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EVENT REPORT イベントレポート

freee株式会社 武地 健太 / 宝印刷株式会社 望月 良浩 / 株式会社オフィスバンク 新井 啓司 / ピー・シー・エー株式会社 伊藤 真一郎 / あいわ税理士法人 圡屋 憲 / 株式会社マネーフォワード 竹田 正信 / CRGホールディングス株式会社 古澤 孝

ベンチャー支援のプロフェッショナルに聞く

【Best Venture 100 カンファレンスレポート】成長できる企業の条件

freee株式会社 武地 健太 / 宝印刷株式会社 望月 良浩 / 株式会社オフィスバンク 新井 啓司 / ピー・シー・エー株式会社 伊藤 真一郎 / あいわ税理士法人 圡屋 憲 / 株式会社マネーフォワード 竹田 正信 / CRGホールディングス株式会社 古澤 孝

毎年、成長ベンチャーが一堂に会する「ベストベンチャー100カンファレンス」(BVC)。協賛するのは、IPO準備や業務効率化などの分野でベンチャー企業の成長を支えるプロフェッショナルだ。「成長できる企業の条件」とはなにか。2020年度のBVCを協賛した7社のキーパーソンに聞いた。
※下記はベンチャー通信82号(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
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freee株式会社
最高戦略責任者(CSO)
武地 健太 たけち けんた
両親ともに税理士で、先祖代々の「会計一家」に育つ。あずさ監査法人・ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、freee株式会社にCFOとして参画。「経済活動のログ」としての会計の可能性を追求する公認会計士。2020年4月より現職。

―成長し続けるベンチャー企業に必要な条件はなんでしょう。

 まずは、ミッション・ビジョンを全社で共有し続けることです。どんなカリスマ社長でも、ひとりで企業を成長させることはできません。組織全体で大事を成し遂げるには、目指す方向性を一致させる必要があり、それにはミッション・ビジョンが大きな役割を果たすのです。当社は、セールスとマーケターの連携の良さが外部から評価されていますが、これも、社員全員で議論することに多くのコストと時間を割き、ミッション・ビジョンを徹底して共有できているからです。もうひとつの条件は、価値づくりです。たとえば、当社のようなSaaS企業では、開発を内製化するのは当然のこと、経営陣のエンジニア比率にまで配慮した組織づくりが、価値の創造に重要だと考えています。

―ベンチャー企業の成長をどのように支援していますか。

 当社は「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに、「アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられるプラットフォーム」の実現を目指し、サービスを開発・提供しています。具体的には、効率的な管理業務を実現するクラウドERPを提供し、企業の成長を支援しています。企業は、成長度合いに比例して管理業務が増大していきますが、当社の『freee』はペーパーレス化によるデータの一元管理でチームが協業しやすいように設計され、管理部門を「経営をけん引するチーム」に変革することができます。2020年上半期には、東証マザーズ上場企業の32%が『freee』を利用しているなど、まさに成長企業で多く導入されています。
freee株式会社
【設立】2012年7月
【資本金】161億603万円(資本準備金等含む)
【売上高】68億9,500万円(2020年6月期)
【従業員数】481名(2020年6月末現在)
【事業内容】統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフト『freee』の提供
【URL】https://corp.freee.co.jp/
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宝印刷株式会社
企業成長支援部 部長
望月 良浩 もちづき よしひろ
1964年、大阪府生まれ。1987年、関西学院大学経済学部を卒業後、株式会社富士銀行(現:株式会社みずほ銀行)に入行。1992年、山一證券株式会社に出向、以降みずほ証券株式会社などで通算16年間IPO関連業務に携わる。2008年、みずほキャピタル株式会社に在籍後、2011 年にみずほ銀行高崎支店長、2014年に同行川越駅前支店長、2016年に同行梅田支店長を歴任。2018年6月、宝印刷株式会社に入社、現職。

―ベンチャー企業が成長を続けるには、なにが必要ですか。

 圧倒的に顧客満足度が高いサービスを提供し続け、結果として、社会的課題の解決につながるビジネスモデルを確立することが必要でしょう。顧客のニーズや嗜好の変化、時代の変化に合わせて、事業内容も柔軟かつ大胆に転換できる経営管理体制を構築している企業は、持続的成長が可能です。オーナー社長の強力なリーダーシップで成長する企業もありますが、IPOによっても企業は大きく成長できます。株式上場の審査では、企業の継続性や収益性、企業経営の健全性といった視点で厳しく審査されます。それをクリアするためには、「オーナー経営」から「組織的な経営」への転換がとても重要だと思います。

