ベンチャー通信Online > 起業家インタビュー > その他 > 株式会社東京証券取引所 上場推進部長 横田 雅之 / 上場推進部 上場支援担当 統括課長 永田 秀俊

INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

株式会社東京証券取引所 上場推進部長 横田 雅之 / 上場推進部 上場支援担当 統括課長 永田 秀俊

「コロナ禍」にあっても新規上場社数は高水準に

「ニューノーマル対応」を追い風に、ベンチャー企業のIPO意欲は旺盛

株式会社東京証券取引所 上場推進部長 横田 雅之 / 上場推進部 上場支援担当 統括課長 永田 秀俊

新規上場社数は102社(※)と、2007年以来13年ぶりに100社を超え、高水準となったIPO市場。その半数以上の63社がマザーズ上場を果たし、IPOの中心的市場となっている。「コロナ禍」という、近年まれにみる外部環境変化のなか、このような結果を東京証券取引所(以下、東証)はどう見ているのか。2022年4月、新市場区分に移行するという大きな改正を控えた、東証の横田氏と永田氏に、新しい体制の詳細も含めて聞いた。

 

※TOKYO PRO Market(東京証券取引所が運営する、日本で唯一のプロ投資家向けの株式市場)への上場を含む全国のIPO社数(市場変更は含まない)


※下記はベンチャー通信82号(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「いま出ても大丈夫」と、自信をもってデビュー

―2020年におけるIPO市場をどう見ていますか。

横田:結果的には、活況を呈した良い年だったと思います。昨年3、4月は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、新規の上場手続きを中止する企業が相次ぎ、トータル18社の上場承認を取り消さざるをえない事態に。しかし、最初の緊急事態宣言が解除された後、多くの企業がIPOの準備を再開。コロナ禍でも企業のIPOへの意欲は旺盛で、世界的な金融緩和や財政出動などによる株価の盛り返しも後押しし、13年ぶりの高水準になったのだと見ています。

―なかでも、半数以上の会社がマザーズ上場を果たしています。

永田:確かに、63社がマザーズに上場しました。たまたまですが、その前年、またさらにその前年も63社と、3年連続で63社がマザーズに上場。じつは63社というのは、マザーズを開設して以来、最高の件数でした。ゆえに、東証のIPOの中心的市場はマザーズ、という状況がずっと続いているのです。もともとマザーズに上場する企業は、IT系のスタートアップが多いのですが、昨年はコロナ禍でもそれほど影響を受けず、むしろ「ニューノーマル対応」ということで逆に追い風にして業績を伸ばしている企業が多く含まれていましたね。コロナ禍でも、「いま出ても大丈夫」と自信をもってデビューされたということです。

―そうしたなか、東証では2022年4月、新市場区分に移行しますね。

永田:はい。これまでは、「市場第一部」「市場第二部」「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」と、5つの一般市場がありました。これらを、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」という3つの市場区分に移行します。市場区分の明確なコンセプトにもとづいた再編を通じ、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値を支えること。さらに、国内外の多様な投資者から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供し、豊かな社会の実現に貢献することが目的です。

―現状の市場に上場している企業はどのように区分されるのでしょう。

永田:現行の「市場第一部」の企業は「プライム市場」、「市場第二部」「JASDAQンダード」の企業は「スタンダード市場」、「マザーズ」「JASDAQグロース」の企業は「グロース市場」に再編されるのが基本ですが、すべての上場会社が新市場区分への選択手続きを経て移行することになります。

横田:たとえば、新市場区分により、「プライム市場」に対するコーポレートガバナンス・コード(※)が一層高度化されたり、上場制度の一部を緩和し、スタートアップの健全な成長をうながすといった変更があります。IPOを志す企業には、各市場のコンセプトや制度の枠組みに合ったカタチで成長を目指していただくことになります。ただ、新しい取り組みのため、わかりにくい部分もあると思います。ゆえに、上場を目指す企業はもちろん、証券会社や監査法人の方などIPOを支援される関係者に対してていねいに説明し、企業のIPOを支えてもらうことが重要だと考えています。
※コーポレートガバナンス・コード:上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)においてガイドラインとして参照すべき原則・指針

投資者と企業をつなぐ、プラットフォームとして支援

―2021年におけるIPO市場の展望を聞かせてください。

永田:新型コロナウイルスという不確定要素はあるものの、市場関係者との話をふまえると、昨年並みに推移していくのではないかと考えています。我々としては、投資者と企業をつなぐプラットフォームとして、企業の上場支援を強化していきたいですね。

―具体的にどういった支援でしょう。

永田:たとえば、昨年はTOKYO PRO Marketでの上場が10社と過去最高の件数でした。最近は、「TOKYO PRO Marketは一般市場への登竜門」と表現されることもあり、一般市場に上場する前の段階として、興味をもつ企業が増えているという実感があります。今後も、新市場区分の説明にくわえ、TOKYO PRO Marketの活用促進にも取り組んでいきたいと考えています。

横田:東証では地方の企業に対し、IPOに関する情報提供などの上場支援活動に取り組んでおり、それを引き続き行っていきたいですね。地方の企業はIPOのハードルを高く感じてしまい、企業成長の選択肢としてきちんと議論されていないケースがあります。そうした経営者のみなさんに、成長戦略のなかにIPOを選択肢のひとつとして入れてもらい、地方からのIPOを増やし、市場のさらなる活性化を目指します。
※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。