累計経営者579人に取材、掲載社数323ニッポンを創るビジョナリーベンチャーを紹介

著名起業家インタビュー

株式会社トリドールホールディングス 代表取締役社長 粟田 貴也

著名起業家「現状を否定する勇気」があれば夢はきっと実現できる

株式会社トリドールホールディングス 代表取締役社長 粟田 貴也

「すべては、お客様のよろこびのために」―。ただその一念を胸に、1軒の焼鳥屋から始まった「挑戦」は、いまや全世界1600店舗を数え、グループ売上1100億円を稼ぎ出す一大外食チェーンを生み出した。セルフうどん店『丸亀製麺』を展開するトリドールホールディングス代表の粟田氏は、まさに現代における立志伝中の人物だ。事業を成功に導いた要因とはなにか。また、いまも衰えぬ事業意欲のヒミツとは。同氏に聞いた。

※下記はベンチャー通信74号(2019年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

体験やストーリーにお客様はお金を払っている

―粟田さんは現在の業績推移をどう分析していますか。

 過去4年にわたる急成長がひと段落し、いまは新たな成長を生み出すための足場固めの時期と位置づけています。『丸亀製麺』一業態に成長を依存する体制から脱却し、新業態開発やグローバル展開を強く打ち出しているのがいまです。

 そのために、私はトリドールを飲食業というよりも、「ライフスタイル企業」として再定義しているのです。

―「ライフスタイル企業」とは、どのような意味ですか。

 ふたつの意味があります。

 ひとつは、純粋に事業領域の意味。『SONOKO』に代表されるように、化粧品や食材といった飲食業以外の事業形態を模索し、ライフスタイル全般にかかわる多様な商材を展開する狙いがあります。

 もうひとつは、主力の飲食業を展開する際のコンセプトとして。モノが売れない時代に、お客様にどのように商材を提案するか。たとえば、『丸亀製麺』のうどんを例にとれば、単に「安い」「おいしい」だけで売れる時代ではありません。「うどんを味わう体験」や「うどんによる、よりよい生活」を提案し、その一環でうどんそのものを売っていく。そんなアプローチが必要だと思うんです。

―粟田さんはつねづね、飲食業では「体験や感動を売る視点こそが大事だ」と指摘されていますね。

 ええ。いまは「モノが売れない時代」です。かつて1997年には30兆円にのぼった外食産業ですが、いまは25兆円に縮小しています。これには、人口動態や生活スタイルの変化などさまざまな要因がありますが、より本質的な要因として、外食産業がお客様の「支持」を失った側面があると私は考えています。支持というのは、すなわち「食べたい」という利用動機です。世の中が便利になり、お客様の選択肢が増えるなかで、単に安くておいしいうどんなんて、山ほどある。コンビニには、レンジで温めれば自宅でおいしく食べられるうどんがあるんです。

 一方で、近所のうどん屋を素通りして、香川県まで讃岐うどんを食べに全国から人が集まる。この差を、「たまたまブームだから」といって見過ごしてはいけないんです。そこには、「製麺所で手づくりの、できたてのうどんが食べられる」という付加価値、体験があり、つくり手やお客様のストーリーがある。その体験やストーリーにお客様はお金を払っているんです。その発想から立ち上げたのが、「できたてのその瞬間を食べる」業態としての『丸亀製麺』でした。

手間ひまを厭わない心意気にお客様は感動してくれる

―『丸亀製麺』では、チェーン業態の常識をことごとく破る経営手法をとっていますね。

 ええ。本来、チェーン展開する飲食店では、セントラルキッチン方式を採用し、属人化のリスクを排しながら設備投資を抑制する手法をとるのが一般的です。そのほうが品質は均一化でき、稼働も安定します。

 しかし、われわれは「手づくり」「できたて」にこだわります。一口に「手づくり」「できたて」と言っても、それは大変なリスクなんです。設備投資はもとより、人件費も光熱費もかさむ。そのうえ、品質はどこまでいっても属人化のリスクが残ります。それでも、苦労して膨大なコストをかけて店内調理にこだわる理由は、「すべては、お客様のよろこびのために」という経営理念があるからです。他社とは、優先順位のつけ方が違うんですね。

