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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹 芳央

数多の企業を成長に導いてきた組織変革のプロが説く

ビジョンを軸にした共感創造が「強い組織」をつくる

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹 芳央

「企業の競争優位の源泉はいま、事業戦略から人事戦略へと完全に変化しています。それを見抜けない企業は市場で生き残れません」。こう喝破するのは、大手企業から中小・ベンチャー企業まで、数多くの企業で組織マネジメントを変革し、成長へと導いてきたリンクアンドモチベーションの代表、小笹氏だ。グローバル化が競争を激化させ、技術の進展が人々の働き方を大きく変える時代。いま、いかにして強い組織をつくるか―。多くの迷える企業が実践すべき、組織づくりの要諦を同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信73号(2018年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

大手企業もこぞって求める人材を束ねる「強い力」

―近年、採用や育成といった人への投資を企業は増やしています。背景はなんですか。

 いちばん大きな背景は産業構造の変化です。現在、GDPの75%を第三次産業、つまりサービス業が占めています。産業のソフト化、サービス化が進んだ結果、人材資源がもつアイデアやホスピタリティ、さらには「お客さまを喜ばせたい」といったモチベーションこそが、事業の競争力の源泉となっています。そこにいち早く気づいた企業が、人への投資を強化しているのです。資金が容易に調達できるいまは、設備や資財はそろう。これに対し、人材がもっとも得難い資源になっています。この貴重な人材資源を調達するために、企業はつねに労働市場から「選ばれる存在」であり続けなければなりません。

―「選ばれる存在」とは、どのような企業を指すのでしょう。

 社員は組織全体に貢献し、組織もまた個人の欲求充足に資する。つまり、ラグビー用語でいう「One For All, All For One」が成立している組織です。われわれは、この企業と個人の相思相愛度を「エンゲージメント」と呼んでおり、企業の業績に影響する重要因子と位置づけています。「For All」ばかりを求める組織運営では、個人は息苦しさを感じる。一方、「For One」を気にしすぎる運営では、馴れ合い集団になり、居心地はいいが成長しない。これは組織規模や業種などに関係なく、普遍的なメカニズムです。両者の要請をどう結びつけ、バランスをとるかが、企業にとって大命題となっているのです。

―昨今の「働き方改革」で個人の労働観は多様化しつつあり、エンゲージメントの向上はさらに難しくなっているように見えます。

 そのとおりです。制限や制約をとりはらい、個人が活躍できる場を広げることは望ましい。企業が選ばれる存在になるために、今後も多様な働き方が促進されていくことは間違いありません。一方で、こうした「For One」に寄った施策の裏で、「For All」としての統合の遅れに悩む企業が増えているのも事実です。人材の多様化が進むほど、それらを束ねる「強い力」が必要となるのは道理。いま、改めて組織としてのビジョンやミッションを見直したり、社内のコミュニケーションインフラを整備しようとする動きが大手企業を含めてにわかに増えているのは、そのためです。

ベンチャー企業こそ「統合の旗印」を立てやすい

―組織づくりの面で成功している企業には、どのような共通点がありますか。

 2つあります。1つは、優秀なミドル層の存在です。ミドル層はトップと現場をつなぐ結節点。ミドル層がプレーヤー化していたり、現場と乖離してしまえば結節点として機能せず、組織はぜい弱になってしまう。優秀なミドル層の条件とはまず、トップの考えを自分の言葉として伝えられる情報の「発信力」。そして、現場の情報をキャッチする「受信力」。これらはトップと現場を結ぶ結節点として不可欠の能力です。一方で、ミドル層は部門単位で見れば、その組織を率いる存在でもあります。そこではトップとしての「判断行動力」、そして部下のやる気を引き出す「動機形成力」が求められます。この4つの能力を育成したミドル層は組織のエンゲージメントを引き上げます。

―もう1つの共通点とはなんでしょう。

 採用段階での徹底した共感創造です。ビジョンやミッションに対する共感や、どう働きたいかといった「就労観」を徹底してすり合わせています。単なる経験やスキルによる採用では、のちのち人材を束ねていくのが難しくなり、組織化に失敗するケースが多いです。 折しも、労働観の多様化によって、昨今はビジョンの重要性が見直されています。それに対し、トップのキャラクターや想い、それらを言語化したビジョンやミッションといったカタチで「統合の旗印」を立てやすいのがベンチャー企業。いまの環境変化は、ベンチャー企業が自らの魅力を発信し、人材戦略で競争優位を獲得する好機でもあるのです。

―最後に、起業やベンチャー業界への就職を志す若手人材にメッセージをお願いします。

 新しい技術やサービスは比較的簡単に生み出され、すぐに陳腐化していきます。そんな時代にあって競争を勝ち抜き、成長を手にするには、激しい変化に適応できる力や、変化を恐れない文化をもった「強い組織」をいかにつくるかが重要です。それには、他者から共感を得られるビジョンやミッションを経営者自身がもつことが不可欠です。そうした組織がつくれたならば、事業はほぼ成功したようなもの。そういっても過言ではありません。
PROFILE プロフィール
小笹 芳央(おざさ よしひさ)プロフィール
1961年、大阪府生まれ。1986年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)に入社。2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立、代表取締役社長に就任。同社は2008年に東証一部へ上場。「モチベーションエンジニアリング」という独自の技術を開発、幅広い業界の顧客からその有効性を支持されている。2013年1月、代表取締役会長に就任。グループ13社の代表を兼務する。
企業情報
設立 2000年3月
資本金 13億8,061万円(2017年12月31日現在)
売上収益 368億円(2017年12月期)
従業員数 1,462名(2018年8月1日現在)
事業内容 モチベーションエンジニアリングによる企業変革コンサルティング、モチベーションマネジメント事業など
URL https://www.lmi.ne.jp/
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