―IPOの実現に向けて大切なことはなんでしょう。

 「資本政策の重要性」に対する深い理解だと思います。当社は、決算開示支援を主力とした事業を通じ、約1800社の既上場企業と接点をもっています。IPOを実現した企業に共通するのが、その理解の深さ。最近、IPO前にエクィティで多額の資金を調達するベンチャー企業が増えていると感じますが、ベンチャーキャピタルの持株比率が過半に迫るケースも。一度実行すると後戻りできない資本政策を一歩間違えると、将来的な経営の不安定化につながり、敵対的TOBのリスクも生じかねません。将来IPOを検討する場合には、「IPO時に2/3の安定した持株比率が確保されているか」「過度にストックオプションを発行していないか」「事業計画上の数値や上場時の想定株価が現実的なものか」などを考えることが重要です。
宝印刷株式会社
【設立】1960年4月
【資本金】20億4,900万円
【売上高】191億1,600万円(2020年5月期:連結)
【従業員数】1,101名(2020年5月末現在)
【事業内容】決算開示支援事業、IPO支援事業、コンサルティング、翻訳、IR支援事業
【URL】https://www.takara-print.co.jp/
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株式会社オフィスバンク
スタートアップ支援チーム 責任者
新井 啓司 あらい けいし
1991年、茨城県生まれ。駒澤大学時代にボクシング部に所属し、国体・全日本選手権に出場。大学卒業後は新卒で株式会社オフィスバンクに入社。当時の最高売り上げを達成し、最年少でマネージャー職に就く。その後、スタートアップ企業に特化したチームを立ち上げ、現在にいたる。

―成長を続けるベンチャー企業の特徴はなんでしょう。

 当社は「オフィス選び」の面から、多くのベンチャー企業の成長をサポートさせていただくなかで、次の5つの特徴があると感じています。

 「会社のビジョンを達成するための圧倒的な熱量を、経営者がもっていること」「同じくらいの熱量をもった社員がいること」「マーケットの変化に応じてつねに新たな勝ちパターンを模索し、チャレンジし続けること」「まわりから応援される会社であること」「世の中から必要とされるビジネスモデルを展開していること」。そのなかでも特に、1つ目の「経営者の圧倒的な熱量」は一番大事な条件ではないでしょうか。それこそが、人と市場を動かす原動力だと思います。

―さらなる成長のために、どんなアドバイスをしていますか。

 「会社の未来をつくるためのオフィス選び」です。経営者が会社をどうしていきたいか、何を解決していきたいか、社員にどうなって欲しいか、といった会社の将来像を実現するために、オフィスはあるのです。

 コロナ禍のなかで、従業員の働き方や企業文化に応じたオフィス選びの必要性が高まってきました。働きやすいオフィス環境が、事業の推進と会社の成長を促すのです。スタートアップ企業の経営者から、「まだ黒字化できていないことを理由に、ビルオーナーから入居を断られた」という悩みをよく聞きます。ですが、たとえ黒字化できていなくても、企業の魅力・成長性をしっかりと理解してビルオーナーに説明することで、結果は違ってくるのです。当社は、企業のさらなる成長に向けた最適なオフィス選びをサポートしていきます。
株式会社オフィスバンク
【設立】2004年4月
【資本金】1億円
【従業員数】80名(2020年11月1日現在)
【事業内容】不動産に関するソリューション事業、オフィスコンサルティング事業、
 プロジェクトマネジメント事業など
【URL】https://www.obg.co.jp/
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ピー・シー・エー株式会社
営業本部 戦略企画部 部長
伊藤 真一郎 いとう しんいちろう
1968年、東京都生まれ。1989年にピー・シー・エー株式会社に入社。業務系ネットワーク製品の技術支援、ERP製品の導入プロジェクトマネージャーとして業務に従事。その後、全国のSI系ベンダーへの販売推進事業のマネージャー、業界初のクラウド会計サービス『PCAクラウド』と連携するクラウドベンダーとのエコシステムを形成する部門責任者、RPAサービス化推進責任者を歴任。2019年より現職。

