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INTERVIEW 業界別起業家インタビュー

ビジョナル株式会社 代表取締役社長 南 壮一郎

「ユニコーン上場」を果たした注目ベンチャー経営者からの提言

必ず到来する変化に備え、人も企業も学び、変わり続けよ

ビジョナル株式会社 代表取締役社長 南 壮一郎

求人サービスで躍進するビズリーチが、グループ経営体制に移行し、Visionalとして新たなスタートをきったのが、2020年2月。その後、2021年4月には、東証マザーズ(当時)へ「ユニコーン上場」を果たし、世の注目を集めた。コロナ禍をむしろ追い風とするかのように、時流を捉えて成長を続ける同社だが、代表の南氏は、「我々が志してきたのは、事業を通じて新しい時代のムーブメントをつくること」とし、「まだ緒に就いたばかり」と語る。いまもっとも勢いのあるベンチャー企業のひとつである同社が見据える、「新しい時代」とはいかなるものか。同氏に聞いた。
※下記はベンチャー通信85号(2022年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

会社が社員を選ぶ時代から、社員が会社を選ぶ時代へ

―2022年7月期決算の予想からも、業績は好調さが見てとれますが、自社の経営状況をどのように分析していますか。

 当社は創業以来、「未来の働き方」を支えるための事業づくりをしてきました。これに対し、コロナ禍によって、この先10~20年かけて進むと思われていた2つの重要な変化が短期間で進展し、日本の働き方が大きく変わろうとしています。まさにこれが、当社の追い風となりました。2つの重要な変化とは、まず、時代の変化に対応できている企業と、そうでない企業の差が顕在化するなか、個人が主体的にキャリアを考え、働く環境を選択していく必要性が増していること。もう1つの変化は、否応なくビジネスモデルの転換を迫られている企業が、新たな人材を求め始めていることです。

―企業と人材の両サイドでマッチング需要が増していると。

 ええ。特に注目すべきは、正社員のプロフェッショナル領域で過去にないほどの数の転職が発生していること。創業以来、我々が信じてきた「新しい時代」、つまり、会社が社員を選ぶ時代から、社員が会社を選ぶ時代への転換が起こり始めていると見ています。ITの進展によって情報が瞬時に流通し、ビジネスモデルの賞味期限はどんどん短くなっている。一方で、人生100年時代とも言われ、人々が70歳、80歳まで働く時代が来ようとしている。長寿命化の先頭を走る日本で、年功序列や終身雇用を維持することは難しくなってきています。

―時代に合致した当然の変化が起こっているというわけですね。

 そのとおりです。それを見据えて、ビズリーチ事業の先に、採用から入社後の活躍までをデータで可視化し、エビデンスに基づいた人材活用を実現する「HRMOS(ハーモス)事業」を立ち上げました。こうした一連の人材活用のエコシステム、いわば「ヒューマンキャピタルマネジメント(HCM)」を構築することが我々の使命と考えています。さらに人の流動化だけでなく、資本の流動化の重要性にも着目し、M&Aマッチングサイト「M&Aサクシード事業」を立ち上げるなど、他領域での事業展開にも取り組んでいます。我々は事業を通じて新しい時代のムーブメントをつくろうとしています。グループ経営体制に移行したのも、必ず到来する社会変化への準備にほかならない。それが、コロナ禍と重なったのは偶然でしたが、時流を捉え、変わり続けることは、Visionalとしての必然でした。

成果が正当に評価される時代に、この国には伸びシロしかない

―とはいえ、コロナ禍は上場を控えたなか、大きな試練だったはずです。危機を乗り切るために心がけたことはありましたか。

 第一に、経営者として自らの思考を独立させること。目で見て、肌で感じた動向からシャープに判断するためです。第二にスピード重視。刻一刻と変わる状況への対応スピードを高めました。第三に、社内への情報公開。ともに危機を乗り切るために、売上高減少や赤字予想について具体的数値を用いた最悪のシナリオまで率直に伝えました。すべての社員に力を貸してもらうために、一番の行動だと思ったのです。

 この経験から、中長期的視点で積み上げてきたビジネス構想に確信をもてた一方で、世の中の変化は始まったばかりだとあらためて認識しました。使命を果たすために、我々もまだまだ学び、変わり続けなければならない、というのが最大の教訓でしたね。

―これから社会での活躍を目指す若者たちにメッセージをお願いします。

 自分がどうなりたいのか、目標設定を明確にすることが重要です。それは変わってもいい。その瞬間、瞬間の目標、個人としてのミッションをもつことが重要です。そして、そのために学び続けること。

 今後、個人も企業も「生産性の最大化」に向けて競争は激化し、データに基づいた人材採用や個人のキャリア戦略が求められる時代、いわば、「データの戦い」が必ず起こります。見方によっては厳しい時代かもしれませんが、学びの成果が正当に評価される時代でもあるわけです。考えてみれば、これだけ非合理だと言われる雇用慣行が残る日本が、世界3位の経済大国なんですよ。この国には伸びシロしかない。未来はとても明るいと私は思っています。
PROFILE プロフィール
南 壮一郎(みなみ そういちろう)プロフィール
1976年生まれ。静岡県出身。1999年、米タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー証券株式会社(現:モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社)の投資銀行本部に入社。2004年、楽天イーグルスの創立メンバーとしてプロ野球の新球団設立に携わった後、2009年に株式会社ビズリーチを創業。その後、採用プラットフォームや人材活用クラウド事業をはじめとした人事マネジメント(HR Tech)領域を中心に、M&A、物流、SaaSマーケティング、サイバーセキュリティ領域などにおいても、産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する事業を次々と立ち上げる。2020年2月に株式会社ビズリーチがVisionalとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。2014年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出。
企業情報
設立 2020年2月
資本金 164億円(資本準備金を含む、2021年5月18日現在)
売上高 286億9,800万円(2021年7月期)
従業員数 1,469名(2022年7月時点)
事業内容 グループ会社の経営支援
URL https://www.visional.inc
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