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著名起業家インタビュー

株式会社ビームス 代表取締役社長 設楽 洋

著名起業家いずれの道が“楽しい”か。決断に際しては、その直感を大切にせよ

株式会社ビームス 代表取締役社長 設楽 洋

1976年、東京・原宿のわずか6.5坪の店舗から始まり、最先端のライフスタイルを発信し続けてきたセレクトショップの草分け、BEAMS(ビームス)。その後、じつに43年にわたって日本のファッションシーンをけん引し、つねに「時代を映す鏡」を演じてきた。変化の激しい業界にあって、「直感と感性を大切にしてきた」と語る同社代表の設楽氏に、独自の経営スタイルについて聞いた。

※下記はベンチャー通信77号(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

100の店舗があれば、100のビームスがある

―1976年の創業以来、変化が激しいファッション業界にあって、ビームスは堅調に成長し続けていますね。

 ええ。43年間生き残っただけでも、奇跡に近いと思っていますが(笑)。リーマン・ショックの翌年以外は順調に売上を伸ばしており、今年2月期も830億円を売り上げることができました。業界全体を見ると、少子高齢化や若者の嗜好の変化によって、ファッションに昔ほどのパワーがなくなってきていることは懸念しますが、そのなかでビームスはありがたいことに、いいカタチで伸びています。

―これまでビームスがつねに新しい魅力を発信できた理由はなんでしょう。

 店舗ごとの個性を大切にしてきたからでしょう。現在、国内外に約160店舗を構えますが、どれひとつとして同じ切り口の店舗はありません。その地区、その店舗の個性に合わせたセレクトやプレゼンテーションの仕方があるんです。当社は「ハッピーライフ ソリューション カンパニー」という基本コンセプトを掲げているのですが、ハッピーの定義は時代によっても受けとる人によってもさまざまです。だから、100の店舗があれば、100のビームスがあっていいのです。それぞれの店舗が「この指とまれ」と差し出し、コアな尖ったアイテムには10人がとまり、一般の方が好むアイテムには100人がとまる。ほかのブランドが「いまの流行はこれです」と提示するのに対し、「これも、面白いじゃん」と提案する。それがビームスのあり方なんですね。

―それは創業以来の理念ですか。

 そうです。ビームスを創業した当時、ファッションの流行が変わったとき、その流れについていけずに消えていった先人たちの姿を多く見てきました。そこで、ビームスでは、ひとつの型に押し込めることはしたくなかった。ですから、一本の広告や一枚のポスターでビームスを表現することはとても難しい。ビームスについて、ある人は「アメリカンカジュアル」といえば、ある人は「ストリート」という。「モード」という人がいれば、「トラッド」という人も。ビームスはそれでいい。「なんでもありだけど、なんでもいいわけじゃない」というのがビームスの理念なんです。

溢れる情報を絞り込むのが、これからの役割

―設楽さんが考える「ビームスらしさ」とは、どのようなものでしょう。

 社内では「かぶれ」と呼んでいますが、モノづくりに対する「こだわり」は一貫して大切にしてきました。ただし、そのこだわりは、一定のわかりやすさも必要です。「こだわりつつも、わかりやすい」という価値観をあらゆる局面で追求してきました。

 ここでいう「こだわり」にはふたつの要素があります。私は「コク」と「キレ」という言葉で表現するんですが、キレとは斬新なアイデアや時代の流行のようなもの。ビールののど越しのように一瞬で消えてしまうかもしれないが、面白いもの。一方のコクとは職人気質や歴史、伝統のように、何年も時間をかけないと出てこないワインのような味わい。商品のセレクトにはコクとキレ両方が必要であり、そのバランスこそが「ビームスらしさ」なのです。

―いま、ファッション業界は競争環境が大きく変わっています。どのようにビームスとしてのカラーを出していきますか。

 現在の店舗出店型の小売形態だけでは、成長が難しい時代になっています。かといって、eコマースもいずれオーバーストアを迎えるでしょう。ビームスがめざすのは、店舗小売だけでも、eコマースだけでもない新たなビジネス形態です。それが、オペレーション機能をもった「企画集団」です。自社店舗をもちながら、他社の商品開発やECモールのキュレーション機能に、ビームスのノウハウを提供するビジネスです。

 モノと情報に飢えていた時代のセレクトショップは、「これ見たことないでしょ」とモノを見せてあげることが役割でした。それに対し、モノや情報が溢れるいまの時代、われわれがやるべきことは、むしろ情報を絞ってあげること。数あるアイテムのなかから、「これいいでしょ」と提示する役割が求められています。時代を越えて支持され続けてきた「キュレーションの眼」をもつわれわれだからこそ提供できる、新しい時代の価値だと考えています。

「正しい選択」よりも「温かい選択」をしたい

―長く会社を率いてきた経験から考える、事業を成長させる経営者の条件とはなんでしょう。

 ふたつあります。ひとつは、周囲の人間に夢を与えられること。そしてもうひとつは、新しい道を切り開けることです。新しい道を開くには、決断に際して賛成多数の意見に従っていてはいけない。そこは経営者としての直感力、センスが問われてきますね。 もちろん、神様ではないので、100%正解を出すことはできません。また、利益を出したり、売上を上げることだけが正解であるならば、AIに社長を任せたほうがいい時代かもしれない。

 しかし、経営の正解とはそれだけではないはずです。たとえば、前者の選択のほうが儲かるかもしれないが、後者のほうが社員やお客さんにとってハッピー、ということはよくあることです。そんなときは、つねに後者を決断してきました。ファッションは人々の感性に訴えるものであり、ハッピーを与えるものです。「売れたら勝ち」だけではない価値規準があります。ですから私は、必ずしも収益上「正しい選択」をしていないかもしれませんが、少なくとも人々のハッピーを重んじる「温かい選択」をする経営者でありたいと努めてきました。極論すれば、どちらが“楽しい”かで決断するべきだと。それは企業経営に限らず、人生の決断においても同じではないでしょうか。

リアルな体験には勝てない

―これからの時代を生きる若者にメッセージをお願いします。

 若いころは、いろいろな対象に興味のアンテナを伸ばしてください。そして、リアルな体験でえられる熱や空気感を大切にしてください。情報だけなら、インターネットでいくらでも取得できる時代ですが、リアルな体験でえられる感動には勝てません。また、フィルターバブルのなかで、見たい情報しか見えない世界のなかでは、どんどん自分の興味の範囲が小さくなってしまう。リアルな体験からひらめくアイデアが、その後の人生やビジネスに活きることは往々にしてあるもの。ですから、私は68歳になったいまも、それをつねに心がけていますよ。

設楽 洋(したら よう)プロフィール

1951年、東京都生まれ。1975年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社電通に入社。イベントプロデューサーとして活躍する。翌1976年に父の立ち上げた『BEAMS』の設立に参加し、原宿で6.5坪のショップ『AMERICAN LIFE SHOP BEAMS』としてオープン。1983年に株式会社電通を退社し、株式会社ビームスの専務取締役就任。1987年に代表取締役に就任。アパレルにとどまらず、アート、カルチャーなど幅広い分野で最新のトレンドを発信し、『BEAMS』を国内外160店舗規模にまで発展させる。

企業情報

設立 1976年2月
売上高 830億円(2019年2月期)
従業員数 1,755名(2018年4月)
事業内容 紳士服、婦人服、バッグ、靴、雑貨などの販売
URL https://www.beams.co.jp/

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