―成長し続けるベンチャー企業に必要な条件はなんでしょう。

 自社の利益を追求するだけでなく、未来の社会に貢献するためにさまざまな課題に挑戦する、起業家の強い意欲と、組織力・人間力が成長を続ける条件となります。リスクを恐れない精神や、ブレることのない経営理念や独創性、さらには事業の独立性や社会性、新規性なども求められるでしょう。また、その外部において、ベンチャー企業の成長を支援・促進する「エコシステム」の形成も欠かせないと私は考えます。具体的には、資金・人材支援や優遇税制、クラウドファンディングなど、ベンチャー企業を支援する仕組みづくりを行っていくことが、社会にも求められているのです。

―ピー・シー・エーではどのようにベンチャー企業の成長を支援していますか。

 当社は創業から41年間、経済情勢や社会環境が変化し続けるなかで、ハード・ソフトウェアメーカーやITの導入パートナー、会計士、税理士、社会保険労務士などと連携し、業務ソフトウェアを開発することで、全国の中小中堅企業の成長を支えてきました。会計・販売業務システムの普及期には、データ入力による各種帳票の作成や請求書の発行、決算書への転記などを自動化し、決算早期化の実現を支援。ITで社会とヒトがつながるようになった現在においても、会計ソフトのパイオニアとして、豊富な経験と実績を活かしながら、つねに先端の業務支援サービスをサブスクリプションで提供し続けています。カスタマーサクセスを理念に、未来の社会をけん引するベンチャー企業の成長と成功を引き続き支えていきますので、気軽にご相談下さい。
ピー・シー・エー株式会社
【設立】1980年8月
【資本金】8億9,040万円
【売上高】142億6,600万円(2020年3月期)
【従業員数】400名(2020年3月末現在)
【事業内容】コンピューターソフトの開発および販売
【URL】https://corp.pca.jp/
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あいわ税理士法人
パートナー 公認会計士・税理士
圡屋 憲 つちや けん
1999年より監査法人業界にて上場会社の監査やIPO支援業務に従事。金融機関への出向なども経験。2015年よりあいわ税理士法人に入所し、IPOや企業会計に関する相談業務を担当し、現在にいたる。IPOや企業会計に関連するセミナー講師多数。『経営者のためのIPOバイブル』(中央経済社)、『株式上場マニュアル』(税務研究会出版局)、『ケーススタディ・データ分析による資本政策の実務』(税務研究会出版局)など数多く執筆。

―ベンチャー企業の成長に必要なものとは、なんでしょう。

 「ヒト、モノ、カネ」など多くの要素が必要だと考えられますが、「ヒト」にフォーカスした場合、やはり経営者こそが、重要なカギになると思います。使命感が強く、志が高い経営者。新しいものにも臆することなくチャレンジできる経営者。歴史に名を残したい、一攫千金を得たいなど、良い意味で欲(パワー)のある経営者。グローバル思考を持ち、世界と対等にわたりあえる経営者。最後は自ら決断できる経営者。経営者によって強みや特徴は異なりますが、こういったマインドのある経営者だからこそ多くの人を惹きつけることができ、企業に「ヒト、モノ、カネ」が集まるのだと思います。

―企業を成長に導くうえで、どんな支援をしていますか。

 私たちは会計・税務のプロフェッショナル集団として、特に資本政策に関して積極的な支援をしています。

 資本政策は、ベンチャー企業や経営者にとって非常に重要な検討項目である一方、成長の真っただ中にあるベンチャー企業や多忙な経営者は、どうしても目の前の業務に追われてしまい、資本政策の検討がおろそかになりがちです。資本政策は一度進めると過去に遡ってやり直せないため、十分に検討しなければ、「あのとき、こうしておけばよかったのに」といった後悔につながりかねず、実際にそう感じているベンチャー企業や経営者が後を絶ちません。企業を成長に導くための資本政策。私たちはこれまでも、そしてこれからも、成長の先を見据えた中長期的な視点でアドバイスし、ベンチャー企業や経営者のみなさまをサポートしていきたいと考えています。
あいわ税理士法人
【設立】1992年7月
【資本金】8億9,040万円
【従業員数】65名(うち公認会計士、税理士が45名、2020年9月30日現在)
【事業内容】会計・税務にかかる顧問業務およびコンサルティング業務など
【URL】https://www.aiwa-tax.or.jp/
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株式会社マネーフォワード
取締役執行役
マネーフォワードビジネスカンパニーCOO
竹田 正信 たけだ まさのぶ
2001年、インターネット広告代理店に入社し、企画営業に従事。2003年、株式会社マクロミルに入社し、2008年に取締役就任。同社の経営企画部門を管掌し、事業戦略や人事戦略、企業統合などを主導。2012年、株式会社イオレに転じ、取締役経営企画室長に就任。2016年、株式会社クラビス取締役・CFOを経て、2017年に同社のグループ会社化に伴い、株式会社マネーフォワードに参画。

