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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

GMOインターネット株式会社 熊谷 正寿 / 株式会社リンクアンドモチベーション 小笹 芳央  / 株式会社ビームス 設楽 洋/ 株式会社デジタルホールディングス 鉢嶺 登 / 株式会社LIFULL 井上 高志

「新型コロナ」を乗り越えろ

ベンチャー起業家からの提言

GMOインターネット株式会社 熊谷 正寿 / 株式会社リンクアンドモチベーション 小笹 芳央 / 株式会社ビームス 設楽 洋/ 株式会社デジタルホールディングス 鉢嶺 登 / 株式会社LIFULL 井上 高志

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会のあり方を一変させ、多くのベンチャー企業の経済活動に甚大な被害をもたらしている。4月に発出された緊急事態宣言は解除されたものの、今後、第2波、第3波の到来も予想されるなかで、終息の見通しはいまだ見えず、その影響も長く尾を引くことは避けられそうにない。これまで数多の困難を乗り越え、成長企業の礎を築いてきた起業家たちは、この危機をどう受け止め、その先にどういった未来を描いているのか。今号では、過去の本誌巻頭インタビューに登場した起業家たちに取材。先行き不透明な時代を生き抜くヒントを探った。
※下記はベンチャー通信80号(2020年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―現下の「コロナショック」を受け、自社の事業発展をにらみ、どのような施策を実行していますか。

 GMOインターネットグループは2020年1月27日より、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、パートナー(従業員)の命を守り、多くの企業のビジネスや人々の生活を支えるインターネットインフラサービスを安定かつ継続的に提供するべく、いち早く在宅勤務体制へと移行しました。さらに、グループ内における印鑑手続きを「完全廃止」し、取引先との契約も「電子契約のみ」とすることを意思決定し、印鑑レスの取り組みを進めています。

 こうした取り組みが、ほかの企業のBCP(事業継続計画)策定の一助となればと考え、Web上で対応状況やノウハウを無償で公開しています。これにより、これまで以上に世の中でのインターネットの活用を後押しするとともに、デジタルトランスフォーメーションを推進し、その結果として我々の事業領域であるインターネットビジネスがさらに発展すると考え、実行しています。

―未曾有の危機に立ち向かう起業家として、もっとも大事にしている経営姿勢とはどのようなものですか。

 経営において、攻めと守りのバランスは非常に大事です。我々は歴史から学び、大地震や大災害などあらゆるリスクに備え、在宅勤務体制の構築や災害用品の備蓄などのBCPを策定・実行していました。約100年前に流行したスペイン風邪をはじめ、SARSやMERSのようなウイルスによるパンデミックも、起こり得るリスクのひとつと考えていたのです。

 戦の際には、攻撃を仕掛けるだけではなく、堀を掘ったり強固な塀を設けたりすることで、仲間や城を守る備えも十分に行いますよね。経営においても戦と同様、攻めと守りをバランスよく行うことが非常に重要なのです。

―今般の危機にともに立ち向かう世の起業家たちに力強いアドバイスをお願いします。

 ピンチをチャンスに。

 この困難な状況のなかでも、「ピンチをチャンスに変える」という発想が大事です。新型コロナウイルスを理由に足を止めてしまうのではなく、ビジネスチャンスを見出しましょう。

―現下の「コロナショック」を受け、自社の事業発展をにらみ、どのような施策を実行していますか。

 当グループは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、コンサルティング事業における集合型研修のキャンセルや、キャリアスクール・学習塾事業における教室閉鎖など多くの影響を受けましたが、この機会にオンライン化を加速させました。

 今後は、新型コロナウイルスの影響を受けて、企業における組織の在り方、個人の働き方やキャリア創りの方法は大きく変化していくでしょう。オンライン化の急速な進展はもとより、実際に温度感を共有できるリアルの場もこれまで以上に価値をもつと考えています。当グループでは、会社や個人の状況に合わせて最適な手段を選択できるよう、「オンラインとオフラインの統合」をテーマに、新しい価値を創造したいと考えています。環境が変化すれば、そこには新たな課題が生まれます。時代の変化に適応しながら、よりよいサービスを提供できるようグループ一丸となって準備を進めています。

