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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社東京証券取引所 上場推進部長 横田 雅之 / 上場推進部 上場支援担当 統括課長 永田 秀俊

ベンチャー企業に主役がシフトするIPO市場を東証が分析

次代の日本経済を支えるベンチャー業界では、過去最高水準の上場機運が醸成されている

株式会社東京証券取引所 上場推進部長 横田 雅之 / 上場推進部 上場支援担当 統括課長 永田 秀俊

新規上場会社数が94社(※)にのぼり、近年続く高水準を維持した2019年のIPO市場。なかでも、マザーズ市場でのIPO社数が全体の約3分の2を占め、ベンチャー企業がIPO市場をけん引する傾向は昨年も顕著に表れた。こうした活況の背景について、東京証券取引所(以下、東証)は、「市場関係者との協働による、IPO企業を増やす取り組みの成果が表れてきた」と指摘する。市場のさらなる活性化に向けた東証の取り組みや今後の展望などについて、上場推進部の横田氏と永田氏に聞いた。

※TOKYO PRO Marketへの上場を含む全国のIPO社数
※下記はベンチャー通信79号(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

IPOを目指す企業の母数は、まだまだ増やせる

―2019年のIPO市場について、総括を聞かせてください。

横田:ここ数年同様、高水準を維持したと認識しています。特に、昨年で創設20周年を迎えたマザーズ市場への上場社数は63社と、前年と同じ過去最多の数となりました。マザーズ市場はコンセプトとして「高い成長可能性」をもつ企業を対象としているので、IPO市場の主役がベンチャー企業である傾向は続いていると言えるでしょう。

 東証は中期経営計画で「100社程度の安定的なIPOが実現できる環境整備」を目標に掲げており、その環境整備も徐々に進んでいるという実感をもっています。

―具体的にどのような環境整備を推進しているのでしょう。

永田:たとえば、東京以外の地域に本社を置く企業に上場を促す取り組みがあります。上場企業や上場支援を行う関係者が周りに多い東京と比べ、東京以外の地域では必ずしも上場に積極的な企業が多いとは言えません。こうしたなか、東証は2017年以降、複数の地域金融機関と協定を締結。各地で、上場のメリットを伝え、上場に対する関心を高めてもらうためのセミナーを開いています。地道な活動ですが、この取り組みを通じ、上場準備に入った東京以外の地域の企業が少しずつ増加しています。昨年に東京以外の地域から上場した企業は30社と全体の約3割を占めましたが、この比率はまだまだ高められると期待しています。

横田:IPO社数は当然、そのときの経済状況や各企業の事業戦略に左右されますが、IPOに関する正確な情報を提供し、株式市場を身近に感じてもらうことで、上場を目指す企業の母数を増やしていきたいです。

―上場を促すため、ほかにどのような取り組みを行っていますか。

永田:ライフサイエンス・バイオビジネス分野に特化した上場相談窓口を立ち上げ、上場に対する心理的なハードルを解消するための取り組みを行っています。同分野では、創薬系企業を対象に、より具体的な上場審査のガイドラインが設けられていますが、創薬事業を営むバイオ企業の事業形態が多様化するなか、「このガイドラインをすべて充足しなければ上場できない」という誤解が生じているようです。そこで、こうした誤解を払拭し、上場に関するさまざまな相談に対応するために、窓口を開設したのです。バイオ分野を対象とした相談窓口では、アーリーステージを含む企業からの相談が1年で数十件にのぼっています。

 我々上場推進部は、業界分野にかかわらず上場に関する相談を広く受けつけているので、ベンチャー企業の経営者の方は、ぜひ気軽に問い合わせてほしいですね。

審査ポイントへの理解が、上場の成功確率を高める

―実際、上場の相談は証券会社や監査法人に行う企業が多いイメージがあります。

永田:ええ、確かにそうですが、我々上場推進部は日本取引所自主規制法人の上場審査部との連携により、審査の現場により近い立場から助言を行うこともできます。

横田:たとえば、我々は毎年、上場審査部と共同で上場準備中の経営者向けにセミナーを開いていますが、昨年は、上場申請後、承認にいたらなかった企業が前年比で大幅に増えたため、その数を初めて公表しました。2018年度に審査を通らなかった企業は46社で、内部管理体制などにかかる上場審査基準を満たさない事案が多く見られました。我々は、こうした具体的な事例とともに審査の要点を企業に示し、IPOを成功させるための助言も行っているのです。

―今年のIPO市場について展望を聞かせてください。

永田:ここ数年と同様、高水準のIPO社数が維持されると見ています。ここ数年、東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年をIPOのターゲットとして上場準備を進めているという声を多く聞いているので、こうした企業がIPO社数の一定割合を占めるのではないでしょうか。

横田:市場関係者からは、来年以降もIPOを予定している企業が多くあるといった話を聞きます。東証としては、積極的な情報発信を継続することで上場機運をいっそう高め、将来の日本経済をけん引する有望な企業の成長を後押ししていきたいですね。
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