコム 会長 兼 CEO(最高経営責任者) マーク・ベ二オフ

日米IT起業家対談

初心に帰り、革新的に取り組めば つねに成長し続けることができる

楽天株式会社 代表取締役会長 兼 社長 三木谷 浩史 / 株式会社セールスフォース・ドットコム 会長 兼 CEO(最高経営責任者) マーク・ベ二オフ

楽天の三木谷氏が代表理事を務める新経済連盟が、「Japan Ahead —集え、日本を牽引する力—」をテーマに4月11日にウェスティンホテル東京にて『新経済サミット』を開催。多数の起業家や著名人が、講演やセッションを行った。本企画では、三木谷氏とセールスフォース・ドットコムの会長 兼 CEOのベニオフ氏とのセッションを一部抜粋してレポートする。
※下記はベンチャー通信72号(2018年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

世界でトップ5のソフトウェア企業をめざす

三木谷:「企業向けソフトウェアのクラウド化」というすばらしいコンセプトを、どうやって考えたのですか。

ベニオフ:当時の古いテクノロジーモデルは使用するのが難しすぎて、コストも高かった。とくに企業向けソフトウェアではコストを低く、より簡単に実行できないといけないと考えていました。そんなおり、私は『eBay』を使ったことをいまでも覚えています。人気のあるオークションサービスで、なにかをインストールする必要もなく、とても簡単に利用できました。そこで「あぁ、なぜ我々はこのような機能をもった企業向けソフトウェアをつくれないんだ」と考えたのです。それが我々の、ビジネスにおける原点でした。

三木谷:それがいまや、小さな企業だけでなく大企業も利用する世界的なサービスにまで成長したと。

ベニオフ:そうです。現在、我々には世界中で3万人以上の従業員がいます。会計年度が終わったところですが、我々は105億ドルの収入をえました。セールスフォースほど、早く成長した企業向けソフトウェア企業はほかにありません。今年は125億ドルの収入と、世界でトップ5のソフトウェア企業になることを目標としています。やがて200億ドル達成も最速となるでしょう。それが私の夢で、非常にエキサイティングです。

 そして、ここ日本は、セールスフォースにとって最速で成長を遂げている国なんです。

「どうすべきか」ではなく「どうすれば解決できるか」

三木谷:日本のメディアからよく受ける質問があるのですが、いいですか。

ベニオフ:ええ。

三木谷:日本のスマートフォン業界は、問題を抱えています。iPhoneについてよく冗談をいうのですが、なかの部品は日本で製造されているのに、その権利の95%はAppleです。どうすべきでしょうか。

ベニオフ:前提として、アメリカではそんな質問はしません。おそらく、それが問題の一部なんでしょう。まずは、適切な質問をすべきです。たとえば、「なぜ私は失敗するのか」という質問。もちろん、その人は失敗しています。「なぜ私は成功するのか」。もちろんその人は自分で成功していることがわかっています。要するに「どうすれば課題を解決できるか」を考えないといけません。初心に帰り、失敗を取り除き、パーフェクトに成功し、成長の基礎をつくり、革新的で創造的なアイデアをえられるようにするべきです。

 もちろん、これは日本人が身につけていること。だから、私は日本に来ているのです。私は、日本と日本経済を信じています。ときには、日本人以上に。現在、セールスフォースを通じて日本の会社の37社に投資していますよ。ですから、ぜひ日本がもつ革新、創造性、すばらしい人々、インフラ、トレーニング、ネットワークなどを見てください。日本は、すべての領域においてパーフェクトとまではいいませんが、多くのチャンスがあると思っています。だからこそ、私は日本で投資をしているのです。

来日して最初に向かうのは京都の龍安寺

三木谷:日本が好きなんですね。

ベニオフ:ええ、私は日本が大好きですよ。もちろん、日本で多くの成功事例があるのも影響していますが、東京でビジネスをするのは楽しいです。

 でも、東京に行く前に私がすることがあります。それは、京都に行くことです。今回も行ってきました。日曜日の朝、サンフランシスコで飛行機に乗り、月曜日の午前1時に大阪の関西国際空港に着き、車で京都に行って、まずは龍安寺に行ってきました。有名な15の石がある石庭をもつ寺です。そこで行うのは、「瞑想」。これは、最初の頃にもっていた心を引き起こすため。日本語では「初心」というのでしょう。初心を取り戻すことは非常に重要で、革新というのは日本の哲学からくると考えているのです。

 多くの偉大なアメリカの革新的起業家、たとえばスティーブ・ジョブズもそうでした。私の友人も龍安寺に行きます。そのなかには、ヨーロッパやアメリカのアーティストもいます。アメリカの映画ディレクターもそうですね。みんな同じ課題を抱えています。「もっと革新的でいるには、どうしたらいいか」ということです。革新について学ぶ最良の場所が日本であり、我々は龍安寺に行くのです。

革新的な人と話しあうそれが刺激につながる

三木谷:普段から革新的に取り組むためには、どうすればいいでしょう。

ベニオフ:もちろん、我々は革新的な文化をもっています。まず、失敗を評価すること。人は失敗します。しかし、チャンスにかけることはいいことです。ですから、失敗は革新の一部なんです。

 それから、先に話しましたが、初心に帰ること。ただ、古いアイデアにとらわれるのではなく、心をクリアにするのです。過去と未来は同じではありません。心をクリアにすれば、革新的なアイデアが生まれるのです。

 さらに、自分の周りに革新的で創造的で、ワクワクさせてくれる人がいる環境を意識的につくること。ですから私自身、いまこうしてお互いに話をしています。私たちはともに起業家であり投資家で、ビジネスで互いに敬意を表しています。そのため、互いにさまざまなことを話し、刺激しあっているのです。

―モバイルテクノロジー分野のさらなる成長に注目せよ

三木谷:そうした革新的に取り組むことに対して、日本人はあまり積極的だとはいえません。私たち日本人に、必要なものがおわかりでしょうか。

ベニオフ:いいえ。それはなんでしょう。

三木谷:楽観主義です。我々に必要なのは、より楽観的な心構えなんです。

ベニオフ:ええ。そう思います。

三木谷:多くの人は「なぜさらに事業を行うのか?」と尋ねてくるのですが、私の答えはつねに「なぜやらないのですか?」です。

ベニオフ:そのとおりですね。たとえば、モバイルテクノロジーの分野はいま大きな移行期を迎えています。まだ、モバイル革命の初期段階ですが、今後はどんどん進歩していくため、より革新的な取り組みが求められます。それを考えると、非常にワクワクします。日本にも、そのチャンスはありますよ。
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