―成長し続けるベンチャー企業に共通することはなんですか。

 企業の使命や志、すなわち「ミッション・ビジョン」につねに立ち返り、アクションを起こし続けていくことです。実際の経営では、計画どおりに進まないことも多くあるでしょう。ましてや、現在の「コロナ禍」のような未曾有の事態においては、苦境に打ち勝つために企業には大きな変化が求められます。このような変化への対応も、受け身の姿勢でいるままでは、成長から遠ざかってしまいます。成長を続けられるのは、変化に対してつねに対応する準備ができている企業や、変化をチャンスに変えられる企業です。こうした企業に共通しているのは、描いた理想から逆算し、大小さまざまな打ち手を平時から実行していることです。

―打ち手には、たとえばどのようなものがありますか。

 「管理業務の効率化」があります。コロナ禍においては、「ハンコの押印のために、緊急事態宣言が発出されているなかで出社をした」という企業の例が話題になりました。しかし、管理業務の効率化やリモートワークを実現する技術や製品は、コロナ禍以前からありました。「ミッション・ビジョン」をブレさせることなく、その実現に向けた行動を日頃から社員全員が心がけていれば、テクノロジーの進歩も、自社の味方につけることができるのです。また、事業がうまくいかないときは、机上で緻密な戦略を描くよりも、顧客と対峙し、売上を増やす「行動」に時間を使うことのほうが、打開策の発見につながることがあります。当社では、こうした社員の行動を促すソリューションの提供を通じ、ベンチャー企業の成長を支えていきたいと考えています。
株式会社マネーフォワード
【設立】2012年5月
【資本金】95億6,474万5,000円(2020年8月31日現在)
【売上高】71億5,684万4,000円(2019年11月期、連結)
【従業員数】848名(2020年8月末現在)
【事業内容】PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供
【URL】https://corp.moneyforward.com/
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CRGホールディングス株式会社
代表取締役社長
古澤 孝 ふるさわ たかし
1973年、茨城県生まれ。1995年、株式会社ジリオン(現:CRGホールディングス株式会社)に入社。1997年に取締役に就任。創業時から警備保障サービスを開始し、コールセンターや倉庫内作業・製造業務、IT系システム開発などへ事業を拡大。2018年には東証マザーズ市場への上場を果たす。現在は、HRソリューション、ITを用いた業務効率化支援サービス、障がい者福祉サービスを展開中。

―成長するベンチャー企業に必要なことはなんでしょう。

 「ともに働く一人ひとりが環境の変化を柔軟に受け入れながら、『成長し続ける』という強い意識をもち続けること」ではないでしょうか。企業は「人」であり、同じ目標の達成に向けて一丸となることが重要です。一方で、従業員個人もそれぞれ考え方の違う「人」だからこそ、経営者が悩むシチュエーションも多くあります。それゆえに、従業員個人のスキルや経験、コミュニケーション能力、それぞれが描くビジョンなどのバランスを考慮しながら、最速で成長できる組織づくりと適材適所の人員配置が大切です。経営者自らが積極的に従業員と交流することも、従業員のマインド形成には有効な手段となります。

―ベンチャー企業の成長を導くうえで、どのようなアドバイスをしていますか。

 まず、経営者自身が「明確なビジョンを持ち、将来をベースに物事を考えること」をアドバイスしています。事業環境が目まぐるしく変化するなかで、足元の事業の成否だけに意識を集中させた場当たり的な対応は、成長の足枷となってしまうためです。このことを理解したうえで、当社ではさらに、信頼できるキーマンの登用と、業務を効率化させるためのITツールの導入を早期のうちから検討することを勧めています。

 当社グループでは、企業のキーマン登用や業務効率化を支援するために、ハイキャリア人材の紹介サービスや、AI・OCR、RPAソリューションサービスを提供しています。IPOを目指す成長著しいベンチャー企業を、我々のノウハウでサポートできたら嬉しいですね。
CRGホールディングス株式会社
【設立】2013年10月
【資本金】4億3,768万8,000円
【売上高】201億4,800万円(2020年9月期)
【従業員数】877名(2020年9月末現在、アルバイト含む)
【事業内容】総合人材サービス事業(人材派遣・人材紹介、HRを中心とした各種アウトソーシングサービス
 HRテックサービス、障がい者雇用支援など)
【URL】https://www.crgh.co.jp/
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