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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

akippa株式会社 代表取締役CEO 金谷 元気

社会の変革を期す大阪発Techベンチャーが描くビジョンとは

人々の困りごとを解決したい そんな想いで手がけている事業です

akippa株式会社 代表取締役CEO 金谷 元気

「駐車場のシェアサービス」という独創的な事業を立ち上げ、急成長を遂げている大阪発のTechベンチャー、akippa。いまや、その将来性に注目する大手企業がこぞって出資や提携をもちかけてくる存在だ。代表の金谷氏は、「駐車場を核に、シェアサービスによるモビリティプラットフォームをつくる」と壮大な構想を掲げる。カーシェア市場が大手企業の参入でレッドオーシャン化するなか、「勝算はある」と笑顔で語る同氏。今後のビジョンを聞いた。
※下記はベンチャー通信73号(2018年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「P/L脳」からの脱却こそTech企業への飛躍の条件

―駐車場シェアサービスが急速なペースで拡大していると聞きます。

 はい。サービスが4年目に入った今年4月の時点で会員数は70万人を達成。年内には100万人を突破する見込みです。一方、駐車場の累計登録数は、今年4月に2万ヵ所に到達しています。コインパーキング最大手の駐車場数が1万9000ヵ所ですから、台数ベースではともかく、拠点数ではすでに業界トップにありますね。

―立ち上げ当初から、事業の将来性に確信があったのですか。

 ありました。開始当初は月の売上が2万円でしたけど(笑)。その理由は3つ。まずは、重要なサプライサイド、つまり駐車場の供給に、当時営業会社であった当社の強みを活かせること。次に、既存ニーズの置き換えで市場がつくれること。そして最後は、潜在市場が大きかったこと。駐車場市場のニーズは5兆円と言われていますが、現在、市場への供給量はせいぜい3000億円程度。膨大な潜在市場があったため、新規参入の規制はなく、既存業者らの反発も少ない。これは伸びると確信していましたね。

 しかし、ビジネスをスケールさせるには、大事な視点がありました。

―それはなんでしょう。

 短期的収益にしばられず、長期目線でスケール化を図る視点です。会員数の増加が成否を分けるBtoCサービスの場合、サービスのすそ野の拡大を優先するために、一時的な収益の落ち込みを耐え忍ばなければならない局面があります。その局面を乗り越えると、会員数の増加がいずれ大きな収益となって返ってくる。この収益曲線を私は、「Jカーブ」と呼んでいます。これに対し、多くの会社は目先のP/L(損益計算)の健全性を優先しています。この思考を私は「P/L脳」と呼んでいますが、営業主体の会社が陥りがちな「落とし穴」なんです。サービス開始当初は当社にもこうした思考が根強く、事業拡大に反対の声も強かったです。

 しかし、B/S(貸借)さえ管理できていれば、会社はそう簡単にはつぶれない。「P/L脳」からの脱却は、当社が営業会社からTech企業へと飛躍を図る重要な条件でした。

志すのは「困りごと解決企業」

―どのような事業戦略を描いていますか。

 駐車場シェアサービスを中核に、カーシェアや公共交通機関など、あらゆる移動手段を一括予約できる「モビリティプラットフォーム」を構築する戦略を掲げています。車は今後、所有から利用に変わっていく。使いたいとき、使いたい場所に車があることが重要になってきます。電気自動車の時代には、駐車場は充電スポットにもなるし、自動運転車が登場すれば自動車の配車拠点にもなる。全国の津々浦々に駐車場のネットワークを保有していることは、カーシェア時代のモビリティプラットフォームをつくるうえで、決定的に重要な条件になるのです。

―しかし、カーシェア市場は大手企業の参入などで過熱しています。勝算はありますか。

 もちろんです。なぜなら、われわれはユニークユーザー※で50%以上のシェアを誇る圧倒的な利用者基盤があるからです。その背景には、事業に込めた強い理念への共感があると自負しています。その理念とは、「PARKUP. anytime anywhere.」「『会いたい』をつなぎ、みんなを元気にする。いつでもどこでもPARKできるアプリ」というもの。たとえば、こんなことがありました。当社はJリーグ球団「V・ファーレン長崎」と提携し、駐車場不足が叫ばれていたスタジアム周辺で駐車場シェア・予約サービスを導入しました。その結果、4時間の渋滞が解消。そればかりか、障がい者用駐車スペースの予約が可能になり、「車イスの少年が人生で初めて試合観戦できた」という喜びの声まで届いたのです。ほかにも、「遠方に住む祖母の家の近くで駐車場シェアが可能になったので、ひんぱんに見舞うことができるようになった」との声も。駐車場予約で生まれる、こうした「人と人とのつながり」こそ、当社が提供する価値。単なる駐車場というスペースではないんです。事業に賭ける覚悟は、大手企業には負けません。
※ユニークユーザー:ある一定期間内におけるサイトの訪問ユーザー数。サイトの人気度を判断する重要な指標

―今後のビジョンを教えてください。

 まずは、2030年までに世界一のモビリティプラットフォーマーになります。当社が志すのは単なるTech企業ではなく、「困りごと解決企業」。当社が成長することは、すなわち、世の中がよくなることです。だから「絶対に世界一のプラットフォーマーになろう」と社員と固く誓っているんです。
PROFILE プロフィール
金谷 元気(かなや げんき)プロフィール
1984年、大阪府生まれ。高校卒業後より4年間、Jリーガーをめざし関西リーグなどでプレー。引退後に上場企業にて2年間営業を経験する。2009年2月に24歳で1人暮らしをしていたワンルームの部屋で会社を設立。2014年からは、契約されていない月極駐車場や、マンションの駐車場などを15分単位で貸し借りできる駐車場シェアサービス『akippa』を運営。これまでにトヨタ自動車株式会社や住友商事株式会社、ニッポンレンタカーサービス株式会社など大手企業から総額24億円以上の資金調達を実施している。
企業情報
設立 2009年2月
資本金 18億920万円(資本準備金含む)
従業員数 68名(2018年7月現在)
事業内容 駐車場シェアアプリの運営
URL https://akippa.co.jp/
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