INTERVIEW 業界別起業家インタビュー
売上高前期比38%増を達成した「SaaS×Fintech」ベンチャー
徹底した「MVVC」の浸透により、コロナ禍でも会社が成長できた
株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO 辻 庸介
SaaS型クラウド会計を中心としたバックオフィス事業やSaaSマーケティング事業、個人向け家計簿・資産管理サービス、金融機関向けFintech推進・DX支援など「SaaS×Fintech」領域で事業を手がけているマネーフォワード。コロナ禍にあっても成長を続けており、2021年度の売上高は156億円超と前期比38%増を達成している。成長の要因や今後のビジョンなどを、同社代表の辻氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信85号(2022年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
外部環境の変化よりも、本質的な成長の要因
―コロナ禍のなかでも急成長を遂げることができた要因はなんですか。
ひとつは、コロナ禍におけるリモートワークの増加や、「電子帳簿保存法」「インボイス制度」などの社会情勢が、当社における法人向けのSaaSビジネスを後押ししたことですね。そもそも、少子高齢化で人手不足に陥る日本において、一人ひとりの生産性をあげていかないと、企業は生き残っていけません。そのため、企業における業務のデジタル化は必須であり、当社としても注力している領域です。また、コロナ禍によって、個人においてもお金の心配ごとが増えています。そうした背景によって、当社の個人向け家計簿アプリのユーザーも増加する結果となっています。
このように、外部環境の変化によって当社の事業機会が増加したのも成長の要因なのは確かですが、本質的な要因は別にあると考えています。
このように、外部環境の変化によって当社の事業機会が増加したのも成長の要因なのは確かですが、本質的な要因は別にあると考えています。
―それはなんでしょう。
当社が掲げる、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」「カルチャー」(以下、MVVC)が全社員にしっかりと浸透していることです。急成長にともない、おかげさまで従業員数も1,300名を超え、新卒・中途を含めて多くの優秀な人たちにジョインしてもらっています。そうしたなか、コロナ禍にあって当社もリモートワークを導入しましたが、組織がまったく壊れずに成長しているのは、全員がMVVCを意識して業務に取り組んでいるからにほかなりません。それを土台に、お客さまに寄り添ったプロダクト制作、セールス、カスタマーサポートを行っていく。そうした、会社全体におけるチームの力が1年経つごとについていっていることを実感しています。
―MVVCを社員に浸透させるために取り組んでいることはありますか。
たとえば、「VP of Culture」という役職を新たにつくりました。MVVCを浸透させる取り組みはコロナ禍以前にも行っていましたが、物理的に会うのが難しくなるなか、意識的にコミュニケーションの質を高め、量を増やす必要があると感じていたのです。そこで「VP of Culture」が中心となり、半期社員総会や朝会など、全社コミュニケーション施策やイベントの企画・運営、表彰制度の設計・運用などを行っているのです。また、これは以前から取り組んできたのですが、四半期ごとに当社のカルチャーを体現した人が表彰される「Culture Hero」や、私が経営陣やメンバーと月に1回、普段業務では話さないようなテーマでざっくばらんに語り合う「OPEN DOOR」なども好評です。
ぜひ「心のOS」を、アップグレードしてほしい
―今後はどのように会社を成長させていくのでしょう。
昨年に海外の投資家から315億円の資金を調達したことを受け、4つの戦略でもう一段階成長のギアをあげていきたいと考えています。1つ目は「バックオフィス向けSaaSプラットフォームとしての提供価値向上と最適化されたGo-to-Market(※)戦略の実現」、2つ目は「大きな成長余地を有する複数事業への継続的な投資と、事業ドメイン間のシナジー創出」、3つ目は「過去のPMI(※)実績に示された、規律あるM&A(グループジョイン)戦略の遂行」、最後に「既存のアセットを活用した新たな事業/プロダクトの開発」です。また、グローバル化も進めていきます。現在、ベトナムに開発拠点があるほか、インドネシアのスタートアップに当社が大株主として出資しており、私が社外取締役を務めています。さらに、社内エンジニアの30%がノンジャパニーズで、エンジニアにおける英語の公用語化も進めています。
※Go-to-Market : 自社の商品やサービスをどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略のこと
※ PMI : Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略。期待したM&Aによる統合効果を確実にするための、統合プロセスとマネジメントをさす
※ PMI : Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略。期待したM&Aによる統合効果を確実にするための、統合プロセスとマネジメントをさす
―若者が起業したり、ベンチャー企業で活躍したりするためには、どのようなマインドが必要でしょう。
とにかく成長欲求があって、チャレンジ精神があることです。そして謙虚さ。人のアドバイスをちゃんと聞いて、吸収して受け入れられて改善できる人が伸びていきます。そうしたパーソナリティを、私は「心のOS」と呼んでいますが、ぜひそのOSをアップグレードしていってほしいですね。
PROFILE
プロフィール
辻 庸介(つじ ようすけ)プロフィール
1976年、大阪府生まれ。2001年に京都大学農学部を卒業後、ソニー株式会社に入社する。2004年にマネックス証券株式会社に参画。2011年、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。2012年に株式会社マネーフォワードを設立する。2017年、東証マザーズ市場(当時)に上場し、2021年、東証一部に市場変更。2022年、プライム市場へ移行する。2018年、第4回「日本ベンチャー大賞」にて審査委員会特別賞受賞。新経済連盟にて幹事を務めるほか、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム エグゼクティブ・コミッティー、経済同友会 第1期ノミネートメンバー。
企業情報
設立 | 2012年5月 |
---|---|
資本金 | 257億7,600万円(2021年11月末時点) |
売上高 | 156億3,300万円(2021年11月期) |
従業員数 | 1,389名(2022年2月末時点) |
事業内容 | PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供 |
URL | https://corp.moneyforward.com/ |
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