―未曾有の危機に立ち向かう起業家として、もっとも大事にしている経営姿勢とはどのようなものですか。

 「変えられるもの」にエネルギーを集中することです。私は、目標を実現するためには、「他人」や「過去」といった「変えられないもの」に目を向けるのではなく、「自分」や「未来」といった「変えられるもの」に注力すべきだと考えています。リーマン・ショック時は、オフィス撤退や事業の統廃合などを含めた“サバイバルプラン"を即時に策定・実行。痛みを伴う改革でしたが、これにより、新たな経営ステージに入ることができました。

 新型コロナウイルスが経済に与える影響は大きいですが、それ自体は変えることができません。「未来に向けて自分の思考と行動を変えることで、乗り越えるしかない」と思っています。そうすれば、これまで想像しなかった新しい価値を創ることができるはずです。「ちょうどよかった。これをきっかけに」を合言葉に、新しい価値創造に時間を使うことを大切にしています。

―今般の危機にともに立ち向かう世の起業家たちに力強いアドバイスをお願いします。

 これまで、リーマン・ショックをはじめ、さまざまな危機に直面してきました。先が見えずに不安になったこともありますが、そんな時には「起業した理由」を思い出すことで自らを奮い立たせています。

 私は、企業の競争優位が「ハード」から「ソフト」に変わっていくなかで、人材や組織が企業経営においてもっとも重要なアセットになると確信し、2000年に「モチベーション」にフォーカスした事業をスタートしました。今後、急速に変化していく日本社会の発展に向けては、組織と個人に変革の機会を提供する当グループの存在意義はさらに重要となるでしょう。そのために、私たち自身が永続的に存続・発展していかなければならないと強く感じています。

 出口のないトンネルはありません。トンネルの先の未来は明るいと信じて、創業時の想いを実現するため、ともにこの危機を乗り越えていきましょう!

―現下の「コロナショック」を受け、自社の事業発展をにらみ、どのような施策を実行していますか。

 リアル店舗が休業中のなか、ECに重要なロジスティクスのバックアップ体制を、システム・人的資源を含めて急速に整えました。同時にこの時期、ビームスのブランディングをさらに深化させるべく、リモートワークをしているスタッフ達にYouTubeを使ってstay homeの楽しみ方のさまざまな提案とスタイリング投稿をしてもらい、お客さまのさらなるファン化とスタッフとのコミュニティ化を深めるトライアルも行っています。

―未曾有の危機に立ち向かう起業家として、もっとも大事にしている経営姿勢とはどのようなものですか。

 危機に直面した時、出口へのロードマップは、トップが細心の注意を払って作成しなければなりません。それと同時にトップには「大胆さ」が不可欠です。決断に悩みは付き物であり、経営は不安との戦いでもあります。それに打ち勝つために必要なのが、大胆さと明るさです。大胆さと明るさは、「勇気と自信」を必要とします。決断は覚悟です。悲壮感やお先真っ暗感を決して見せてはならない。決断したら「大丈夫、俺に任せておけ!」と周囲に伝えなければなりません。

―今般の危機にともに立ち向かう世の起業家たちに力強いアドバイスをお願いします。

 トップの最大の仕事は、ノウハウを伝えることではなく、「夢を与えること」「心に火を灯していくこと」「情熱の芽を植えていくこと」です。

―現下の「コロナショック」を受け、自社の事業発展をにらみ、どのような施策を実行していますか。

 対面でのビジネスが制限を受けるなか、我々が主力事業とする「デジタルシフト」への必要性と緊急性がより高まっています。当社は、2020年4月1日に日本企業のデジタルシフトを支援する「株式会社デジタルシフト」「株式会社オプトデジタル」を新たに設立し、7月1日にはグループ全体でデジタルシフト事業へと変革していくため、「株式会社デジタルホールディングス」へと商号変更します。

 また、社内では緊急事態宣言解除後もリモートワークを継続し、これを標準とします。withコロナ・afterコロナ時代は、高い専門性と多様な得意分野をもつ社内外の人々が有機的につながり、新しい価値を創造する働き方が一気に加速します。個人は学び続けることで、質の高い価値を提供していく必要があります。その一助になればと、「ワークデザイン手当」の導入を決定しました。