―経営効率や利益を追求すべき上場企業としてはなかなかできることではありません。

 上場企業として、当然ながら当社も経営効率や利益は重視していますよ。ただし、お客様に来ていただかなければ、経営効率も利益もないんです。来店してくれるお客様の数こそが、われわれのすべて。もっとも重視すべき経営指標なんです。そのために、われわれはお客様にどのような付加価値を提供できるかを追求しなければならない。

 「お客様のよろこび」のためには、われわれは手間ひまを厭わない。そう、あたまから決めてしまっているので、迷いはありません。この考え方は、社内の隅々にまで行き渡っています。そうでなければ、便利でおいしいコンビニに対して、存在価値がなくなってしまうじゃないですか。この心意気の違いにこそ、お客様は感動してくれるのだと信じています。

事業人生の原点は苦労を重ねた1軒の焼鳥屋

―粟田さんは、どのようにしてそのような考え方にたどりついたのですか。

 それは、最初に創業したお店での経験が大きいですね。トリドールの発祥は、私の地元、兵庫県で開いた1軒の焼鳥屋です。最初のうちは、なかなかお客様に来てもらえず、本当に苦労したんです。それが私の事業人生のスタートでした。どうすれば、来てもらえるのか。たどり着いた結論が、他店より少しでもお客様によろこんでもらうこと。試行錯誤の連続でした。そこから学んだのは、「お客様は、来なくて当たり前」という前提に立って考えること。そう考えるようになると、たくさんの選択肢のなかからウチを選んでもらうために、お客様がよろこぶことを追求し続けることが当然になるんです。

 目の前のお客様のよろこぶ顔が見たくて、一生懸命だった創業当時の夢は、「3軒の店をもつ」ことでした。そのときに抱いていた想いは、全世界6000店を目標に掲げるようになった現在に至ってもまったく変わりはないと断言できますね。

―新業態を開発し、グローバル展開を加速するなかでも、経営理念は変わらないと。

 そのとおりです。もちろん、世界30の国や地域に展開するなかでは、地域によって社会環境や経済状況の違いがありますから、出店形態にも違いが出ることはあります。1970年代の日本のように、出店自体が「お客様のよろこび」につながるような場合は、チェーンオペレーションを徹底し出店を加速するケースもあります。ただし、そこには必ず「お客様のよろこび」を基準に考える思考があります。海外でM&Aをする場合でも、つねに「お客様によろこんでもらえる業態かどうか」を第一に、収益性などよりも優先して考えるようにしています。そうじゃなければ、当社がやる意味がないですから。

行動を変えなければ叶わない大きな夢をもつことが大事

―最後に、起業やベンチャー企業への就職をめざす若者にメッセージをお願いします。

 「夢」をもってください。「目標」ではダメです。目標だと、なんだか手が届きそうで、行動が変わりません。行動を変えなければ叶いそうにない大きな夢をもつこと。そこに向かって、失敗を恐れずチャレンジするんです。失敗はしないほうがいいですが、チャレンジには失敗はつきもの。仮に失敗しても、夢があればモチベーションを高くもち続けられます。

 モチベーションを高く保つために、私は「現状を否定する」ことを心がけています。決していまに安住しないことです。ですから、私もつねに変わっていきながらも、夢はもち続けています。その夢に背中を追いかけられるような心理で、「もっとやらなければいけないことがあるんじゃないか?」と自問自答する日々ですね。実際、約4000人の社員のなかでも、気持ちのうえでは私がいちばんハングリーなんじゃないですかね(笑)。

粟田 貴也(あわた たかや)プロフィール

1961年、兵庫県生まれ。神戸市外国語大学中退。学生時代のアルバイト経験から飲食業に魅力を感じ、1985年に焼鳥居酒屋『トリドール三番館』を創業。父親の故郷である香川県の讃岐うどん人気に着想をえて、2000年にセルフうどん業態『丸亀製麺』を開業。チェーン店の常識を覆す数々の挑戦で顧客の心をつかみ、急成長。2006年に東京証券取引所マザーズ市場に上場、2008年に東京証券取引所第一部に市場変更。その後も多業態展開を加速しており、2018年3月期において国内外1,600店舗超、売上高1,100億円を達成し、さらに成長中。

企業情報

設立 1990年6月
資本金 40億5,734万6,000円(2018年3月31日現在)
売上高 1,165億400万円(2018年3月期)
従業員数 3,811名 (2018年3月31日現在)
事業内容 飲食業を中心とする傘下子会社の経営管理
URL https://www.toridoll.com/

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