―未曾有の危機に立ち向かう起業家として、もっとも大事にしている経営姿勢とはどのようなものですか。

 世間に流されず、社会全体を見据え、自分の信念に沿って動き続ける勇気、実行力、リーダーシップをもち続けることです。

 今回、楽天の三木谷さんとグロービスの堀さんに、あらためてその重要性を学ばせていただきました。三木谷さんは、感染症が拡まっていない時期から「コロナリスク」に警鐘を鳴らし、政府に積極的に働きかけを行っていました。また、グロービスの堀さんは、緊急事態宣言を早期に解除する必要性を積極的に発信されました。これは企業という枠を越え、日本社会にとって何が最善かを見据えたうえでの行動だったと思います。

 私自身、昨年からデジタルシフトを強く訴えかけていたのは、日本の未来を見据えたうえでの危機感からです。コロナショックにより、その必要性はより一層増しています。今が変化の時であり、現時点の施策が日本の未来に大きく影響していきます。社会全体のために、日本企業のデジタルシフトを強力に支援していきたいと決意を新たにしています。

―今般の危機にともに立ち向かう世の起業家たちに力強いアドバイスをお願いします。

 昨年12月、ソフトバンクの孫さんとアリババのジャック・マーさんの対談のなかで、「20年後に人は週に2日、2時間しか働かなくなる」というお話がありました。「本当か?」と衝撃を受けましたが、その後研究すると、十分現実味のある未来だとわかりました。実際、今回の新型コロナウイルスの感染拡大防止のためリモートワークが普及したことで、働き方は大きく変わりました。この影響は今後、ライフスタイルや幸せの価値観にまで及ぶでしょう。

 一方で、デジタルシフトの必要性が誰の目にも明らかとなり、「今後20年はかかる」と思われた世界の到来を確実に早めています。これからは、さらなる激動の時代に突入するでしょう。このような時こそ、起業家のスピーディで大胆な施策が、新しい未来を創っていくのだと思います。大変な時期ではありますが、新しい時代の潮流を確実に読みながら、一歩を踏み出し、ともに日本の未来を創り出していきましょう。

―現下の「コロナショック」を受け、自社の事業発展をにらみ、どのような施策を実行していますか。

 我々の主力サービスである『LIFULL HOME'S』では、より安心、安全にサービスをご利用いただき売上高回復に貢献できるよう、新規で申し込みをされる『LIFULL HOME'S』加盟店向けに提供期間限定で、賃貸物件を対象とした「オンライン相談・オンライン物件見学・IT重説」サービスを無償化しています。今後も住まい探しにおける不動産取引の効率化、オンライン化を推進していきます。

 さらに、人々の暮らしや働き方、人間関係の進化に伴い、LIFULLはデジタルトランスフォーメーションによる自律分散型社会やオフグリッド社会の実現に向けた取り組みを行っています。AI、IoT、VR、BCなどのこれまでの取り組みは、これらを支える技術群としてさらに加速させていきます。

―未曾有の危機に立ち向かう起業家として、もっとも大事にしている経営姿勢とはどのようなものですか。

 振り返れば、2000年のITバブル崩壊や2008年のリーマン・ショック、今回の新型コロナウイルスの感染拡大と、およそ10年に一度は社会に大変革を起こすような逆境が生まれてきました。そんななかで私が培ってきた教訓は、「何が起こっても不思議ではない世の中で、つねに前を向いて自ら道を切り開くしかない」ということです。

 試練を乗り越えれば乗り越えるほど、次には高い壁が出てきます。そのたびに工夫をし、乗り越えた時に大きな学びがあって、大きくステージが上がるということを繰り返しています。当社の社是である「利他主義」という信念に従って、この逆境に打ち勝っていきたいと思います。

―今般の危機にともに立ち向かう世の起業家たちに力強いアドバイスをお願いします。

 リーマン・ショックや東日本大震災など、つねに不況や逆境や大きな社会変革の時には、のちのイノベーションが生まれてきました。今はかつてない千載一遇のチャンスです。その先頭に立って革新をしていきましょう!
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